姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ

文字の大きさ
14 / 146

俺は都合のいい存在だった

しおりを挟む
翌日

 俺はバレンタインのチョコの件を誤魔化しつつ、コト姉とユズと羽ヶ鷺学園へと向かっていた。

 今日クラスへ行くと嫉妬にかられた男達に囲まれると思うと頭が痛くなるが、しかし俺には策がある。少し恥ずかしい方法だが一年間男達に嫌がらせをされるよりはましだ。
 後はコト姉がその話題を振ってくれるのを待つだけ⋯⋯たぶん俺の予想だと絶対にそのことを聞いてくるはずだ。

「リウトちゃんとユズちゃんは学校はどう?」

 きた! 俺は自分の予想が当たっていたことに歓喜するが、平静を装ってコト姉の問いに答える。

「新しいクラスで友達ができるか少し不安かな。でもクヨクヨしてもしょうがないからがんばるよ」
「えっ? 兄さん何を言ってるんですか? 気持ち悪いです」

 ユズが俺の答えに対して、訝しげに目を細め視線を送ってくる。
 気持ち悪いってひどくね? まあ確かに自分でも柄じゃないことを言ったとは思うけどこの妹は⋯⋯いつかお仕置きが必要だな。

「ひどいなあ。俺だって不安になることくらいあるさ」
「そんなことないですよね? 兄さんは情報を元にコミュニケーションとるの得意じゃないですか。どうせ昨日あったクラスメートの自己紹介の内容も頭に入れていますよね?」

 さすがはユズ。俺のことがよくわかっている。昨日の自己紹介の情報は全てタブレットに入力済みだ。
 この世界は情報があれば大抵のことは上手くやれる。相手の好きなもの、嫌いなもの、性格、趣味を自分の中にあるデータを照らし合わせて会話すれば、余程のことがない限りそれなりに付き合っていけると思う。
 いつかは某テニス漫画のメガネの人のように、情報から相手の言葉を先読みしたいものだ。

「だがそれだけで上手く人間関係が作れるとは限らないぞ」

 現に昨日クラスの男子から追いかけられたしな。

「それならお姉ちゃんがリウトちゃんのクラスの子達に、リウトちゃんをよろしくお願いしますって言ってあげるね」

 きた! コト姉ならクラスのことを不安げに話せば、必ずそう言うと思っていたよ。

「本当? コト姉が来てくれるならなら心強いよ」
「えっ? 兄さんそんなことを言うなんて⋯⋯いつもなら姉さん恥ずかしいから来なくていいよって言うのに⋯⋯はっ! まさかここにいるのは変化の魔法で兄さんに化けた偽物? 本当の兄さんはエッチで卑怯で妹大好きの変態ですから」

 変化の魔法って⋯⋯この妹は何を言ってるんだ。昨日も思ったが瑠璃の影響を少し受けすぎてないか? それに妹大好きの変態って⋯⋯然り気無くシスコンにしないでほしい。

「ユズちゃん何を言っているの? リウトちゃんは妹大好きの変態じゃないからね」
「コト姉⋯⋯さすがコト姉は俺のことをわかってる」

 そうだ、俺は至ってノーマルな普通の男子高校生だ。断じてシスコンではない。
 しかしこの後俺の期待はすぐに裏切られることになる。

「リウトちゃんは妹大好きじゃなくてお姉ちゃん大好きな変態なんだから!」
「おい」

 前言撤回。どうやら姉も俺のことを理解していなかったようだ。しかも2人とも俺が変態だという意見は変わらない。
 往来でディスってくるなんて本当にひどい姉妹だな。

「先輩方、ユズちゃんおはようございま~す」

 そんな姉妹の言い争い? の中、ノーテンキな声を上げて瑠璃が現れる。

「おお、瑠璃おはよう」

 しかし瑠璃は俺より姉妹達の方が気になるのか、そちらの方に目を向けている。

「どうしたんですか? 2人が口論? しているなんて珍しいですね」
「恥ずかしい話だが実は――」

 俺はことの顛末を瑠璃に伝えた。

「えっ? 先輩が偽物!」

 瑠璃は驚いた表情で俺の言葉を聞いている。瑠璃はこういう異世界ありがちな話が好きだからな。

「そんな! 先輩が偽物なんて困ります。だって私、先輩がいなかったらどうすれば⋯⋯」
「瑠璃⋯⋯まさかお前俺のことを⋯⋯」

 瑠璃は俺の方を寂しげに上目遣いで覗いてくる。
 中身はあれだが美少女にこんな目をされたら、大抵の奴は落ちるだろう。
 その瑠璃の姿に言い争いをしていた2人の動きが止まり、こちらを注視していた。
 それにしても瑠璃が俺に惚れていたなんて⋯⋯確かに昔引きこもっていた瑠璃を外の世界に連れ出し、の関係だがそれ以上の感情を持っていたとは。
 だが瑠璃は俺の想像とは違うことを言い放ってきた。

「24時間オンラインゲームで何時でも呼び出せる、私の都合の良い盾がいなくなっちゃうじゃないですか!」
「おい、仮にも先輩にその扱いはひどくね?」
「冗談ですよ。先輩は竜のクエストⅢの商人くらい大切に思っています」

 それって途中で主人公のパーティーを離れて未開の街に残り⋯⋯。

「最後は牢屋に入れられる奴だろ!」
「あれ? そうでしたっけ」
「お前が俺のことをどう思っているかわかったよ」
「嘘です嘘です。私先輩のこと大好きですから」

 瑠璃は俺の左腕に抱きつき、好意を振り撒いてくる。すると柔らかい感触がわかり、俺の神経が全て左腕に集中される。

 むっ! 柔らかい⋯⋯だがこの程度の色仕掛けで騙されるものか。そんな安い男だと思うなよ。

「仕方ないな。今回は許してやるか」
「さっすが先輩! ぶれぶれの優柔不断系童貞主人公ですね」

 何かバカにされているような感じがするが、今日は左腕の感触に免じて許してやるか。

「リウトちゃん私も腕を組むぅ」
「瑠璃さん離れて下さい! 兄さんと腕を組むと妊娠してしまいますよ」

 俺は性の権化か!

 こうして羽ヶ鷺学園2日目の登校も賑やかになり、退屈な日々とは無縁な学園生活を予感させるのに十分な日常を感じるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の加瀬桔梗のクラスには、宝来向日葵という女子生徒がいる。向日葵は男子生徒中心に人気が高く、学校一の美少女と言われることも。  しかし、桔梗はなぜか向日葵に1年生の秋頃から何度も舌打ちされたり、睨まれたりしていた。それでも、桔梗は自分のように花の名前である向日葵にちょっと興味を抱いていた。  ゴールデンウィーク目前のある日。桔梗はバイト中に男達にしつこく絡まれている向日葵を助ける。このことをきっかけに、桔梗は向日葵との関わりが増え、彼女との距離が少しずつ縮まっていく。そんな中で、向日葵は桔梗に可愛らしい笑顔を段々と見せていくように。  桔梗と向日葵。花の名を持つ男女2人が織りなす、温もりと甘味が少しずつ増してゆく学園ラブコメディ!  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしています。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

学校で成績優秀生の完璧超人の義妹が俺に隠れて、VTuberとしてネトゲ配信してたんだが

沢田美
恋愛
京極涼香。俺の義妹であり、あらゆる物事をそつなく完璧にこなす、スポーツ万能・成績優秀、全てが完璧な美少女。 一方の俺は普通の成績と並以下の才能しか持っておらず、なぜか妹に嫌悪されている男だ。 しかし、そんな俺にも一つだけ特筆して好きなものがある――それは、とあるVTuberを推しているということだ。 配信者界隈に新星の如く現れた『さすまた』というVTuberは、圧倒的なカリスマで、俺を含めたネット民を熱狂させていた。 しかし、そんな『さすまた』の正体が義妹である京極涼香だということを、俺は知ることになる。 ……そう、これは俺と兄嫌いの義妹による、破滅の物語――という名のラブコメである。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

不器用な姉弟は傷を舐め合う、舐め合う舌はちょっとざらつく

桜乃マヒロ
恋愛
 姉の柊和(ひより)は美人で聡明な完璧万能超人、弟の護(まもる)は優しく献身的な天然男子。高校生ながら二人暮らしの柊和と護は、お互いを支え合って日々を生きてきた。  ある日、友人である生徒会長から呼び出された柊和は、自分を次の生徒会の会長に推薦したいと打診を受ける。 「私はただ、私の後なら柊和ちゃんがいいなって、そんな風に思っただけだからね」  二人だけの閉鎖的だった日常は、生徒会をきっかけに急激な変化を迎える。新しい出会いと日常の中で、今まで眠っていた二人の過去と、片や必死に封じ込み、片や無自覚だった特別な想いに、光が射し込むことになり──? 「あくっ……護には負けない!」 「なんの話か知らないけど、宣言されたら負かせたくなるね?」  顔と心に傷として刻まれた過去に囚われ、自分よりお互いを大切にしすぎてすれ違い続ける不器用な姉弟。そんな二人の両片思いのお話。 —————————————————————————————————  面白いと思っていただけた時は、お気に入りにしていただけると、凄く励みになります!  一日一話を目標に更新中!(現在火曜・木曜・土曜お休み中) 「小説家になろう」 「カクヨム」様でも同時に投稿しています。

処理中です...