没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する~しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです~

マーラッシュ

文字の大きさ
45 / 86

父親の心境は複雑です

しおりを挟む
 三ページ目と四ページ目を開いた瞬間、古文書から使い方が頭に流れてきた。
 まずは三ページ目だけど枠が二つある。ここにはカードを二枚セットすることができるようだ。
 そしてセットすることで二枚のカードを合成することができ、新たなカードを作ることが出来る。ただし合成したカードは消耗品でなくとも、一度使用すると消滅してしまうみたいだ。
 これはかなり使えるページだぞ。一度だけという縛りはあるけど強力なカードを作ることができそうだ。

 次に四ページ目だが、ここには五枚の枠があった。
 どうやらこのページは、カードを保護することができるようだ。
 現状、カードは最後のページに保管されている。バトルになれば使いたくなくても、このページのカードを引かなければならなかった。だがこの四ページ目にセットしとけば、バトル中に使われることはないようだ。

 そしてもう1つ。⭐4のカードに関してはバトル中に使用する時、その⭐分のカードを犠牲にしなければならない。
 つまりは最上級ポーション⭐4をバトルで使う時は、ポイズンスネーク⭐2のカードを二枚目犠牲にするか、もしくは大岩⭐1とパワーブースター⭐3の犠牲が必要になる。
 もちろん犠牲になったカードはそのバトルが終わるまで、使用することが出来ない。

 強力なカードは簡単には使えないということか。
 だけど合成も⭐4以上のカードもかなり強力なため、使い方次第では俺の力になってくれるだろう。特に合成はその後カードが消滅してしまうから、使い方は気をつけないといけない。
 とりあえず俺は最上級ポーションの一枚を最後のページに、残り二枚を保護のページにセットしておいた。

 トントン

 カードを古文書にセットした後、突然ドアがノックされる。

「ルリシア様、ユート様、夕食の準備が出来ました」
「わかりました。すぐに行きます」

 もう夕食食の時間か。
 なるべく早く皇家の墓に行きたいけど、夜道は危険だ。
 今日中に皇帝陛下から許可書をもらって、明日の朝一番で旅立つとしよう。

「ユートくん、ご飯だって。行きましょ」
「うん」

 俺とルリシアさんは食堂へと向かった。
 そして食堂に到着すると、既に二人座っているのが見えた。

「ユートくん、私の隣が空いてるわよ」
「小僧は私の隣に座れ」
  
 えっ? 食堂に着いた早々これですか。
 皇后様と皇帝陛下のお誘い。俺はどっちに座ればいいんだ。

「渡す物があるからこっちにこい」

 渡す物って皇家の墓に入る許可書なのか? ここでフィリアさんの隣に座ったら機嫌を損ねてしまいそうだな。

「じゃあせっかくなので、今回は皇帝陛下の隣に座らせてもらいます」
「あん⋯⋯ユートくんを取られてしまったわ」
「ごめんなさい」

 皇后様がすごく悲しそうな表情をしている。せっかく誘ってもらったのに申し訳ないことをしてしまったな。

 だが悲しそうな表情は一瞬のことだった。

「それならもう片方の空いてる席に私が移動するわ」

 フィリアさんは立ち上がり、笑顔で俺の隣に行こうとする。

 しかし俺の隣の席は、既にルリシアさんが座っていた。
 いつの間に移動したんだ。気配が全く読めなかったぞ。

「お母様残念でした」
「さすがルリシアね。抜け目ないわ」
「早い者勝ちです」

 何の勝負だよ。とりあえず二人は置いといて、俺は皇帝陛下にもらえる物をもらおう。

「これが皇家の墓に入れる許可書だ」
「ありがとうございます」

 今までの言動からして、素直にもらえないと思っていたけど、そんなことはなかった。

「それと⋯⋯」

 皇帝陛下が俺に近づき耳元で囁く。

「ルリシアは連れていくな。明日の早朝一人で皇家の墓に行くがよい」

 俺は皇帝陛下の言葉に頷く。
 元より俺もそう思っていた。
 ルリシアさんをわざわざ危険な旅に連れていく訳にはいかない。
 皇后様の毒が完治し、自分の命をねらう者がいなくなったんだ。
 もう城の外に出る必要はないはず。
 皇帝陛下は続けて言葉を呟いた。

「それと⋯⋯一度しか言わん。ルリシアが――」
「えっ? いいんですか?」

 俺は皇帝陛下の信じられない言葉に、思わず聞き返してしまう。

「本当にいいの?」

 不安になりもう一度問いかける。
 だが皇帝陛下は顔を背け、こちらと目を合わせてくれない。

「お母様、ユートくんとお父様は何を話しているのでしょうか?」
「ふふ⋯⋯さあ、男同士の話し合いじゃない」
「何ですかそれ」
「女の私とルリシアは知らなくていいことよ」

 ルリシアはフィリアの言葉の意味がわからず気になっていたが、朝食が運ばれてきたため、そちらに目を奪われる。

「久々の家族揃っての食事だな」

 今までフィリアさんや皇帝陛下が毒で体調が悪かったり、ルリシアさんはボルゲーノさんの所にいたので、叶わぬことだった。三人ともとても嬉そうだ。だけどその場に俺がいてもいいのかな? でも誘われているのに退出するのは失礼だよな。
 俺はこの場で食事をすることを許されたと思い、夕食を食べ始める。
 そして美味しい夕食を食べ終わった後、俺達はルリシアさんの部屋に戻った。
 部屋に戻った後はお風呂に入り(またルリシアさんが乱入してきた)、同じベッドで寝ることになった。

 そして夜が明けた。

 日が出始めた頃。俺は眠りから目覚め、抱きしめているルリシアさんの手を剥がしベッドから降りる。
 まだ早朝であるため、ルリシアさんは気持ち良さそうに寝ていた。
 この寝顔を見るのも、今日で最後かもしれない。

「ルリシアさんと出会えて本当に良かったよ」

 トアの病が治ったら、また会いたいな。
 その時はトアを紹介するよ。

 さすがに帝国のお姫様を連れ出す訳にはいかない。
 俺は音を立てず着替えて、ルリシアさんの部屋を後にする。
 そして皇家の墓へ行くため、俺はグランツヴァインの北門へた足を向けるのであった。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...