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美味しい物を食べると誰もが笑顔になる
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「私に⋯⋯天城くんが作ったこのハートの絵が書かれたオムライスを食べろと?」
紬ちゃんにリクエストされたとはいえ、何だか無性に恥ずかしくなってきたぞ。
「お姉ちゃん食べないの? 材料が無駄になっちゃうよ? いつもご飯は残さないようにって言ってるよね」
「うっ! 確かにそうね。このオムライスには罪はないわ」
その言い方だとまるで俺に罪があるような⋯⋯。
「天城くんいただきます」
神奈さんは俺のことが嫌いだけど、しっかりと頭を下げる所が彼女の性格の良さを表している。
「私もいただきます」
そして神奈姉妹がスプーンでオムライスをすくい口の中へと入れる。
「「お、美味しい!」」
オムライスを食べると、神奈さんの少し不機嫌だった顔が至福の表情へと変わっていく。
「何ですかこれは! 卵がとろとろで⋯⋯まるでお店の味です」
「お姉ちゃんが作ってくれたオムライスと同じ料理とは思えないよ!」
「くっ! 確かにその通りですから否定はできないわ」
良かった。どうやら2人とも俺の作ったオムライスを気に入ってくれたようだ。
「いいなあ、私も食べたいなあ」
神奈姉妹がオムライスを美味しそうに食べている姿を見て、どうやらちひろの空腹感を刺激してしまったみたいだ。
「ちひろお姉さんには私のを上げるよ。あ~ん」
紬ちゃんはオムライスをスプーンですくって、ちひろの口元へと持っていく。
「あ~ん⋯⋯う~ん本当に美味しい。これはお金が取れるレベルだわ」
ちひろは俺のオムライスに最大の賛辞をくれる。女の子にご飯を美味しいって言ってもらえるなんて、料理を作れて本当に良かったと思う瞬間だ。
それにしても美味しそうだな。そういえば俺達はラーメン屋に行こうとしていたんだっけ。
そう考えると俺も急速に腹が減ってきた。そしてそれはぐ~っと音を出して周りにも主張し始めた。
「お兄さんもお腹が減っているの? それならお姉ちゃんの分をお兄さんにあげて」
「わ、私があげるの?」
「そうだよ。だってこのオムライスはお兄さんが作ったんだから」
「た、確かにそうね」
どうやら神奈さんはオムライスを俺にくれるようだ。
俺はこの時、新しいスプーンをもらって自分ですくって食べるものだと思っていた。だが神奈さんは、先程の紬ちゃんとちひろのように、自分が使っていたスプーンでオムライスをすくい、照れながら俺の前に持ってきた。
「あ、あ~ん」
しかも男なら一度は彼女にやってほしいランキングベスト10に入る「あ~ん」までつけて。
えっ? これは食べていいの? しかもこれは⋯⋯。
「間接キスじゃ⋯⋯」
俺はボソッと思っていることを口に出してしまった。
すると神奈さんの顔が一瞬で真っ赤になり、勢いよくオムライスを食べ始めた。
「えっ? ちょっと」
しかし俺の声は届かず、神奈さんはこちらを無視するかのように、一心不乱にオムライスを口の中に入れていく。そしてオムライスはあっという間に神奈さんの胃の中に消えてしまうのだった。
「ご、こちそうさま。残念ですがオムライスはもうないので天城くんにあげることはできませんね」
まさか神奈さんは俺と間接キスをするのが嫌で、オムライスを急いで食べたのか。
くそう! 何で俺は余計な一言を言ってしまったんだ! せっかく神奈さんにあ~んをしてもらえるチャンスだったのに。
もし俺がモテ男だったら間接キスを気にすることなく、今頃ドキドキをプラスしたオムライスを食べることができたと思うと、悔しくてしょうがない。
「お姉ちゃん食べるのはや~い。リウトお兄さんが作ったオムライスがよっぽと美味しかったんだね」
紬ちゃんが感心しながら検討違いの言葉を口にしている。
「本当にそうかな~、別に理由があったりして」
ちひろは、何故神奈さんが急いでオムライスを食べたのかわかっているようで、ニヤニヤしていた。何だか俺の気持ちも見透かされているようで少し恥ずかしいぞ。
こうして俺は作ったオムライスを神奈姉妹に喜んでもらえたが、余計な一言を言ってしまったせいで神奈さんとの間接キスの機会を逃してしまうのであった。
―――――――――――――――
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紬ちゃんにリクエストされたとはいえ、何だか無性に恥ずかしくなってきたぞ。
「お姉ちゃん食べないの? 材料が無駄になっちゃうよ? いつもご飯は残さないようにって言ってるよね」
「うっ! 確かにそうね。このオムライスには罪はないわ」
その言い方だとまるで俺に罪があるような⋯⋯。
「天城くんいただきます」
神奈さんは俺のことが嫌いだけど、しっかりと頭を下げる所が彼女の性格の良さを表している。
「私もいただきます」
そして神奈姉妹がスプーンでオムライスをすくい口の中へと入れる。
「「お、美味しい!」」
オムライスを食べると、神奈さんの少し不機嫌だった顔が至福の表情へと変わっていく。
「何ですかこれは! 卵がとろとろで⋯⋯まるでお店の味です」
「お姉ちゃんが作ってくれたオムライスと同じ料理とは思えないよ!」
「くっ! 確かにその通りですから否定はできないわ」
良かった。どうやら2人とも俺の作ったオムライスを気に入ってくれたようだ。
「いいなあ、私も食べたいなあ」
神奈姉妹がオムライスを美味しそうに食べている姿を見て、どうやらちひろの空腹感を刺激してしまったみたいだ。
「ちひろお姉さんには私のを上げるよ。あ~ん」
紬ちゃんはオムライスをスプーンですくって、ちひろの口元へと持っていく。
「あ~ん⋯⋯う~ん本当に美味しい。これはお金が取れるレベルだわ」
ちひろは俺のオムライスに最大の賛辞をくれる。女の子にご飯を美味しいって言ってもらえるなんて、料理を作れて本当に良かったと思う瞬間だ。
それにしても美味しそうだな。そういえば俺達はラーメン屋に行こうとしていたんだっけ。
そう考えると俺も急速に腹が減ってきた。そしてそれはぐ~っと音を出して周りにも主張し始めた。
「お兄さんもお腹が減っているの? それならお姉ちゃんの分をお兄さんにあげて」
「わ、私があげるの?」
「そうだよ。だってこのオムライスはお兄さんが作ったんだから」
「た、確かにそうね」
どうやら神奈さんはオムライスを俺にくれるようだ。
俺はこの時、新しいスプーンをもらって自分ですくって食べるものだと思っていた。だが神奈さんは、先程の紬ちゃんとちひろのように、自分が使っていたスプーンでオムライスをすくい、照れながら俺の前に持ってきた。
「あ、あ~ん」
しかも男なら一度は彼女にやってほしいランキングベスト10に入る「あ~ん」までつけて。
えっ? これは食べていいの? しかもこれは⋯⋯。
「間接キスじゃ⋯⋯」
俺はボソッと思っていることを口に出してしまった。
すると神奈さんの顔が一瞬で真っ赤になり、勢いよくオムライスを食べ始めた。
「えっ? ちょっと」
しかし俺の声は届かず、神奈さんはこちらを無視するかのように、一心不乱にオムライスを口の中に入れていく。そしてオムライスはあっという間に神奈さんの胃の中に消えてしまうのだった。
「ご、こちそうさま。残念ですがオムライスはもうないので天城くんにあげることはできませんね」
まさか神奈さんは俺と間接キスをするのが嫌で、オムライスを急いで食べたのか。
くそう! 何で俺は余計な一言を言ってしまったんだ! せっかく神奈さんにあ~んをしてもらえるチャンスだったのに。
もし俺がモテ男だったら間接キスを気にすることなく、今頃ドキドキをプラスしたオムライスを食べることができたと思うと、悔しくてしょうがない。
「お姉ちゃん食べるのはや~い。リウトお兄さんが作ったオムライスがよっぽと美味しかったんだね」
紬ちゃんが感心しながら検討違いの言葉を口にしている。
「本当にそうかな~、別に理由があったりして」
ちひろは、何故神奈さんが急いでオムライスを食べたのかわかっているようで、ニヤニヤしていた。何だか俺の気持ちも見透かされているようで少し恥ずかしいぞ。
こうして俺は作ったオムライスを神奈姉妹に喜んでもらえたが、余計な一言を言ってしまったせいで神奈さんとの間接キスの機会を逃してしまうのであった。
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