姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ

文字の大きさ
3 / 147

一癖も二癖もある後輩

しおりを挟む
羽ヶ鷺学園⋯⋯文武両道をかかげる国立の高等学校。だが通常の高校とは違い、様々な能力が必要とされる学校であった。普通に卒業するだけであるならば授業を受け、テストでは赤点をとらずにいれば問題ない。
 しかし羽ヶ鷺学園では通常の成績表とは別に、独自の能力査定である知力、学力、身体能力、コミュニケーション力、素行の評価があり、これらの成績優秀者は学園独自のスコアが配布され、指定の物であるならばこのスコアを使って物を購入したり、食事をしたりすることができる新たな試みを取り入れた学園である。

「うぅ⋯⋯少し緊張します」

 俺達は住宅街を通り、羽ヶ鷺学園へと向かう道でユズがポツリと外行きの声でナーバスな言葉を吐く。
 ユズは人見知りすることがあり、親しい間柄でないと素っ気ない態度を取ってしまうことがあるから、新しい学園に行くことが不安なのだろう。

「昨日一回行ってるから大丈夫だろ?」
「昨日は入学式だけ⋯⋯終わったら帰宅だったから。同じ学園の人と一言も話していないし」

 ちなみに新一年生と生徒会のメンバーは昨日から学園が始まっていて天城家では今日から登校である。

「生徒の評価対象項目にコミュニケーション力ってあるんだぞ⋯⋯大丈夫か?」
「大丈夫じゃないです⋯⋯良いですよね兄さんと姉さんは社交的で」
「コト姉はともかく俺は必要な人としか話してないけどな」
「お姉ちゃんも必要な人としか話してないよ~」

 コト姉はその必要な人のキャパが半端ないけどな。

「姉さんは生徒会長だからコミュニケーション力の塊みたいなものですからいいですよね」
「そんなことないよ~お姉ちゃんだって人見知りするよ~」
「コト姉はそんなものないよな」
「リウトちゃんひど~い」

 どうせならその人見知りを俺に発動してほしいものだ。さすがに毎日姉に起こしてもらっていると他人に知られたら、シスコン認定されてしまう。

「ユズも中学からの友達がいるから大丈夫だろ?」

 俺とも繋がりがあるちょっと⋯⋯いやかなり特殊な奴が。だが悪い子ではないのでユズも心強いだろう。

「むむっ! 私の探知スキルによるとこっちに先輩達の気配が⋯⋯」

 噂をすればなんとやら、曲がり角から突然羽ヶ鷺の制服を着たツインテールの女の子が現れた。特に特徴的なのが、首についた白と黒のチョーカーで、今ではこの子のチャームポイントになっている。

「先輩方、ユズユズおはようございます」
「おはよう瑠璃」

 この異世界でありそうな言葉を口走っている子は斑鳩いかるが瑠璃るり⋯⋯ユズと同学年で俺ともただならぬ関係である。

「瑠璃さんおはようございます」
「瑠璃ちゃんおはよ~」

 3人共明るく挨拶をかわす。
 ユズも瑠璃には心を許しているのか、余所行きの顔を出してはいない。
 それにしても瑠璃は元気だな⋯⋯初めて会った時とは大違いだ。
 俺と瑠璃は2年程前からの付き合いで、その頃の瑠璃は、学校には行っていたが外に出ることがない半分引きこもりのような状態だった。そしてその時に見ていたアニメやゲームの影響で、異世界用語を口にするようになってしまったが、それも瑠璃の個性なので俺は良いと思う。

「リウト先輩さっきから私のことを見てどうしましたか? ま、まさか制服女子を一週間凝視し続けることによって、ついに透視のスキルを身につけたのですか!」

 瑠璃がとんでもないことを言い放つとユズが咄嗟に両腕で胸の部分を隠す。

「そんな素敵なスキル⋯⋯いやそんなことできるわけないだろ!」
「いえ、エチエチの実を食べた変態の兄さんならあり得る話です」

 ユズは俺を何かの漫画の能力者と勘違いしているのか? もし本当にそんなスキルが使えたら⋯⋯最高だな。
 俺はつい能力者となった自分を思い浮かべてしまう。

「デレデレして⋯⋯やっぱり兄さんは変態ですね。私達から離れて下さい」
「リウトちゃん、エッチなのはダメだよ!」
「私の鑑定スキルでもリウト先輩のスケベ値はSランクですね」

 俺は謂れのない罪を被せられると、三人は足早に学校へと向かってしまった。
 くそっ! 元はと言えば瑠璃が変なことを言うから。
 俺は後で瑠璃に復讐することを決意し、三人の後を追う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...