姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ

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試合の後が大切だ

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「はあ⋯⋯ひどい目にあった。あれだけの憎しみと嫉妬、向けられた方はたまったもんじゃない」

 俺は何とかコト姉達やクラスメート達を振り切り、Cクラスの元へと向かっていた。
 なぜなら試合には勝ったが、まだ俺にはやることがあったからだ。

「くそが! 何でこんな結果に!」
「すまないな。サッカー部なのにあまり力になれなくて」
「俺もわざわざボールもらってゴールを決められないなんて⋯⋯自信なくすぜ」

 Cクラスは先程まで行われていた封鎖サッカーの反省会をしているようだった。普通ならこのような所に勝者が訪ねるのはマナー違反もいい所だが、俺は構わず声をかける。

「お疲れさま、とても楽しい試合でした」

 俺はなるべく笑顔で、紳士的にCクラスに接する。
 しかしCクラスの連中はギロリとこちらを睨んできて、友好的ではないことが一目瞭然だった。

「何しに来やがった! 試合中俺達をこけにしやがって!」
「あれだけシュートを止めていれば天城くんにとっては楽しい試合だったろうね」
「今、ミーティングをしているんだ。用がないならどこかへ行ってくれないか」

 Cクラスを代表してか、沢尻、田中、井沢から辛辣な言葉が放たれる。
 こちらがエクセプション試験に勝ったこともそうだが、試合中に散々挑発したから、おそらくそのことを根にもっているのだろう。

「手短に一つだけいいか?」

 返事は返ってこないが俺は構わず言葉を続ける。

「井沢くんと田中くん⋯⋯2人はシュートをする時にクセがあるから治した方がいい」

 本当は二人だけではないのだか、サッカーをしているわけでもないので伝える必要はないだろう。

「俺と田中にクセだって!」
「ああ、井沢くんはシュートを打つ方向に首を傾げていて、田中くんは左にシュートする時、左肩の位置が3センチほど下がっている」
「「えっ? マジか?」」

 二人は俺の言葉を信じてくれたのか、シュートの素振りをしてお互いのクセを確認し始めた。

「天城の言うとおり⋯⋯田中の肩の位置が違う」
「それを言うなら井沢も打つ方向に首を傾げているぞ」

 どうやら二人は俺が言っていることが真実だとわかってくれたようだ。

「確かに思い当たる節はあった。最近ライバル校のキーパーに、シュートが読まれている感じがしてたんだ。まさか首を傾げていたとはな⋯⋯でも何で俺達にそのことを教えたんだ? 天城にメリットはないだろ?」
「まあ今回はエクセプション試験で敵同士になったから挑発とか色々やったけど、単純に知り合いが部活で頑張って良い成績を収めたら、同じ学校に通うものとして誇らしいからな」
「天城⋯⋯」
「お前俺達のことをそんな風に⋯⋯」

 実際に今言った気持ちは本当だが、エクセプション試験の度に恨まれて集中攻撃されたらたまったもんじゃないからな。それなら恩を売っておいてこちらの味方につけておいた方がいい。
 それにこれまでの傾向だと、今後サッカー系のエクセプション試験はおそらくもうないだろうから、弱点を教えてもなんら問題はない。
  
「俺が言いたいのはそれだけだ。ミーティングの邪魔して悪かったな」

 そして俺はCクラスに背を向けてこの場を立ち去る。
 すると背後から、何やら話し声が聞こえてきた。

「天城って良い奴だな」
「そうだよね。サッカー部のために弱点を教えてくれるんだもん」
「奴隷商人だけど」

 最後の奴隷商人は気になるが、わざわざCクラスがいる前で井沢と田中の弱点を教えたかいがあった。これで少しは俺に対する恨みは減るだろう。

「ふざけるな! あんなの俺達を懐柔しようと良い子ちゃんぶってるだけだろ!」

 だが中には沢尻のように俺の思惑通りに行かない奴が何名かいたが、概ね望んだ結果になったので俺は満足だった。
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