姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ

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また通報される所だった

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「天城くんが何で私の家に⋯⋯」
「お兄さんはコンビニまで1人で出掛けた私を家まで送ってくれたんだよ」

 紬ちゃんは俺がここにいる理由を話してくれるが、神奈さんは信じられないと言った表情でこちらを見ている。
 俺の方が信じられないよ。まさかよりによって紬ちゃんのお姉さんが神奈さんだったなんて。
 まるでソシャゲのほしいSSRが出る確率1.5%のガチャで、200連しても出なかったくらいの引きの悪さだな。

「あなた⋯⋯ここで⋯⋯」

 神奈さんはまるで変質者を見るような蔑んだ目で、俺に視線を突き刺してきた。

「妹と2人? 何言ってるんだ? ここには⋯⋯」

 ちひろもいると言葉を続けようとしたが、隣を見るとそこには誰もいなかった。

「ここに何? 天城くんしかいないけど」

 ちひろの奴どこかに隠れやがったな! おかげで神奈さんの身体から殺気が漏れ始めているぞ!

「お姉ちゃん怒らないで! リウトお兄さんは私に手取り足取り教えてくれただけだよ」
「な、なんですって!」

 紬ちゃん! 主語! 主語が、肝心な言葉が抜けてる! その言い方じゃ俺が紬ちゃんにイタズラしているように思われるよ! 

「いや、手取り足取り教えたのは料理であって、俺は紬ちゃんに変なことをしたわけじゃないぞ」
「紬の身体をデザートとして味わったというわけね! この鬼畜!」

 この娘、日頃真面目ぶっているけど想像力がエロいほうに豊だな。

「パパとの想い出を壊しただけじゃ飽きたらず、紬まで毒牙にかけるなんて⋯⋯もう絶対に許さない!」

 パパとの想い出? まさかそれって俺が壊してしまった⋯⋯。
 美術コンクールで大賞を取ったガラスの⋯⋯。
 しかし今は過去の件を気にするよりこの状況を何とかしないと。
 神奈さんは激昂して今にも俺に掴みかかってきそうだ。

「神奈っち待って! 私達、本当に料理をしていただけだから!」

 どこから現れたのか、ちひろが突然ドアを開け居間へと突入してくる。

「えっ? ちひろさんもいたんですか」

 ちひろの登場によって神奈さんの殺意が薄れていく。とりあえず救いの神⋯⋯いや救いの悪魔が現れたことによって俺の命は助かりそうだ。

「ふう⋯⋯危なかったわね。私に感謝しなさいよ」
「いや、そもそもちひろのせいでピンチに陥ったんだけど」

 こいつは隠れて俺が窮地に立たされる所を楽しんでいたに違いない。

「いやねえ、ちょっとトイレを借りてただけよ」
「あれ? さっきちひろお姉ちゃんトイレに行かなかったっけ?」

 純粋無垢な紬ちゃんが、ちひろの悪事を白日のもとに曝してくれる。

「え~と⋯⋯実は今日は少しお腹が痛くて⋯⋯」
「お前はお腹が痛いのに五郎のラーメンを食べようとしていたのか」

 腹が痛いのに油ギッシュで味が濃いラーメンを食べる奴はいないだろう。

「そ、そんなことより神奈っちが本当に紬ちゃんのお姉さんなの?」
「そうですが⋯⋯」
「話を誤魔化そうとするんじゃない」
「いやだって⋯⋯紬ちゃんが言っていたお姉さんだよ? 料理が壊滅的な」

 そういえば紬ちゃんはお姉さんは料理ができないと言っていたな。まさか完璧超人だと思われていた神奈さんにそんな弱点があるとは。

「料理が壊滅的! 紬はそんなことを言っていたの!」
「だ、だって本当のことだもん」
「オムライスを食べたらジャリジャリしてて味が独特だったって言ってたな」

 俺が紬ちゃんから聞いていたことを指摘すると、神奈さんは真っ赤になった顔を両手で隠す。

 くっ! 仕草が可愛いな。さすがは羽ヶ鷺のヒロイン。

「紬、あなた⋯⋯」

 今度は先程と同じように神奈さんの顔は真っ赤だが、少し怒っている表情をしていた。

「お、お姉ちゃん。それよりリウトお兄さんがせっかくオムライスを作ってくれたんだよ。温かい内に食べない?」

 紬ちゃんは神奈さんの怒りを逃れるためオムライスの話題を出す。すると神奈さんの視線が俺の作ったオムライスへと注がれていた。
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