青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 さて、俺はどうしたら良いだろうか。小瀬さんの上着を取ってあげて、着せてあげたい。ストーブの前に居るから熱くなり、脱いでいるうちに奪い取られて、人質にされている。そこで、お義父さんの腰を浮かさせて、さっと上着を取った。

「小瀬さん。どうぞ……」
「ありがとうございます。いやーー、夏樹さんに会えるだなんて……。久弥さんと悠人君もここにいるから、別世界のようです。まさか、門を開けて貰えるなんて思っていませんでした……」
「おい、小瀬。何を話しているんだ?」
「もうーー、黒崎さん!」

 眉をひそめた黒崎のことを叱ってやった。そして、どうして月島さんが変態なのかと聞いてみることにした。誤解なら解いておきたい。きっとそうだと思うからだ。

「どうして、月島さんが変態なんですか?」
「実は、月島社長には、こういう噂がありまして……。若い男が好きで、スーパーで待ち伏せして、店の外で声を掛けて、1万円あげるから、尻を撫でさせろっていう人なんだそうです!」
「ええ?」
「その子が履いているパンツを買い取るっていうときもあるそうです……。電柱の影で脱がせて、その子はパンツ無しで帰るんだけど、1万円もらったから我慢できるとか……」
「まさかーーーー」

 俺は思わず笑い声が出てしまった。そんなことをするわけがないと思ったからだ。真面目な人だと聞いている。若い人にも紳士的に接して、どんな人も月島さんの事が好きになるという噂なら聞いてある。久弥と悠人も頷いている。そして、久弥がこっちに来て、小瀬さんの上着を着せてあげ始めた。

「若い男が好きだという奴はなーー、こうやって、何気ない気遣いを見せる男だ!こうして着せたついでに若い男の身体の臭いを嗅ぐとか、明日の予定を聞きたいって声を掛けるんだぞーー。そこに居る、早瀬裕理だ!」
「なんだって?俺なのか?」
「そうだぞーー、裕理!聞いているんだぞ!」

 なんと、矛先が早瀬さんに向いてしまった。セクハラ行為なんてするわけが無いと思えるのに、高野さん経由で噂が広まっていると、久弥が言い出した。それは、早瀬さんが気遣い男だということと、ついでに若い男性の首筋に触っているのだという噂だ。

「久弥、いくらなんでも、それは悪い噂すぎるよ~」
「いや、夏樹君。したことがあるんだ。今年の春のことだ。22歳の社員が、長かった髪の毛を切って入社してきたんだけど、襟足が残っていてね。ここは剃って貰った方が見栄えが良いよって、アドバイスをしたんだ。その子は秘書室勤務だから、よく顔を合わすんだ。それで、襟足を見てくれって言うから、見ているところを、高野に見られたことがある……。たしかに予定を聞いたこともあるし、酒が抜けていないというから、臭いを嗅いだこともある。飲み会で飲みすぎたという翌日だ……」
「それはひどいよ~」

 いくら早瀬さんと高野さんが友達同士とはいえ、言い過ぎだ。面白がっているのだろう。そして、俺は笑っている早瀬さんとは対照的に、沈んだ顔になっている悠人のことが心配になった。パートナーの浮気を心配しているのだろうか。

「ゆうとーー、どうしたんだよ?」
「なつきーー。裕理さんのことを心配しているんじゃないんだ。月島さんのことだよーー。良い人なんだよ。そんな噂は、誰かと間違えていると思うんだ。えーーっと……」
「知っている人なのかよ?」
「わわわっ。あのね……、こっそり……」
「なになに?へえーー、そういうことかーー」

 こっそりと俺だけに教えて貰った。月島さんには通っている銀座のバーがあり、そこのママのことではないだろうかということだ。ゲイバーだというから、ママは男性だという。だから、気を遣って、大声で言えないのだろう。

 ゲイバーなら黒崎だって付き合いで行ったことがあるというし、久弥だって何軒か知っているというから、変なことではない。

 月島さんには親しい友人であり、バーのママをしている人が居ることが分かり、安心した。これなら小瀬さんに言って、誤解を解けそうだ。パンツを買い取るのは、月島さんの友達の方なのだと。それなら会っても大丈夫だろう。
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