侯爵令息から婚約破棄されたけど、王太子殿下から婚約の申し出がありました!

安奈

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6話 シグマの嫌がらせ その1

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「はあ~~~~~」

「シエル様、何やら幸せなお顔をされています」

「そうかな?」

「ええ、それはもう。とても婚約破棄をされたお方には見えませんわ」


 シグマから婚約破棄を言い渡されて2日が経過していた。メルレーンは私の顔を見てそのように判断したようだけど、それは間違っていないわね。

 婚約破棄をされたのは、わずか2日前……それも貴族達が見ているパーティの最中……本来なら、アクアマイト家の汚点にすらなり得る事態だったけれど、なんとなんと、次期国王であるハルト王太子殿下が助けてくれた。それから私を貴族街の別宅へと送ってくれて……


 そんな幸せなことが起きて、私は1日以上経った今でも、思い出すだけで顔がにやけてしまっている。


「王太子殿下に救われたことで、シエル様が本来負うはずだった不幸が緩和されている……メルレーンは非常に嬉しく思っております」

「でも、いつまでも私が浮かれててもダメね。母さんと父さんには、婚約破棄のことを伝えないといけないし」

「それについては心配無用です。既に昨日の段階で連絡は行っているかと思いますので」


 本当に……? しまったわ、夢を見ているような感覚だったから、時間が過ぎ去るのを忘れていたのよね……。まさか、メルレーンに任せてしまうなんて……。


「ごめんなさい、メルレーンさん。代わりにやってくれたのよね?」

「とんでもないことでございます。シエル様の手足になることも、我々の務めになりますので」


 メイドの鑑って感じの言葉よね、すごいわ。私も19歳だし、メルレーンたちが仕えるに値する人間にならなくちゃ。まずはシグマからの婚約破棄からの立ち直りよね……ハルト様に助けられたから良かったけど、それがなかったら、動揺はきっと今でも隠せていないでしょうから。

 私は日の光を全身で浴びようと考え、メルレーンとの会話を切り上げて別宅の外へと出てみた。貴族街に降り注ぐ太陽はとても輝いている。今日は本当に良い天気ね、ハルト様は忙しいみたいだから来られないでしょうけど、なんだか気分も高揚していく感じだわ。


「……ずいぶんと上機嫌みたいだね、シエル」

「ホントよね~~たかが、伯爵令嬢の分際で……!」


 貴族街の庭園辺りまで足を運んだ私……その時に聞こえて来た声は……


「し、シグマ……アンナも……」

「僕を呼び捨てにするなんて、本当に偉くなったよね。昨日の今日で地位でも上がったのかな?」

「きゃはははははっ、最高にウケるんですけど~~~!」


 いじめっ子なんて言葉では生温い……明らかに私に対してキツイ嫌がらせを考えているシグマとアンナの二人は私を醜い形相で睨んでいた。それにしても、これが私の夫になる予定だった人なんて……私はむしろ、そちらの方が信じられないでいた。
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