妹に婚約者を奪われましたが、公爵令息から求婚されました!

安奈

文字の大きさ
26 / 42

26話 絶縁のお話 その2

しおりを挟む
「でぃ、ディエス様……今、なんと?」


 突然のディエス様の発言に、お父様は聞き返していた。おそらく、考えが追い付いていないのね。お父様の顔はおおよそ、皆が想像するであろう伯爵という立場の人のそれではなかった。なんとも情けない雰囲気を醸し出している……。

 妹のジニーも似たような表情になっているわね……。


「言葉の通りだ。国王陛下からの許可は既に頂いているが、シンディ殿は私と婚約を結ぶに当たり、エトワール家とは断絶という形を取らせてもらう。彼女の面倒は、今後はマローネ家が責任を持って見るので、安心してくれ」


 有無を言わさないディエス様からの答え……国王陛下からの許可状まで見せながら、お父様やジニーに反論の余地を与えていなかった。傍らに立つ私とライラは静かに事の成り行きを見守る。


「いくらディエス様とはいえ、そのような振る舞いは……」

「貴殿らのシンディ殿への態度が招いた結果だろう? エトワール伯爵とジニー殿は、彼女に行った振る舞いをもう一度最初から見つめ直すんだな」


 ディエス様は静かに言っているけれど、表情的にはとても怒っている印象があった。私にしか分からない変化かもしれないけれど……。


「あの、ディエス様……」

「なにかな? ジニー殿?」


 そんな時、お父様の隣に立っていたジニーがディエス様に話しかけた。

「私が姉さまにしたことについては、謝ります……謝罪をいたします」

「……」


 心が籠っているのか不明な適当な言葉と言えるのか……まさか、ジニーがこの場で「謝罪」なんて言葉を使ってくるなんてね……。何が狙いなのかしら?


「謝罪か……ふむ、それで?」

「そこでお願いがあるんです……私も、マローネ家に行かせてください! もう、こんな家、嫌なんです……! お父様やお母様は私のことを商品としか見ていないし、このままでは私、フリント様と別れた挙句、他国に売り飛ばされてしまうんです……! どこの馬の骨とも分からない、最低貴族と縁談が成立しちゃうかも……」


「最低貴族……君がそれを言うか……」


「ジニー、貴様、親に向かってなんという口の利き方だ!」

「だって、本当のことじゃない!!」


 完璧に被害者目線のジニーだけれど、あなた完全な加害者だから。それを忘れるんじゃないわよ? 謝罪もまだしてないし……。まさか、ここに来てジニーがマローネ家に行きたいなんて言うとはね……ジニーが泣いてた時は、一瞬は可哀想なんて考えてしまったけれど……前言撤回ね。


「本当に面白く、面倒な家族だな」

「否定できません……」


 ディエス様と私の視線が交錯する。ディエス様の表情は「受け入れるわけはない」という強い意志が働いているようだった。
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

白い結婚のはずでしたが、理屈で抗った結果すべて自分で詰ませました

鷹 綾
恋愛
「完璧すぎて可愛げがない」 そう言われて王太子から婚約破棄された公爵令嬢ノエリア・ヴァンローゼ。 ――ですが本人は、わざとらしい嘘泣きで 「よ、よ、よ、よ……遊びでしたのね!」 と大騒ぎしつつ、内心は完全に平常運転。 むしろ彼女の目的はただ一つ。 面倒な恋愛も政治的干渉も避け、平穏に生きること。 そのために選んだのは、冷徹で有能な公爵ヴァルデリオとの 「白い結婚」という、完璧に合理的な契約でした。 ――のはずが。 純潔アピール(本人は無自覚)、 排他的な“管理”(本人は合理的判断)、 堂々とした立ち振る舞い(本人は通常運転)。 すべてが「戦略」に見えてしまい、 気づけば周囲は完全包囲。 逃げ道は一つずつ消滅していきます。 本人だけが最後まで言い張ります。 「これは恋ではありませんわ。事故ですの!」 理屈で抗い、理屈で自滅し、 最終的に理屈ごと恋に敗北する―― 無自覚戦略無双ヒロインの、 白い結婚(予定)ラブコメディ。 婚約破棄ざまぁ × コメディ強め × 溺愛必至。 最後に負けるのは、世界ではなく――ヒロイン自身です。 -

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!

ユウ
恋愛
辺境伯爵次男のユーリには婚約者がいた。 侯爵令嬢の次女アイリスは才女と謡われる努力家で可愛い幼馴染であり、幼少の頃に婚約する事が決まっていた。 そんなある日、長女の婚約話が破談となり、そこで婚約者の入れ替えを命じられてしまうのだったが、婚約お披露目の場で姉との婚約破棄宣言をして、実家からも勘当され国外追放の身となる。 「国外追放となってもアイリス以外は要りません」 国王両陛下がいる中で堂々と婚約破棄宣言をして、アイリスを抱き寄せる。 両家から勘当された二人はそのまま国外追放となりながらも二人は真実の愛を貫き駆け落ちした二人だったが、その背後には意外な人物がいた

処理中です...