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運が良い者悪い者前編
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昨日は鬼の形相をした神奈さんから何とか逃れることができた。
神奈さんは俺が紬ちゃんに大人のイタズラをすると思い、完全に犯罪者を見る目をしていたからな。
学園で神奈さんに会うのは憂鬱だが、幸いなことに席は離れているため教室では安全に過ごすことが出来るだろう。
だがこの後、俺の目論見は見事崩されることになる。
「席替えをするぞ! 出欠を取りやすくするため、あいうえお順に移動しろ」
朝のホームルームの時間、担任の氷室先生がいきなりそんなことを言い始めた。
「おいおい、このタイミングでかよ」
「ふふ⋯⋯面白くなってきたわね」
ちひろはニヤニヤと嬉しそうに笑い、俺の脇腹をつんつんしてくる。
「くっ! 他人事だと思いやがって」
「だって他人事だも~ん」
腹立つわ。誰のせいでこうなったと思っているんだ。
ちひろの奴後で絶対泣かす。
そしてクラスメート達は先生の指示に従い、机を持って移動する。
2年A組は全部で30人。一列五人で六列作ることにことになるので、あいうえお順に並ぶと天城、上野、江上、織田、越智、そして神奈になるため⋯⋯。
「よろしく天城くん。あなたの動向をしっかり観察できるから隣になれてうれしいわ」
神奈さんが笑顔で挨拶をしてくるが目が笑っていない。
「よ、よろしく」
俺はそんな神奈さんを見て恐怖で声が震えながら、そう言葉にすることしかできなかった。
しかしつい先日までは話すことさえままならなかったことを考えれば、一歩前進しているはずだ⋯⋯たぶん。
それともし俺が神奈さんを怒らせているとクラスの奴らに知られたら⋯⋯。
「ちくしょう! 神奈さんの隣になれなかった!」
「何故俺の名字は青木じゃないんだ!」
「天城の奴、家では琴音先輩と柚葉ちゃんに甘やかされ、学園では神奈さんの隣の席⋯⋯だと⋯⋯。俺に人を殺すことのできるノートがあれば」
ただでさえコト姉とユズのことでやっかみを受けているのに、神奈さんのファンの奴らに何をされるか⋯⋯。
そしてこの状況を見て後ろの席の奴が悪魔の笑みを浮かべていた。
「神奈っちと隣なんて⋯⋯テンプレ過ぎて笑えるんですけど」
「こっちは笑い事じゃない。せっかくコト姉とユズの件が収まったと思ってたのに」
これ以上厄介事を増やさないためにも席替えはしないでほしかったが、俺の左斜め後ろ、ちひろの左隣の奴は違うようだ。
「席替え最高! 神は俺を見放さなかった!」
この騒いでいる奴、木田 悟はこれでもかというほど喜びを爆発させていた。
神奈さんは俺が紬ちゃんに大人のイタズラをすると思い、完全に犯罪者を見る目をしていたからな。
学園で神奈さんに会うのは憂鬱だが、幸いなことに席は離れているため教室では安全に過ごすことが出来るだろう。
だがこの後、俺の目論見は見事崩されることになる。
「席替えをするぞ! 出欠を取りやすくするため、あいうえお順に移動しろ」
朝のホームルームの時間、担任の氷室先生がいきなりそんなことを言い始めた。
「おいおい、このタイミングでかよ」
「ふふ⋯⋯面白くなってきたわね」
ちひろはニヤニヤと嬉しそうに笑い、俺の脇腹をつんつんしてくる。
「くっ! 他人事だと思いやがって」
「だって他人事だも~ん」
腹立つわ。誰のせいでこうなったと思っているんだ。
ちひろの奴後で絶対泣かす。
そしてクラスメート達は先生の指示に従い、机を持って移動する。
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「よろしく天城くん。あなたの動向をしっかり観察できるから隣になれてうれしいわ」
神奈さんが笑顔で挨拶をしてくるが目が笑っていない。
「よ、よろしく」
俺はそんな神奈さんを見て恐怖で声が震えながら、そう言葉にすることしかできなかった。
しかしつい先日までは話すことさえままならなかったことを考えれば、一歩前進しているはずだ⋯⋯たぶん。
それともし俺が神奈さんを怒らせているとクラスの奴らに知られたら⋯⋯。
「ちくしょう! 神奈さんの隣になれなかった!」
「何故俺の名字は青木じゃないんだ!」
「天城の奴、家では琴音先輩と柚葉ちゃんに甘やかされ、学園では神奈さんの隣の席⋯⋯だと⋯⋯。俺に人を殺すことのできるノートがあれば」
ただでさえコト姉とユズのことでやっかみを受けているのに、神奈さんのファンの奴らに何をされるか⋯⋯。
そしてこの状況を見て後ろの席の奴が悪魔の笑みを浮かべていた。
「神奈っちと隣なんて⋯⋯テンプレ過ぎて笑えるんですけど」
「こっちは笑い事じゃない。せっかくコト姉とユズの件が収まったと思ってたのに」
これ以上厄介事を増やさないためにも席替えはしないでほしかったが、俺の左斜め後ろ、ちひろの左隣の奴は違うようだ。
「席替え最高! 神は俺を見放さなかった!」
この騒いでいる奴、木田 悟はこれでもかというほど喜びを爆発させていた。
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