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憔悴しているヒロイン
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朝のホームルームが始まる前の時間。
俺は平和に自分の席に座っていた。
「おはよ~」
「おはよう」
そんな中、ちひろがホームルーム5分前に登校してきたので、俺は優雅に挨拶を返す。
「あれ? てっきりクラスの男子にボコボコにされていると思ったのに」
「何を言ってるんだ。新クラス早々ケンカ何かするかよ」
「だって昨日、リウトが可愛い姉妹を持っていることがバレて追いかけられていたよね」
「その件はもう和解したんだ。そうだよな悟」
「そう。俺達は親友だから⋯⋯でへへ、琴音さん⋯⋯」
俺は斜め後ろの席で、上の空で夢見心地な表情をしている悟に問いかける。
「木田くんの様子おかしくない?」
「いや、いつもどうりだろ」
ちひろは何か変だと感じたのかジーっと悟と俺を交互に見てくる。
しかし悟はそんなちひろのことを気にもせず、変わらぬ顔でにやけていた。
「わかった! 琴音さんが皆を魅了していったんでしょ」
「魅了って⋯⋯」
どこかの悪魔であるサキュバスみたいだな。もしコト姉がサキュバスのコスプレでもしたら、男子のみならず、女子も魅了され学園が機能不全になることは間違いないだろう。
「コト姉が俺と仲良くして上げてねって言っただけだぞ」
「やっぱりね。本当琴音さんはリウトに甘いよ」
そんなことはないと否定したい所だが、それは紛れもない事実だから否定はできない。
「いつかリウトは琴音さんのファンに刺されるんじゃない?」
「怖いことを言うんじゃない」
「もしくはリウトが彼女を作ったら、琴音さんにリウトが刺されたりして」
ちひろは笑顔で恐ろしいことを言ってくる。
もし本当に俺に彼女が出来たら⋯⋯「リウトちゃんに彼女? リウトちゃんは私のものだよね? もし他の人に取られるならいっそのこと⋯⋯」想像してみたがあり得そうで怖い。
「いくらコト姉がブラコンでもそんなことをしないだろ⋯⋯ははは」
「それもそうだよね」
この時俺は、コト姉への恐怖から乾いた笑いを浮かべることしか出来なかった。
「静かにしろ」
朝のホームルームの時間になり氷室先生が教室に入ってきたので、皆自分の席に戻る。
時間は間もなく8時半。ん? まだ来てないクラスメートがいるぞ。
それは俺のことを嫌っている神奈さん。
品行方正で通っている彼女が遅刻? 珍しいな。それとも体調を崩してしまったのだろうか。
クラスメート達も神奈さんがいないことにざわつき始めている。
「すみません! 遅れて申し訳ありません!」
突然教室の後ろのドアが開き、神奈さんが頭を下げながら自分の席へと向かう。
あれ? 俺はその時神奈さんの姿に⋯⋯いや手に違和感を感じた。
「絆創膏?」
俺の後ろの席にいるちひろも変だと思ったのか、神奈さんを見て思わず口に出していた。
「ケガか? だが一日であれだけの傷を負う理由はなんだ⋯⋯」
両指十本のうち六本に絆創膏が張ってあるなんて、ベタだがバレーボールでも始めたのか? だが彼女は帰宅部だったはずだ。それ以外だと料理が下手で包丁で指を切ってしまった? いやあの完璧超人の神奈さんが料理が出来ないなんてあるか? だが今まで神奈さんの料理が上手いという話は聞いたことがない。
いや、まさかな⋯⋯。
「静かにしろ! 神奈、今日はまだ予鈴のチャイムが鳴っていないから見逃すが、早めの行動を心がけろ」
「はい、すみませんでした」
そして氷室先生の一喝があり、教室は静寂を取り戻すが、休み時間になると大勢のクラスメートが神奈さんの席に殺到する。
「神奈さんが遅れるなんて珍しいね」
「通学途中で何かあったの?」
「その指はケガをしたのかな?」
さすがは羽ヶ鷺のヒロイン。人気が半端ないな。クラスメートの1/3は集まっているんじゃないか。
俺も遅刻しかけた理由が気になるが、もしあの輪の中に入れば、神奈さんから冷たい視線をもらうことは間違いないので、聞き耳を立てるだけにしておく。
「う~ん⋯⋯皆神奈さんのことが気になっているみたいだけど今はやめておいた方がいいんじゃないかな」
「どうしてだ?」
ちひろが神奈さんの方に視線を向けて眉間にシワを寄せていた。
「たぶん神奈さん疲れているんじゃないかな? 普段は元が凄く良いから化粧なんかしてないけど、目の下のクマを隠すためにコンシーラーを使っているから」
確かにちひろの言うとおり、神奈さんは目元に化粧しているようだった。
こいつ⋯⋯良く見ているな。俺が男だということもあるかもしれないけど全然気づかなかった。
「さすがちひろ、よく気づいたな。まるで女子高生みたいだ」
「私は花の女子高生だから! そんなだからリウトはモテないのよ」
「ぐっ!」
昨日自分がモテないことを再確認したから、今のちひろの言葉は心にグサッと刺さる。
「男女で付き合うことが青春の全てではない。べ、別に女の子にモテなくてもいいさ⋯⋯⋯⋯⋯⋯嘘ですごめんなさい」
「よろしい。そんなことより神奈さん迷惑そうだよ? リウトなんとかしてあげなさい」
そんなこと⋯⋯だと⋯⋯。
俺は女の子にモテることをそんなこと扱いしたちひろに怒りが込み上げてきた。だが確かに今は、クラスメート達の質問に対して苦笑いを浮かべている神奈さんを何とかした方が良さそうなため、溜飲を下げることにした。
俺は平和に自分の席に座っていた。
「おはよ~」
「おはよう」
そんな中、ちひろがホームルーム5分前に登校してきたので、俺は優雅に挨拶を返す。
「あれ? てっきりクラスの男子にボコボコにされていると思ったのに」
「何を言ってるんだ。新クラス早々ケンカ何かするかよ」
「だって昨日、リウトが可愛い姉妹を持っていることがバレて追いかけられていたよね」
「その件はもう和解したんだ。そうだよな悟」
「そう。俺達は親友だから⋯⋯でへへ、琴音さん⋯⋯」
俺は斜め後ろの席で、上の空で夢見心地な表情をしている悟に問いかける。
「木田くんの様子おかしくない?」
「いや、いつもどうりだろ」
ちひろは何か変だと感じたのかジーっと悟と俺を交互に見てくる。
しかし悟はそんなちひろのことを気にもせず、変わらぬ顔でにやけていた。
「わかった! 琴音さんが皆を魅了していったんでしょ」
「魅了って⋯⋯」
どこかの悪魔であるサキュバスみたいだな。もしコト姉がサキュバスのコスプレでもしたら、男子のみならず、女子も魅了され学園が機能不全になることは間違いないだろう。
「コト姉が俺と仲良くして上げてねって言っただけだぞ」
「やっぱりね。本当琴音さんはリウトに甘いよ」
そんなことはないと否定したい所だが、それは紛れもない事実だから否定はできない。
「いつかリウトは琴音さんのファンに刺されるんじゃない?」
「怖いことを言うんじゃない」
「もしくはリウトが彼女を作ったら、琴音さんにリウトが刺されたりして」
ちひろは笑顔で恐ろしいことを言ってくる。
もし本当に俺に彼女が出来たら⋯⋯「リウトちゃんに彼女? リウトちゃんは私のものだよね? もし他の人に取られるならいっそのこと⋯⋯」想像してみたがあり得そうで怖い。
「いくらコト姉がブラコンでもそんなことをしないだろ⋯⋯ははは」
「それもそうだよね」
この時俺は、コト姉への恐怖から乾いた笑いを浮かべることしか出来なかった。
「静かにしろ」
朝のホームルームの時間になり氷室先生が教室に入ってきたので、皆自分の席に戻る。
時間は間もなく8時半。ん? まだ来てないクラスメートがいるぞ。
それは俺のことを嫌っている神奈さん。
品行方正で通っている彼女が遅刻? 珍しいな。それとも体調を崩してしまったのだろうか。
クラスメート達も神奈さんがいないことにざわつき始めている。
「すみません! 遅れて申し訳ありません!」
突然教室の後ろのドアが開き、神奈さんが頭を下げながら自分の席へと向かう。
あれ? 俺はその時神奈さんの姿に⋯⋯いや手に違和感を感じた。
「絆創膏?」
俺の後ろの席にいるちひろも変だと思ったのか、神奈さんを見て思わず口に出していた。
「ケガか? だが一日であれだけの傷を負う理由はなんだ⋯⋯」
両指十本のうち六本に絆創膏が張ってあるなんて、ベタだがバレーボールでも始めたのか? だが彼女は帰宅部だったはずだ。それ以外だと料理が下手で包丁で指を切ってしまった? いやあの完璧超人の神奈さんが料理が出来ないなんてあるか? だが今まで神奈さんの料理が上手いという話は聞いたことがない。
いや、まさかな⋯⋯。
「静かにしろ! 神奈、今日はまだ予鈴のチャイムが鳴っていないから見逃すが、早めの行動を心がけろ」
「はい、すみませんでした」
そして氷室先生の一喝があり、教室は静寂を取り戻すが、休み時間になると大勢のクラスメートが神奈さんの席に殺到する。
「神奈さんが遅れるなんて珍しいね」
「通学途中で何かあったの?」
「その指はケガをしたのかな?」
さすがは羽ヶ鷺のヒロイン。人気が半端ないな。クラスメートの1/3は集まっているんじゃないか。
俺も遅刻しかけた理由が気になるが、もしあの輪の中に入れば、神奈さんから冷たい視線をもらうことは間違いないので、聞き耳を立てるだけにしておく。
「う~ん⋯⋯皆神奈さんのことが気になっているみたいだけど今はやめておいた方がいいんじゃないかな」
「どうしてだ?」
ちひろが神奈さんの方に視線を向けて眉間にシワを寄せていた。
「たぶん神奈さん疲れているんじゃないかな? 普段は元が凄く良いから化粧なんかしてないけど、目の下のクマを隠すためにコンシーラーを使っているから」
確かにちひろの言うとおり、神奈さんは目元に化粧しているようだった。
こいつ⋯⋯良く見ているな。俺が男だということもあるかもしれないけど全然気づかなかった。
「さすがちひろ、よく気づいたな。まるで女子高生みたいだ」
「私は花の女子高生だから! そんなだからリウトはモテないのよ」
「ぐっ!」
昨日自分がモテないことを再確認したから、今のちひろの言葉は心にグサッと刺さる。
「男女で付き合うことが青春の全てではない。べ、別に女の子にモテなくてもいいさ⋯⋯⋯⋯⋯⋯嘘ですごめんなさい」
「よろしい。そんなことより神奈さん迷惑そうだよ? リウトなんとかしてあげなさい」
そんなこと⋯⋯だと⋯⋯。
俺は女の子にモテることをそんなこと扱いしたちひろに怒りが込み上げてきた。だが確かに今は、クラスメート達の質問に対して苦笑いを浮かべている神奈さんを何とかした方が良さそうなため、溜飲を下げることにした。
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