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敗北へのカウントダウン

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「さて、まずは誰を封鎖させてもらおうかな」

 沢尻がニヤニヤと勝ち誇った表情でAクラスを見下ろす。

「くそっ! あんな単純な手に引っかかっちまうなんて!」

 都筑は一度冷静になった方がいい。普段の都筑ならキックフェイントなんかに騙されることはなかっただろう。

「ふう~」

 そして都筑もようやくこのままでは負けると覚ったのか、深呼吸をして落ち着きを取り戻そうとするが⋯⋯。

「都筑の右足を封鎖する」

 時既に遅し、沢尻の手によって利き脚にリング状の重りをつけられてしまう。

「こ、このやろう」

 だがこれは封鎖サッカーのルール。都筑がどのような言葉を発しようと曲げられるものではない。
 あれほど望んでいた先取点がCクラスのものになり、さらに都筑は右足が封鎖させれたことにより、戦力として半減以下になってしまった。
 そしてAクラスの士気は見る影もないまま、無情にもキックオフのフエがなる。

 Aクラスは精彩をかいているため、ボールは簡単に取られてしまい、Cクラスの猛攻が始まる。
 悟、柳、三浦の三人を中心に何とか守り抜こうと奮闘するが、他のクラスメート達のほとんどは沢尻のシュートを恐れ、満足に動くことが出来ないでいる。
 だがそのような劣勢の中、1人だけフィールドを右に左にと駆け回る選手がいた。

「まだ1点差です。勝負は終わっていません」

 神奈さんは、沢尻から井沢へと送られるボールを見事にパスカットする。
 だがその後、攻め上がろうとしても味方がついてきていない。そのためすぐに沢尻に身体を入れられて吹き飛ばされると、神奈さんは軽い悲鳴を上げ、地面に尻餅をついてしまう。

「女がでしゃばるんじゃねえよ」

 そう言って沢尻は神奈さんからボールを奪い、井沢へとパスを出す。
 あれだけ大きな体格に身体を入れられると、男でもその場に持ちこたえることは難しい。
 ましてや神奈さんは女の子だから戦意喪失してもおかしくない。
 だが神奈さんは俺の心配はよそに、すぐに立ち上がり、再びボールへと向かう。

「結ちゃん、すごい闘志だね」

 コト姉が神奈さんの縦横無尽に走る姿を見て感心している。

「ああ、立派なものだ。だけどその闘志は他の者に伝わっていない」

 封鎖サッカー開始時からクラスの雰囲気は良くなかったが、点を取られたことにより、さらに状況は悪化してしまった。
 そのような状態ではCクラスの攻撃を防ぐことなどできず、1点、2点と追加点を取られてしまう。
 そしてその結果⋯⋯三浦と悟の右足に10キロの重りがつけられ、Aクラスはまさに絶望のままハーフタイムを迎えるのであった。
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