青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 お義父さんがこうして朝陽に関わり、朝陽の先生に会おうとすることには、ママはどう思うだろうか。俺は最初は心配していた。元夫に関わるのは嫌だろうと思った。しかし、割り切ったということだった。全ては朝陽のためだと、黒崎が説得したからだ。黒崎としてはママに朝陽に関わらせるのは学校の関係だけだとはっきり言っている。後はこっちに任せてくれと言っていた。

 朝陽としては母と息子の自分たちだけでやっていくという思いがあり、早く自立しないといけないといという焦りとプレッシャーがあったが、黒崎の介入により、頼っても良いのだと、彼のことを信頼し始めた。それは去年のことだ。強引に大学を休学させられて、プラセルでのバイトを始めて、一貴さんから鍛えられて、それでも良い道だったと言っていた。黒崎が選ぶことは正しいのだと思ったそうだ。俺のお兄ちゃんなんだ。そう思えたそうだ。

 そのお兄ちゃんが朝陽にこんなことを言い出した。女の子にモテているのかと。それには朝陽は頷いた。そして、ハッとした顔になった。ヤバイという顔もした。

「おい。前みたいな事にならないだろうな?」
「お兄ちゃん。分かっているよ。勉強を第一に考えているよ。俺、むなしさを学べたんだ。いくらモテたって、本当に俺のことを好きで居てくれる人に出会えなかったなら、なんて寂しいことだろうって……」
「それが聞けて良かった。……六槍君とはどうなんだ?連絡を取っているのか?」
「圭一。それには心配は及ばない。二人は毎日連絡を取っている」

 威圧感満載の黒崎の前に立つ朝陽に、一貴さんが助け船を出した。いや、話の内容からそうならなかったのか。朝陽が顔を真っ赤にしたからだ。良い感じに進んでいるということなのか。二人はまだ付き合っていないことは知っている。朝陽は女性が好きだから、男性の六槍さんには躊躇している。しかし、六槍さんが言うには、朝陽の本音が出てきて、僕のことはナシではないようだと言って、喜んでいた。

「朝陽。今のアパートは一人暮らし用だ。勉強に励むための部屋だ。分かっているな?」
「もちろんだよ。バイト代は貯金しているよ」
「六槍君のマンションに行くなら止めない。一緒に住むこともだ」
「一緒には住まないよ。結構遠いからさ」
「彼の方がこっちに引っ越してくると言えば、どうなんだ?」
「あ……」
「自分の気持ちが分かったか。モテても自覚していろ。大事な人がいなくなる前にな」
「お兄ちゃん……」
「入学までよく頑張った。やっと褒められる」

 そう言って、黒崎は朝陽の頭を撫でた。朝陽は顔を赤くしたままだ。今年の6月に22歳になるから、俺よりも一つ年下だ。彼に対して幼い印象を抱いていた黒崎は、朝陽のことを心配していた。今だってそうだ。朝陽は何になりたいのか、どうしたいのか、自己主張をするようでそうでない朝陽には根っこがないとまで言っていた。しかし、医学の道に戻るとはっきり宣言して、戻ってきた。応援したいと思っている。

 ところで、六槍さんとはどうなったのか。もう付き合うと決めてはどうかと思った。一生の相手としてだ。そう決めても良いと思う。彼はいい人だと思う。過去には一貴さんによる伊吹の仕事の妨害に手を貸したし、コンサートの時には黒崎にナンパをした彼だが、いわゆる頭の良い人であり、迷いがちな朝陽の性格にはぴったりな人だと思う。

 朝陽は小さい頃から我儘を言ってこなかったと思う。だから、心の内に込められた希望を口に出せないで居る。それが当たり前とか、そうするべきだという思いに支配されている。そして、愛されたいと思っている。安心していられる居場所がなかった。俺にはそう見える。いくら二葉が居たって、朝陽はその二葉と自分を比べることをし続けていた。何でも出来るお姉ちゃんという存在だ。もうそこから解放されても良いと思う。
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