白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
70 / 265

8-4(夏樹視点)

しおりを挟む
 15時。

 黒崎家の親族が一つの会場に集まっている。お坊さんの読経、焼香、説法が終わったところだ。これから後は、隣の会館で会食が始まる。施主であるお義父さんが、お坊さんに挨拶をした。その傍らには黒崎がいる。今後は黒崎が施主になることを伝えていた。

(親族は納得の上か。年齢順にすればいいのになあ……)

 どうしても実家と比べてしまう。晴海さんと一貴さんにそう話すと、笑われてしまった。一貴さんが豪快に笑い、晴海さんは疲れた顔になった。見事に正反対の反応をしている。

「それだと話がまとまらないからだ。誰が力があるのか。暗黙のルールだよ」
「財産争いでは別次元だ。ほら、あのあたりだ……」
「晴海君、見させるな」
「笑っているじゃないか。夏樹君には教えた方がいい。成人になっている」
「こら。まだ早いぞ……」

 2人がこそこそ言い合いを始めた。俺は愛想笑いの優等生を演じている。これがソツのない姿だ。余計な詮索も話題にされることもない。

(もし結婚した後すぐだったら、こんなに落ち着いていられなかっただろうなあ……)

 あれから2年が経ち、自分自身が変わったと思う。黒崎が住む世界には飛び込めない。そうまで思っていたのに、今ではゆっくりと泳げている。自分の努力が少なからずあるとしても、大半が周りからのサポートのおかげだ。

(黒崎さんは連れてきた張本人だし。一貴さんは知らないところで動いてくれていたのか。本人は言わないけど。晴海さんも……)

 養子になるまでの約3か月、親族からは反対の声があがった。我が家の方に訪ねては、俺の耳に何かを入れようとする人もいた。黒崎とお義父さんが居ない時を狙ってのことだった。

(あの時はビックリしたよ。怖かったよ~。今は慣れた自分が怖いよ……)

 口に出して言う相手は大して怖くない。黙っている人の方が怖い。あからさまに取り入ってくる人は、その後ろに ”そういう意味で怖い人” が立っている可能性がある。見抜くことが難しい。だからこそ、今は優等生のふりをするとか、よく分からないですという、のんびりした末っ子の姿を取っている。実際に分かっていないことが多い。

「もう少し話が続くみたいだね~。何か飲まない?向こうの会館で飲む?」
「そうだな。いただいておこうか」

 この後の会食は30分後だ。実家の法事は身内だけなのに、この家はそうではない。古い知り合いや、昔からの取引先等の来客がある。

 少し待っていると、係の人から飲み物が用意された。さっそくカウンターへ取りに行き、そばの長椅子に腰かけた。晴海さんと一貴さんも一緒に。

「このお茶、美味いな。夏樹君はどうだ?」
「うん。まったりしてるよ。お兄ちゃんはどう?」
「渋みがあっていい。どの銘柄だ?……すみません。こちらの茶葉は?」

 晴海さんがお寺の人に声をかけて、銘柄を聞いた。帰りに買って帰ろう。そんな会話をしながら、3人で寄り添うように話を続けた。それだけの光景なのに、じっと見つめてきた人がいる。声を掛けれくればいいのに。いや、こちらから声を掛けないといけないのか。

「話しかけた方がいいよね?こっちに来ないかも……」
「この場ではやめておこう。周りの空気を読んでいるかもしれない。ああ……、うちの母親がすまない。晴海君、俺は向こうで対応してくる」
「分かった。こっちこそすまない」
「気にするな。母の方が悪い……」

 一貴さんが向かった先には、言い争いをしている年配の女性がいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

デコボコな僕ら

天渡清華
BL
スター文具入社2年目の宮本樹は、小柄・顔に自信がない・交際経験なしでコンプレックスだらけ。高身長・イケメン・実家がセレブ(?)でその上優しい同期の大沼清文に内定式で一目惚れしたが、コンプレックスゆえに仲のいい同期以上になれずにいた。 そんな2人がグズグズしながらもくっつくまでのお話です。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

逃げる銀狐に追う白竜~いいなずけ竜のアレがあんなに大きいなんて聞いてません!~

結城星乃
BL
【執着年下攻め🐲×逃げる年上受け🦊】  愚者の森に住む銀狐の一族には、ある掟がある。 ──群れの長となる者は必ず真竜を娶って子を成し、真竜の加護を得ること──  長となる証である紋様を持って生まれてきた皓(こう)は、成竜となった番(つがい)の真竜と、婚儀の相談の為に顔合わせをすることになった。  番の真竜とは、幼竜の時に幾度か会っている。丸い目が綺羅綺羅していて、とても愛らしい白竜だった。この子が将来自分のお嫁さんになるんだと、胸が高鳴ったことを思い出す。  どんな美人になっているんだろう。  だが相談の場に現れたのは、冷たい灰銀の目した、自分よりも体格の良い雄竜で……。  ──あ、これ、俺が……抱かれる方だ。  ──あんな体格いいやつのあれ、挿入したら絶対壊れる!  ──ごめんみんな、俺逃げる!  逃げる銀狐の行く末は……。  そして逃げる銀狐に竜は……。  白竜×銀狐の和風系異世界ファンタジー。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖
BL
溺愛ドS×天然系男子 俺様副社長から愛される。古い家柄の養子に入った主人公の愛情あふれる日常を綴っています。心臓に疾患を抱えながら、ロックバンドのボーカルとしてステージに立つ夏樹。彼を溺愛するのは、年上で俺様な副社長・黒崎圭一。夏樹は養子として名家に迎えられ、音楽と経営、二つの人生の狭間で揺れていた。それでも黒崎は、束縛と独占欲を隠すことなく、夏樹のすべてを受け止めようとする。ステージを降りる日が近づくかもしれない中、家族の問題、過去の傷、そして未来への不安が静かに忍び寄る。繋いだ手を、決して離さないと誓った二人の、溺愛と再生の物語。※本作からでもお読みいただけます。 黒崎家には黒崎の兄弟達が住んでいる。黒崎の4番目の兄の一貴に親子鑑定を受けて、正式に親子にならないかと、父の隆から申し出があり、一貴の心が揺れる。そして、親子鑑定に恐れを持ち、精神的に落ち込み、愛情を一身に求める子供の人格が現われる。自身も母親から愛されなかった記憶を持つ黒崎は心を痛める。黒崎家に起こることと、黒崎に寄り添う夏樹。 作品時系列:「恋人はメリーゴーランド少年だった。」→「恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編」→「アイアンエンジェル~あの日の旋律」→「夏椿の天使~あの日に出会った旋律」→「白い雫の天使~親愛なる人への旋律」→「上弦の月の天使~結ばれた約束の夜」→本作「青い月の天使~あの日の約束の旋律」

処理中です...