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ボディチェックは危険な香り

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そして俺達は玄関で靴に履き替え、学園の外に出るためにグランドを横切っていると⋯⋯。

 カキーン! と響きの良い音が聞こえてきたので、俺は思わず視線を向けた。
 野球か⋯⋯羽ヶ鷺学園の野球部はけっこう強い。それは2年C組に148㎞のストレートを投げるエースの沢尻一八がいるからだ。巷では夏の甲子園の予選大会では、優勝候補の1つに上げられているらしい。

「先程からジッと見て⋯⋯確か天城くんは昔野球をやっていて上手だったと記憶しています」

 神奈さんが俺の視線に気づいたのか問いかけてくる。

「今はやらないのですか? うちの野球部は強いって噂ですし」
「今はもうやらないよ」
「そうですか。スポーツをすれば煩悩が払えると言いますし、私としてはおすすめですけど」

 俺だって⋯⋯。野球の話はあまりしたくないな。

「リウトは煩悩ありまくりだからやった方がいいんじゃない?」
「何を言ってる。俺は常に賢者タイムに入っている聖者のような存在だぞ」
「それってエロい後に入る時間じゃない。それにリウトは聖者じゃなくて性邪の間違いでしょ?」

 さすがにちひろは賢者タイムのことを知っていたか。
 だが神奈さんは何のことかわからずに頭にはてなを浮かべている。

「賢者タイムって何ですか?」
「それは⋯⋯」

 神奈さんに賢者タイムを教えて恥ずかしがる姿を見たい欲求に駆られるが、何とか堪える。これ以上変なことをするとマジで変質者扱いされかねないからな。

「神奈さんは知らなくていいことだ」
「何ですかそれは」
「とにかく忘れてくれ」
「珍しくリウトの言うとおりだと私も思うよ」
「ちひろさんがそう言うなら⋯⋯」

 神奈さんは完全には納得していないようだが、とりあえずちひろの言葉を聞いて、賢者タイムが何か知るのを諦めてくれたようだ。

 そして俺達は十数分歩くと閑静な住宅街に出て、神奈姉妹が住むアパートへと到着した。そして神奈さんは鍵を使ってドアを開ける。

「どうぞ中へ入って下さい。紬も2人を待っていると思います」

 俺達は神奈さんの許可を得たので、玄関で靴を脱ぎ、まずはちひろが部屋へと上がる。

「おじゃまします~」

 そして俺も部屋へと上がろうとしたら、何故か神奈さんが俺の身体をペタペタと下から上へと触り始めた。

「えっと⋯⋯何をしているのかな?」

 俺は神奈さんの怪しい行動を問い詰める。

「ボディーチェックです」
「ここは空港か! 何で俺だけテロリスト容疑をかけられているんだ! ちひろは普通に入っていったぞ!」
「ちひろさんは小さい子にイタズラする人じゃありませんし」
「だからそれは誤解だ」

 だが神奈さんは俺の言葉を無視し、ボディーチェックを続ける。
 それにしても念入りに調べているせいかちかっ! しかもいい匂いがするし、上から神奈さんを見下ろしているため、ワイシャツの隙間から薄いピンクの物が見えてるんですけど。

「どうやら危険物は持っていませんね。中に入っていいですよ」

 そして神奈さんのおさわりタイムが終わり、この時俺は「神奈さんのおかげで一部危険物になりかけたけどな」と心の中で思うのであった。
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