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5話 貴族街での出来事 その2
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「も、申し訳ありません……ハルト様……! つ、つい……」
「いや、いいんだよ。嬉しかったさ」
「ハルト様……」
抱き着いていた私だけれど、ここが貴族街の庭園内であることを思い出して、慌ててハルト様から離れる。とても名残り惜しいけれど、気持ちが十分通じ合ったことは実感出来ていた。
「さて、足早にアクアマイトの別宅まで向かうとしようか。ないとは思うが、シグマやアンナが付いて来ていないとも限らないからな」
「か、畏まりました……」
……あれ? ハルト様は案外冷静だわ。もしかして、私が勝手に舞い上がっていただけなのかな……それだったら少しショックだけれど……。
「先ほどのことは、シエルの胸に留めていてくれるとありがたい。また、正式に返事を聞きたいと考えているのでな」
「……はい!」
私はとても大きく頷いて返事を返した。最早、答えを出しているといっても過言ではない程に元気よく。ハルト様もその返事に満足したのか、とても朗らかな笑みを零す。
それから私はハルト様に連れられて、アクアマイト家の別宅へと向かって行った。
────
「お待ち申し上げておりました、シエル様」
「メルレーンさん、連絡の方は行っていたの?」
「はい。ハルト王太子殿下の配下のお方より、事前にシエル様がお泊りになられるとご報告を受けておりました」
アクアマイト家の別宅の入り口でもてなしてくれたのは、メイドであるメルレーンさん。普段からこの別宅の管理を任せられている信頼の於ける人ね。
既にメルレーンさんに連絡がいっていたとのことで、チラッと王太子殿下に視線を合わせる。なにかを言うわけではなく、優しく頷いていらした。おそらく、王家直属の親衛隊が影ながら動いているんでしょうね。今ももしかしたら監視とかしているのかも……。
「さて、今日のところはここで失礼するよ、シエル。積もる話はまた今度にしようか」
「はい、ハルト様。本日は助けていただき本当にありがとうございました」
「いや、気にしないでくれ」
「それから……長い距離ではありませんでしたが、ここまで送っていただいたことにも感謝しております。非常に楽しかったです」
「私もだシエル。また、昔のようにたくさん話せたらいいね」
「はい!」
私はハルト王太子殿下に笑顔で大きな挨拶を交わした。また10年前のようにお話ができるようになる……それはとても嬉しいこと。実際はそう簡単には行かないんだろうけど、久しぶりに間近にいらしたハルト様を見ながら、私は夢のような時間が来ることを楽しみにしていた。
「いや、いいんだよ。嬉しかったさ」
「ハルト様……」
抱き着いていた私だけれど、ここが貴族街の庭園内であることを思い出して、慌ててハルト様から離れる。とても名残り惜しいけれど、気持ちが十分通じ合ったことは実感出来ていた。
「さて、足早にアクアマイトの別宅まで向かうとしようか。ないとは思うが、シグマやアンナが付いて来ていないとも限らないからな」
「か、畏まりました……」
……あれ? ハルト様は案外冷静だわ。もしかして、私が勝手に舞い上がっていただけなのかな……それだったら少しショックだけれど……。
「先ほどのことは、シエルの胸に留めていてくれるとありがたい。また、正式に返事を聞きたいと考えているのでな」
「……はい!」
私はとても大きく頷いて返事を返した。最早、答えを出しているといっても過言ではない程に元気よく。ハルト様もその返事に満足したのか、とても朗らかな笑みを零す。
それから私はハルト様に連れられて、アクアマイト家の別宅へと向かって行った。
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「お待ち申し上げておりました、シエル様」
「メルレーンさん、連絡の方は行っていたの?」
「はい。ハルト王太子殿下の配下のお方より、事前にシエル様がお泊りになられるとご報告を受けておりました」
アクアマイト家の別宅の入り口でもてなしてくれたのは、メイドであるメルレーンさん。普段からこの別宅の管理を任せられている信頼の於ける人ね。
既にメルレーンさんに連絡がいっていたとのことで、チラッと王太子殿下に視線を合わせる。なにかを言うわけではなく、優しく頷いていらした。おそらく、王家直属の親衛隊が影ながら動いているんでしょうね。今ももしかしたら監視とかしているのかも……。
「さて、今日のところはここで失礼するよ、シエル。積もる話はまた今度にしようか」
「はい、ハルト様。本日は助けていただき本当にありがとうございました」
「いや、気にしないでくれ」
「それから……長い距離ではありませんでしたが、ここまで送っていただいたことにも感謝しております。非常に楽しかったです」
「私もだシエル。また、昔のようにたくさん話せたらいいね」
「はい!」
私はハルト王太子殿下に笑顔で大きな挨拶を交わした。また10年前のようにお話ができるようになる……それはとても嬉しいこと。実際はそう簡単には行かないんだろうけど、久しぶりに間近にいらしたハルト様を見ながら、私は夢のような時間が来ることを楽しみにしていた。
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