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8-4(夏樹視点)
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15時。
黒崎家の親族が一つの会場に集まっている。お坊さんの読経、焼香、説法が終わったところだ。これから後は、隣の会館で会食が始まる。施主であるお義父さんが、お坊さんに挨拶をした。その傍らには黒崎がいる。今後は黒崎が施主になることを伝えていた。
(親族は納得の上か。年齢順にすればいいのになあ……)
どうしても実家と比べてしまう。晴海さんと一貴さんにそう話すと、笑われてしまった。一貴さんが豪快に笑い、晴海さんは疲れた顔になった。見事に正反対の反応をしている。
「それだと話がまとまらないからだ。誰が力があるのか。暗黙のルールだよ」
「財産争いでは別次元だ。ほら、あのあたりだ……」
「晴海君、見させるな」
「笑っているじゃないか。夏樹君には教えた方がいい。成人になっている」
「こら。まだ早いぞ……」
2人がこそこそ言い合いを始めた。俺は愛想笑いの優等生を演じている。これがソツのない姿だ。余計な詮索も話題にされることもない。
(もし結婚した後すぐだったら、こんなに落ち着いていられなかっただろうなあ……)
あれから2年が経ち、自分自身が変わったと思う。黒崎が住む世界には飛び込めない。そうまで思っていたのに、今ではゆっくりと泳げている。自分の努力が少なからずあるとしても、大半が周りからのサポートのおかげだ。
(黒崎さんは連れてきた張本人だし。一貴さんは知らないところで動いてくれていたのか。本人は言わないけど。晴海さんも……)
養子になるまでの約3か月、親族からは反対の声があがった。我が家の方に訪ねては、俺の耳に何かを入れようとする人もいた。黒崎とお義父さんが居ない時を狙ってのことだった。
(あの時はビックリしたよ。怖かったよ~。今は慣れた自分が怖いよ……)
口に出して言う相手は大して怖くない。黙っている人の方が怖い。あからさまに取り入ってくる人は、その後ろに ”そういう意味で怖い人” が立っている可能性がある。見抜くことが難しい。だからこそ、今は優等生のふりをするとか、よく分からないですという、のんびりした末っ子の姿を取っている。実際に分かっていないことが多い。
「もう少し話が続くみたいだね~。何か飲まない?向こうの会館で飲む?」
「そうだな。いただいておこうか」
この後の会食は30分後だ。実家の法事は身内だけなのに、この家はそうではない。古い知り合いや、昔からの取引先等の来客がある。
少し待っていると、係の人から飲み物が用意された。さっそくカウンターへ取りに行き、そばの長椅子に腰かけた。晴海さんと一貴さんも一緒に。
「このお茶、美味いな。夏樹君はどうだ?」
「うん。まったりしてるよ。お兄ちゃんはどう?」
「渋みがあっていい。どの銘柄だ?……すみません。こちらの茶葉は?」
晴海さんがお寺の人に声をかけて、銘柄を聞いた。帰りに買って帰ろう。そんな会話をしながら、3人で寄り添うように話を続けた。それだけの光景なのに、じっと見つめてきた人がいる。声を掛けれくればいいのに。いや、こちらから声を掛けないといけないのか。
「話しかけた方がいいよね?こっちに来ないかも……」
「この場ではやめておこう。周りの空気を読んでいるかもしれない。ああ……、うちの母親がすまない。晴海君、俺は向こうで対応してくる」
「分かった。こっちこそすまない」
「気にするな。母の方が悪い……」
一貴さんが向かった先には、言い争いをしている年配の女性がいた。
黒崎家の親族が一つの会場に集まっている。お坊さんの読経、焼香、説法が終わったところだ。これから後は、隣の会館で会食が始まる。施主であるお義父さんが、お坊さんに挨拶をした。その傍らには黒崎がいる。今後は黒崎が施主になることを伝えていた。
(親族は納得の上か。年齢順にすればいいのになあ……)
どうしても実家と比べてしまう。晴海さんと一貴さんにそう話すと、笑われてしまった。一貴さんが豪快に笑い、晴海さんは疲れた顔になった。見事に正反対の反応をしている。
「それだと話がまとまらないからだ。誰が力があるのか。暗黙のルールだよ」
「財産争いでは別次元だ。ほら、あのあたりだ……」
「晴海君、見させるな」
「笑っているじゃないか。夏樹君には教えた方がいい。成人になっている」
「こら。まだ早いぞ……」
2人がこそこそ言い合いを始めた。俺は愛想笑いの優等生を演じている。これがソツのない姿だ。余計な詮索も話題にされることもない。
(もし結婚した後すぐだったら、こんなに落ち着いていられなかっただろうなあ……)
あれから2年が経ち、自分自身が変わったと思う。黒崎が住む世界には飛び込めない。そうまで思っていたのに、今ではゆっくりと泳げている。自分の努力が少なからずあるとしても、大半が周りからのサポートのおかげだ。
(黒崎さんは連れてきた張本人だし。一貴さんは知らないところで動いてくれていたのか。本人は言わないけど。晴海さんも……)
養子になるまでの約3か月、親族からは反対の声があがった。我が家の方に訪ねては、俺の耳に何かを入れようとする人もいた。黒崎とお義父さんが居ない時を狙ってのことだった。
(あの時はビックリしたよ。怖かったよ~。今は慣れた自分が怖いよ……)
口に出して言う相手は大して怖くない。黙っている人の方が怖い。あからさまに取り入ってくる人は、その後ろに ”そういう意味で怖い人” が立っている可能性がある。見抜くことが難しい。だからこそ、今は優等生のふりをするとか、よく分からないですという、のんびりした末っ子の姿を取っている。実際に分かっていないことが多い。
「もう少し話が続くみたいだね~。何か飲まない?向こうの会館で飲む?」
「そうだな。いただいておこうか」
この後の会食は30分後だ。実家の法事は身内だけなのに、この家はそうではない。古い知り合いや、昔からの取引先等の来客がある。
少し待っていると、係の人から飲み物が用意された。さっそくカウンターへ取りに行き、そばの長椅子に腰かけた。晴海さんと一貴さんも一緒に。
「このお茶、美味いな。夏樹君はどうだ?」
「うん。まったりしてるよ。お兄ちゃんはどう?」
「渋みがあっていい。どの銘柄だ?……すみません。こちらの茶葉は?」
晴海さんがお寺の人に声をかけて、銘柄を聞いた。帰りに買って帰ろう。そんな会話をしながら、3人で寄り添うように話を続けた。それだけの光景なのに、じっと見つめてきた人がいる。声を掛けれくればいいのに。いや、こちらから声を掛けないといけないのか。
「話しかけた方がいいよね?こっちに来ないかも……」
「この場ではやめておこう。周りの空気を読んでいるかもしれない。ああ……、うちの母親がすまない。晴海君、俺は向こうで対応してくる」
「分かった。こっちこそすまない」
「気にするな。母の方が悪い……」
一貴さんが向かった先には、言い争いをしている年配の女性がいた。
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