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父親の心境は複雑です

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 三ページ目と四ページ目を開いた瞬間、古文書から使い方が頭に流れてきた。
 まずは三ページ目だけど枠が二つある。ここにはカードを二枚セットすることができるようだ。
 そしてセットすることで二枚のカードを合成することができ、新たなカードを作ることが出来る。ただし合成したカードは消耗品でなくとも、一度使用すると消滅してしまうみたいだ。
 これはかなり使えるページだぞ。一度だけという縛りはあるけど強力なカードを作ることができそうだ。

 次に四ページ目だが、ここには五枚の枠があった。
 どうやらこのページは、カードを保護することができるようだ。
 現状、カードは最後のページに保管されている。バトルになれば使いたくなくても、このページのカードを引かなければならなかった。だがこの四ページ目にセットしとけば、バトル中に使われることはないようだ。

 そしてもう1つ。⭐4のカードに関してはバトル中に使用する時、その⭐分のカードを犠牲にしなければならない。
 つまりは最上級ポーション⭐4をバトルで使う時は、ポイズンスネーク⭐2のカードを二枚目犠牲にするか、もしくは大岩⭐1とパワーブースター⭐3の犠牲が必要になる。
 もちろん犠牲になったカードはそのバトルが終わるまで、使用することが出来ない。

 強力なカードは簡単には使えないということか。
 だけど合成も⭐4以上のカードもかなり強力なため、使い方次第では俺の力になってくれるだろう。特に合成はその後カードが消滅してしまうから、使い方は気をつけないといけない。
 とりあえず俺は最上級ポーションの一枚を最後のページに、残り二枚を保護のページにセットしておいた。

 トントン

 カードを古文書にセットした後、突然ドアがノックされる。

「ルリシア様、ユート様、夕食の準備が出来ました」
「わかりました。すぐに行きます」

 もう夕食食の時間か。
 なるべく早く皇家の墓に行きたいけど、夜道は危険だ。
 今日中に皇帝陛下から許可書をもらって、明日の朝一番で旅立つとしよう。

「ユートくん、ご飯だって。行きましょ」
「うん」

 俺とルリシアさんは食堂へと向かった。
 そして食堂に到着すると、既に二人座っているのが見えた。

「ユートくん、私の隣が空いてるわよ」
「小僧は私の隣に座れ」
  
 えっ? 食堂に着いた早々これですか。
 皇后様と皇帝陛下のお誘い。俺はどっちに座ればいいんだ。

「渡す物があるからこっちにこい」

 渡す物って皇家の墓に入る許可書なのか? ここでフィリアさんの隣に座ったら機嫌を損ねてしまいそうだな。

「じゃあせっかくなので、今回は皇帝陛下の隣に座らせてもらいます」
「あん⋯⋯ユートくんを取られてしまったわ」
「ごめんなさい」

 皇后様がすごく悲しそうな表情をしている。せっかく誘ってもらったのに申し訳ないことをしてしまったな。

 だが悲しそうな表情は一瞬のことだった。

「それならもう片方の空いてる席に私が移動するわ」

 フィリアさんは立ち上がり、笑顔で俺の隣に行こうとする。

 しかし俺の隣の席は、既にルリシアさんが座っていた。
 いつの間に移動したんだ。気配が全く読めなかったぞ。

「お母様残念でした」
「さすがルリシアね。抜け目ないわ」
「早い者勝ちです」

 何の勝負だよ。とりあえず二人は置いといて、俺は皇帝陛下にもらえる物をもらおう。

「これが皇家の墓に入れる許可書だ」
「ありがとうございます」

 今までの言動からして、素直にもらえないと思っていたけど、そんなことはなかった。

「それと⋯⋯」

 皇帝陛下が俺に近づき耳元で囁く。

「ルリシアは連れていくな。明日の早朝一人で皇家の墓に行くがよい」

 俺は皇帝陛下の言葉に頷く。
 元より俺もそう思っていた。
 ルリシアさんをわざわざ危険な旅に連れていく訳にはいかない。
 皇后様の毒が完治し、自分の命をねらう者がいなくなったんだ。
 もう城の外に出る必要はないはず。
 皇帝陛下は続けて言葉を呟いた。

「それと⋯⋯一度しか言わん。ルリシアが――」
「えっ? いいんですか?」

 俺は皇帝陛下の信じられない言葉に、思わず聞き返してしまう。

「本当にいいの?」

 不安になりもう一度問いかける。
 だが皇帝陛下は顔を背け、こちらと目を合わせてくれない。

「お母様、ユートくんとお父様は何を話しているのでしょうか?」
「ふふ⋯⋯さあ、男同士の話し合いじゃない」
「何ですかそれ」
「女の私とルリシアは知らなくていいことよ」

 ルリシアはフィリアの言葉の意味がわからず気になっていたが、朝食が運ばれてきたため、そちらに目を奪われる。

「久々の家族揃っての食事だな」

 今までフィリアさんや皇帝陛下が毒で体調が悪かったり、ルリシアさんはボルゲーノさんの所にいたので、叶わぬことだった。三人ともとても嬉そうだ。だけどその場に俺がいてもいいのかな? でも誘われているのに退出するのは失礼だよな。
 俺はこの場で食事をすることを許されたと思い、夕食を食べ始める。
 そして美味しい夕食を食べ終わった後、俺達はルリシアさんの部屋に戻った。
 部屋に戻った後はお風呂に入り(またルリシアさんが乱入してきた)、同じベッドで寝ることになった。

 そして夜が明けた。

 日が出始めた頃。俺は眠りから目覚め、抱きしめているルリシアさんの手を剥がしベッドから降りる。
 まだ早朝であるため、ルリシアさんは気持ち良さそうに寝ていた。
 この寝顔を見るのも、今日で最後かもしれない。

「ルリシアさんと出会えて本当に良かったよ」

 トアの病が治ったら、また会いたいな。
 その時はトアを紹介するよ。

 さすがに帝国のお姫様を連れ出す訳にはいかない。
 俺は音を立てず着替えて、ルリシアさんの部屋を後にする。
 そして皇家の墓へ行くため、俺はグランツヴァインの北門へた足を向けるのであった。

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