姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ

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良いこともあれば悪いこともある

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「いや、これはだなあ」

 俺は言い訳をしようと考えを巡らすが疲れていることもあり、良い案が浮かんで来ない。

「はいこれ」

 しかしちひろは俺の様子などお構い無しで、テーブルの上に焼きそばと麦茶を置いた。

「これは⋯⋯」
「リウトの分よ。どうせ疲れて動けないんでしょ。変な声も出しちゃって」

 ちひろにはバレバレだった。もうこれ以上言い訳してもしょうがないから、ここはありがたく差し入れをもらうとするか。

「サンキュー。でもちひろはこんな所で油を売っていてもいいのか?」
「うちのクラスの方は大丈夫。材料がなくなって片付けに入っているから」
「ということはまさか⋯⋯」
「ええ、カレーは完売したわ」

 俺は途中までしか手伝うことが出来なかったから、ちひろの言葉を聞いてホッとする。

「そっか。とりあえず良かったよ」
「みんな頑張っていたからね。それでそっちはどうなの?」
「コト姉が来て助かったけど、益々お客さんも増えたって感じだな」
「学園のアイドルが2人揃っちゃったからね。もし良かったら神奈っちにも1ーAを手伝うように言っておこうか?」
「頼むからそれだけは止めてくれ」

 今の状況でもけっこうきついのに、神奈さんまで加わったらお客さんが多過ぎてパニックになってしまう。

「まあ今は焼きそばを食べて休みなさい。それと⋯⋯」

 ちひろは俺の後ろに周り、両肩に手を置き力を入れる。すると心地よい痛みが肩に走り、俺の疲れを癒していった。

「肩を揉むのうまいんだな」

 両親とかの肩を揉んで練習でもしていたのだろうか。

「実は初めてだったの。リウトに初めてを奪われちゃった」
「人聞きの悪いことを言うな。これはむしろ俺が襲われている感じだろ」
「それじゃあやめちゃおっかなあ。リウトはそんなに疲れているのに午後もケーキ作りができるのかなあ。もし失敗したらみんな心配すると思うけどなあ」
「くっ!」

 悔しいがちひろの言う通りだ。ここは大人しくしているしかないな。
 俺は焼きそばを食べている間、ちひろの思うがままに全身を弄ばれると、いつしか身体の疲労が和らいでいく。

「どう? 後ちょっとがんばれそう?」
「ああ、ありがとう。これで残りの時間も行けそうだ。だけどその前に1つだけちひろにお願いしたいことが――」

 そして俺はちひろにマッサージと頼み事を聞いてくれたお礼を言って、再び戦場へと向かう。

「戻りました~」

 俺はエプロンを着けてこれからどういうシフトにするか考える。
 ここはこのままユズとコト姉がメインでやった方がいいかな? おそらくお店に来てくれる人達も2人が作った物を望んでいるはずだ。

「俺はみんなをサポートするよ」
「は、はい。お願いします」

 しかし声が返ってきたのは楓さんだけで残りの3人は何故か頬を膨らませムスッとしている。

「えっ? 何? これはどういう状況?」

 皆ケーキ作りの作業はしているが、どこか空気が重い。俺のいない間にいったい何が⋯⋯。

「楓さん、これはどういうこと?」

 俺は唯一変わらぬ表情で作業をしている楓さんに話しかけてみる。

「え~と⋯⋯それは⋯⋯」

 そう言って楓さんはチラチラと俺の後ろの方を見ている。

「ちひろ?」

 楓さんの視線の先にはちひろがいるが、何か関係があるのか?
 俺が頭の中で原因を考えていると、本人達がその理由を口に出した。

「いいよね。リウトちゃんは女の子と仲良く休憩出来て!」
「兄さんはこの公の場で肩を揉んでもらうなんて、どれだけリア充なんですか」
「きっと先輩はそのうち、今度は俺が揉んでやるぜ。ほら、ここが気持ちいいんだろ? 素直になれよ。とか言って人には言えないような所をモミモミするに決まってます」

 どうやら3人は俺がちひろに肩を揉まれていたのが気に入らなかったらしい。

「お姉ちゃん足が疲れたなあ。誰か足を揉んでくれる人がいると助かるなあ」
「わ、私は別に肩はこっていませんが、兄さんがどうして私の肩を揉みたいと言うなら、やらせて上げないこともありません」
「私も卵白をかき混ぜすぎて肩が疲れました。誰か肩にベ○マをかけてくれると助かります」

 3人が圧を込めた目で俺にマッサージをしろと要求してくる。
 それにしてもコト姉は足でユズと瑠璃は肩か⋯⋯これは胸の大きさが関係しているのか? だがそんなことを口に出したらコト姉からどんな仕打ちを受けるかわからない。

「リウトちゃんどうなの?」
「兄さんはどうするの?」
「先輩、ハッキリ言って下さい」

 俺は3人の問いに対して。

「後日やらせて頂きます」

 というしかなかった。
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