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開かずの扉を開くには美味しい物が有効だ
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「ただいま」
俺はユズに見捨てられ1人で自宅へと戻ったが、家の中から返事が返ってこない。この時間は父さんと母さんは仕事、姉さんは生徒会、ユズは玄関に靴があるから帰っていると思うが、先程の件で俺と話したくないといった所か。
とりあえず俺は八百屋で買ってきた食材を冷蔵庫にしまい、そして部屋に通学用のカバンを置くと、何や隣の部屋から声が聞こえてきた。
「ああ! 私は兄さんになんてことを言ってしまったの!」
どうやらいつものようにユズの懺悔タイムが始まったらしい。
「本当は兄さんが私以外の下着を見て嫉妬しただけなのに」
嫉妬って⋯⋯ユズのブラコンは大概だな。
「でも私は悪くない。兄さんが悪いよね。鼻の下をデレデレと伸ばして」
マジか! でも仕方ないよな。偶然とはいえ羽ヶ鷺のヒロインの秘密が目の前に広がっていたら、誰もが視線向け、至福な表情をするだろう。
「兄さんは⋯⋯誰でも興奮するのかな⋯⋯例えば私でも⋯⋯」
ユズが1人で話を変な方向に持っていこうとしている。さすがの俺でも実の妹の下着で興奮する変態ではない。確かにユズは世間一般で見てもかなり可愛いとは思う。それに同じ家で暮らしているとユズもコト姉も油断しているのか、たまに下着があらわになっている時があり見慣れているしな。
「どうしよう⋯⋯兄さん怒っているかな」
ユズの不安そうな声が聞こえ、言い過ぎたと後悔している様子が壁越しでも伝わってくる。
「よし」
俺は自室で制服を脱いで一階へと降りる。そしてキッチンにある冷蔵庫を開けると⋯⋯。
「卵、牛乳、市販のバニラアイス⋯⋯これならできるな」
ボウルに卵黄、サラダ油、牛乳を入れ泡立て器で混ぜて薄力粉、ベーキングパウダーを投入し、再度混ぜる。
別のボウルに卵白を入れてハンドミキサーで混ぜ、グラニュー糖を入れツノができるまで泡立たせ、2つのボウルの中身を少しずつ混ぜる。混ぜた物をバターを溶かしたフライパンに入れ焼き色がついたら裏返し三分程蒸す。そして出来上がった物の上に市販のバニラアイスを乗せればパンケーキが完成する。
俺は出来上がったパンケーキを持ち、二階のユズの部屋の前へと向かう。
そしてドアをノックすると、不機嫌そうな表情をしたユズがドアの隙間から顔を出す。
「なんのようですか?」
「いや⋯⋯小腹が空いたからパンケーキを作ったんだがユズも食べないか?」
「本当! け、けどいらないです」
ユズは一瞬喜んだ表情を見せたが、今俺に対して怒っていることを思い出したのか、すぐにまた不機嫌そうな顔をしてドアを閉める。
ダメだったか。ユズはパンケーキが好きだからいけると思ったんだが。だがまだ諦めるのは早い。それならこのパンケーキの良さを部屋の外から語るとしようか。
「そうか⋯⋯このふんわりととろける口当たり。程よい甘さが舌の上に広がると至福の幸せが身体中に膨らんで、そしてこのバニラアイスを加えると味変して更に新しい新境地を開拓するが⋯⋯」
ここで敢えて言葉を切る。
一度はパンケーキをいらないと言ったユズだが俺の予想ではドアに耳を当ててこちらの様子を窺っているはずだ。
伊達に15年も兄妹はしていない。
「この究極の味は時間が経つに連れて熱と美味を失っていく。仕方ない⋯⋯これは俺が食べるしかないな」
俺は階段を降りたように見せかけるため、その場で足音を響かせる。
「待って!」
するとユズは勢いよくドアを開けるが、すぐ側に俺がいたので驚いた表情を浮かべている。
「兄さん、嵌めましたね」
「人聞きの悪い。誰も一階に降りるなんて言ってないだろ」
「うぅ」
何やらユズが唸っているようだが俺は無視して部屋に入るのだった。
俺はユズに見捨てられ1人で自宅へと戻ったが、家の中から返事が返ってこない。この時間は父さんと母さんは仕事、姉さんは生徒会、ユズは玄関に靴があるから帰っていると思うが、先程の件で俺と話したくないといった所か。
とりあえず俺は八百屋で買ってきた食材を冷蔵庫にしまい、そして部屋に通学用のカバンを置くと、何や隣の部屋から声が聞こえてきた。
「ああ! 私は兄さんになんてことを言ってしまったの!」
どうやらいつものようにユズの懺悔タイムが始まったらしい。
「本当は兄さんが私以外の下着を見て嫉妬しただけなのに」
嫉妬って⋯⋯ユズのブラコンは大概だな。
「でも私は悪くない。兄さんが悪いよね。鼻の下をデレデレと伸ばして」
マジか! でも仕方ないよな。偶然とはいえ羽ヶ鷺のヒロインの秘密が目の前に広がっていたら、誰もが視線向け、至福な表情をするだろう。
「兄さんは⋯⋯誰でも興奮するのかな⋯⋯例えば私でも⋯⋯」
ユズが1人で話を変な方向に持っていこうとしている。さすがの俺でも実の妹の下着で興奮する変態ではない。確かにユズは世間一般で見てもかなり可愛いとは思う。それに同じ家で暮らしているとユズもコト姉も油断しているのか、たまに下着があらわになっている時があり見慣れているしな。
「どうしよう⋯⋯兄さん怒っているかな」
ユズの不安そうな声が聞こえ、言い過ぎたと後悔している様子が壁越しでも伝わってくる。
「よし」
俺は自室で制服を脱いで一階へと降りる。そしてキッチンにある冷蔵庫を開けると⋯⋯。
「卵、牛乳、市販のバニラアイス⋯⋯これならできるな」
ボウルに卵黄、サラダ油、牛乳を入れ泡立て器で混ぜて薄力粉、ベーキングパウダーを投入し、再度混ぜる。
別のボウルに卵白を入れてハンドミキサーで混ぜ、グラニュー糖を入れツノができるまで泡立たせ、2つのボウルの中身を少しずつ混ぜる。混ぜた物をバターを溶かしたフライパンに入れ焼き色がついたら裏返し三分程蒸す。そして出来上がった物の上に市販のバニラアイスを乗せればパンケーキが完成する。
俺は出来上がったパンケーキを持ち、二階のユズの部屋の前へと向かう。
そしてドアをノックすると、不機嫌そうな表情をしたユズがドアの隙間から顔を出す。
「なんのようですか?」
「いや⋯⋯小腹が空いたからパンケーキを作ったんだがユズも食べないか?」
「本当! け、けどいらないです」
ユズは一瞬喜んだ表情を見せたが、今俺に対して怒っていることを思い出したのか、すぐにまた不機嫌そうな顔をしてドアを閉める。
ダメだったか。ユズはパンケーキが好きだからいけると思ったんだが。だがまだ諦めるのは早い。それならこのパンケーキの良さを部屋の外から語るとしようか。
「そうか⋯⋯このふんわりととろける口当たり。程よい甘さが舌の上に広がると至福の幸せが身体中に膨らんで、そしてこのバニラアイスを加えると味変して更に新しい新境地を開拓するが⋯⋯」
ここで敢えて言葉を切る。
一度はパンケーキをいらないと言ったユズだが俺の予想ではドアに耳を当ててこちらの様子を窺っているはずだ。
伊達に15年も兄妹はしていない。
「この究極の味は時間が経つに連れて熱と美味を失っていく。仕方ない⋯⋯これは俺が食べるしかないな」
俺は階段を降りたように見せかけるため、その場で足音を響かせる。
「待って!」
するとユズは勢いよくドアを開けるが、すぐ側に俺がいたので驚いた表情を浮かべている。
「兄さん、嵌めましたね」
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「うぅ」
何やらユズが唸っているようだが俺は無視して部屋に入るのだった。
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