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092 幸福はここにある

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「それで結局まともに生活できるようになったのが最近というわけなのね」
「うん」
「まあ、いいんじゃないかしら。私は譲羽さんが幸せならそれでいいと思うわ」
「友枝ちゃんは?」
「私? 私はそうね、幸せだと思うわよ。まあ、旦那様の情人の多さはどうかと思うけど、平安時代だものね。子供にも恵まれたし、なによりも平和だわ」
「そうそう、こうして元巫女で集まるとかそれこそ最後の機会かもしれないしねえ」
「梨歩ちゃん、譲羽ちゃんは今でも黒龍の巫女ねー」
「小恋ちゃん、それを言ったら黒龍の番でしょ」
「ああ、確かにー」

 玉藻の前の計らいで死んでしまった朱里ちゃんを除く元龍神の巫女が集められた宴が開かれて、十数年ぶりの再会を果たしていた。
 白龍の力のおかげで都から穢れが吹き飛んだせいなのか、皆にはもう龍神の加護はついていないという。
 今はそれぞれ養女に入った家で旦那様をもって子供を産んで平和に暮らしているという話を聞いてほっと息を吐き出した。

「それにしても、記憶にある譲羽ちゃんとあんま変わらないね」
「そうねー、黒龍の神気が満ち足り霊力を使えば成長するんでしょー? なんでー?」
「……あー、うーん」
「何か特別な理由でもあるのかしら?」
「いや、下手に成長したら黒龍に即効美味しく頂かれそうで」
「「「あー、ねー」」」

 先日、形の割には早くというか年齢を考えればだいぶ遅いのだが私は初潮を迎えた。
 初めてのことでぐったりする私の世話を甲斐甲斐しく焼く黒龍がうっとうしかったのだろうが、それ以上に私への身の危険を察知した玉依姫の行動が早かった。
 どこから取り出したのかわからない長い刀を黒龍の首筋にあてたかと思うと遠慮なくそれはもう思いっきり切りかかり、一時的に意識を失った黒龍を三尊に押し付けるという暴挙に出たのだ。

「譲羽の貞操はわたくしが守って差し上げますからね」

 と、血濡れの笑顔で言われてただでさえ足りない血の気が引いていくのを感じたのは言うまでもなかった。
 ちなみに黒龍はいまだに三尊のところから戻ってきていない。
 いや、戻ってきてはいるのだがそのたびに黒龍と玉依姫の戦闘となり、隙をついて三尊が黒龍を自分たちの神域に引きずり込むのだ。
 流石の黒龍も初潮を迎えたとはいえ子供の形の私に手を出すとは思えないのだが、玉依姫が怖いので何も言わないでいる。
 ちなみにその戦闘には面白がって他の人ならざる者も参戦しているのだから性質が悪い。
 そもそも、神域を血で汚していいのだろうか?

「まあ、平安時代でいえば裳着を済ませれば婚姻可能よね」
「私たちの感覚じゃありえないけどね」
「そうなんだよねぇ、ちなみに裳着は済ませてないよ。ついこの間までまともに動けなかったし」
「でもー、人ならざる者VS黒龍って壮絶だねー。譲羽ちゃん人気者ー」
「大半が悪ノリだと思う」
「まあ、大事にされているのは悪いことではないわ」
「まあ、そうなんだけどねえ。自分でも矛盾を抱えてるとは思うんだけど、ぶっちゃけていい?」
「なにかしら?」
「なになに?」
「聞きたいー」
「常識的に考えてこの体で黒龍とセックスって無理でしょ」
「……まあ、そうね」

 友枝が思わずといった感じにまじまじと私の体、主に胎の部分を見てくる。

「痛いどころでは済まないとは思うかなぁ」
「確かにそうねー。うん、無理かなー」

 三人の言葉に「でしょう」と眉間にしわを寄せて頷く。
 ロリコンは犯罪だという概念は元々あるが、物理的に無理だろうとも思う。
 友枝たちはそれなりに成熟した体で初めての行為を済ませたのだから問題はない、しかし私に関してはどうやったって無理だろうという結論に行きつく。

「ちなみにそれを黒龍に言ったことはあるのかしら?」
「言った。いい顔で我に任せておけば極楽を見せてやるとか言われた」
「「「アウトォォ」」」
「ちなみにそれを聞いた玉依姫が即効で切りかかった」
「すっかり保護者だねぇ」
「この場合常識人、神? なのではないかしら」
「でもまあ、私でも初めては痛かったしー、譲羽ちゃんの体だとどれだけ黒龍が気を使っても限界があるんじゃないかなー」
「そうね」
「うん、だからあんまり成長しないようにしてる」

 私の言葉に三人がしげしげとこちらを見てくる。

「意識的に体の成長を止めているという事かしら?」
「うん」
「譲羽ちゃん、それもう人間業じゃないよ」
「いよいよ黒龍の番って感じねー」

 三人の言葉に思わず首をかしげていると、友枝が揺れて肩に落ちてしまった髪を直してくれる。

「まあ、いいのではないかしら。譲羽さんが受け入れる覚悟をするまでじらすのも一興、と葵の前なら仰るわ」
「あー、言いそう」

 玉藻の前ならむしろ面白そうに笑いながら進めてくるな、と思う。

「でもさぁ、譲羽ちゃんは黒龍のことが好きなんでしょ?」
「うん」
「じゃあ、問題は譲羽ちゃんの覚悟だねぇ」
「でもさあ、抱かれるために成長するとか、どうかと思わない?」

 思わず顔を赤らめてしまった私に、何度目になるかわからない視線を感じる。

「初心ね」
「初心だね」
「かわいいねー」
「私は皆とほぼ同い年!」

 かわいいかわいいと三人に押し倒されてもみくちゃにされた私をどこからか現れた黒龍がかっ去っていくまであと数分。
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