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スコアは貯めておいて損はない
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ゴールデンウィークが終わると周囲が慌ただしくなってる。
なぜならこれから待ち構えているのは中間テストだからだ。
勉強が苦手な者に取っては地獄の時間になるだろう。
地獄なんて大袈裟? と首を捻る者もいるとは思うが、羽ヶ鷺学園にはその言葉が相応しい。なぜなら30点以下の赤点を取ったら退学が決定してしまうからだ。
だからテスト前の時期になると一部の生徒は異様な雰囲気を醸し出しており、それは2ーAクラスも例外ではなく、教室内では普段と違う空気を出している者達がいた。
「何でテストなんてあるんだ! 1年の時から赤点ギリギリな俺に取っては苦痛でしかない。昨日も結局部屋の掃除と古い漫画を一巻から最終巻まで読むだけで終わってしまった。誰か俺を助けてくれえ!」
悟が1人でブツブツとテスト前あるあるを口にしていたので、自業自得だと心の中で思い放っておくことにする。
「おはよう~」
ちひろが明るい声で挨拶しながら教室に入ってきても返事が返ってくるのはまばらで、クラスの半数は教科書とにらめっこしている。
「いや~みんなやってるねえ」
「テスト前だからな」
中間テストは4日後の月曜日からで殺伐とした雰囲気が教室内に流れており、おしゃべりしている者はほとんどいない。
「ちひろさんはいつも通りあまり代わらないですね」
神奈さんは英単語帳を見ながら余裕な表情を浮かべているちひろに問いかける。
「まあね。自慢じゃないけど私には秘策があるから」
「秘策ですか? それは気になりますね」
「ふっふっふ⋯⋯私にはテストを乗り切るための最終兵器⋯⋯リウトが要点をまとめたノートがあるんだぁぁぁ」
人のノートに頼るとか本当に自慢じゃないな。どうしてそんな自慢気に話せるのか不思議でしょうがない。
神奈さんもちひろの行動に呆れて固まっているじゃないか。
「ち、ちひろさん。そのノート⋯⋯私めに貸して頂けないでしょうか!」
だがそのノートに食いついた男がいた。それは悟だ!
悟がプライドを捨てて土下座をする勢いでちひろに頭を下げている。
「要点がまとまったノート⋯⋯今の俺が中間テストを乗り切るためにそれは最も必要な物です。どうか、どうかお願いします!」
「木田くん⋯⋯テストって言うのは日々の勉強の積み重ねを確認する場でその時だけ乗り越えても意味がないよ。将来のことを考えるならこのノートに頼らない方がいいと思う」
正直どの口が言うんだと抗議したい。しかもそのノートは俺のだし。
「俺は⋯⋯俺達は今この時を生きている! 未来を、過去を生きているんじゃない! 今を乗り切らなければ過去は無駄なものになるし、未来が来ることはないんだ! だから頼む!」
ちひろと悟の間で安っぽいドラマが始まっているがもう一度言おう。そのノートは俺のだ。けどこれくらい派手にやってくれた方がこちらとしても助かる。
「木田くんの心意気はわかったよ。でもこのノートはリウトのだからリウトに聞いて」
「ちひろさんに頭を下げて損した! だがまあいい。俺とリウトは心の友だから必ずノートを貸してくれるはずだ!」
悟はノートを借りるために本当に必死だな。まあ確かに本人もさっき言っていたが、俺の調べた情報でも悟は1年の3学期の期末試験で5教科30点台の点数を取っておりすれすれで2年に進級していた。
仕方ない。せっかくできたクラスメートが落ちるのも見たくないのでノートを貸してやるか。
「いいぞ。けど明日持ってこいよ」
「マジで! ありがとうリウト! さすが俺の親友だ!」
俺はちひろから左手でノートを受け取り、そして悟に向かって右手を伸ばす。
「えっ? 何この手? 俺が欲しいのはリウトの左手にあるノートだぞ」
「まさかただで見れるとも?」
「くっ! 金を取るのか!」
「まあそれなりに苦労したからな。1教科1,000スコアで」
「1,000スコアか⋯⋯まあそれくらいなら」
「毎度あり~。後このノートを他の人に見せたり貸したりしたら違約金で20,000スコアもらうから」
「わかってる。せっかく俺がスコアを出して買ったノートだ。他のやつらに見せたりしねえよ」
こうして俺は悟に5教科分のノートを貸し、昼休みに氷室先生の立ち会いの元、5,000スコアをもらうことに成功するのであった。
そしてその日の放課後。
俺はちひろと共に学園を出て、自宅までの帰路についていた。
「それにしてもリウトは本当に悪いことを考えるわね」
「まあ別に良いじゃないか。俺はスコアが潤い、テストの点数がヤバい者達は赤点を取らずに済む。お互いWin-Winの関係じゃないか」
「まあノートをタダで借りている私も人のことは言えないけどね」
そう。俺はちひろにはタダで要点をまとめたノートを貸している。なぜなら今日の朝、ノートを借りている件を声高に言ってもらったのはちひろの演技だからだ。結局悟にノートを貸した後、8人のクラスメートがノートを借りにきたため、予め用意していたノートのコピーを渡し、俺のスコアはウハウハ状態になった。
「新入生歓迎会の時みたいにいつスコアが必要になるかわからないからな」
「ほんとリウトはこういう悪知恵が働くよね」
「まあこれも学園を生き抜くための知恵だ」
少なくともスコアはあって損するものじゃないからな。
「とにかくあんな茶番に付き合ってあげたんだから期末テストの時もノートを貸してよね」
「わかってるよ」
おそらくこの1年、何人もが俺のノートを借りにくるだろう。ただ全く勉強しないのも本人のためにならないからいつもギリギリでしかノートを渡す気はないけど。
そして俺はちひろと別れ、自宅まで1人で歩いていると突然後方から俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「先輩先輩大変です~!」
どうやら後ろから声をかけてきたのは瑠璃のようだ。そしてそのさらに後方にはユズの姿も見える。
「なんだ。騒々しいな」
今週は中間テストもあるし、瑠璃との配信は行わないはずだ。それなのに瑠璃が焦って声をかけてきたのは⋯⋯何だか嫌な予感がするぞ。
そして瑠璃は俺の前に来ると息を整え、真っ直ぐと見据えてくると血相な顔をして言葉を言い放つ。
「先輩大変です! 私を助けて下さい!」
なぜならこれから待ち構えているのは中間テストだからだ。
勉強が苦手な者に取っては地獄の時間になるだろう。
地獄なんて大袈裟? と首を捻る者もいるとは思うが、羽ヶ鷺学園にはその言葉が相応しい。なぜなら30点以下の赤点を取ったら退学が決定してしまうからだ。
だからテスト前の時期になると一部の生徒は異様な雰囲気を醸し出しており、それは2ーAクラスも例外ではなく、教室内では普段と違う空気を出している者達がいた。
「何でテストなんてあるんだ! 1年の時から赤点ギリギリな俺に取っては苦痛でしかない。昨日も結局部屋の掃除と古い漫画を一巻から最終巻まで読むだけで終わってしまった。誰か俺を助けてくれえ!」
悟が1人でブツブツとテスト前あるあるを口にしていたので、自業自得だと心の中で思い放っておくことにする。
「おはよう~」
ちひろが明るい声で挨拶しながら教室に入ってきても返事が返ってくるのはまばらで、クラスの半数は教科書とにらめっこしている。
「いや~みんなやってるねえ」
「テスト前だからな」
中間テストは4日後の月曜日からで殺伐とした雰囲気が教室内に流れており、おしゃべりしている者はほとんどいない。
「ちひろさんはいつも通りあまり代わらないですね」
神奈さんは英単語帳を見ながら余裕な表情を浮かべているちひろに問いかける。
「まあね。自慢じゃないけど私には秘策があるから」
「秘策ですか? それは気になりますね」
「ふっふっふ⋯⋯私にはテストを乗り切るための最終兵器⋯⋯リウトが要点をまとめたノートがあるんだぁぁぁ」
人のノートに頼るとか本当に自慢じゃないな。どうしてそんな自慢気に話せるのか不思議でしょうがない。
神奈さんもちひろの行動に呆れて固まっているじゃないか。
「ち、ちひろさん。そのノート⋯⋯私めに貸して頂けないでしょうか!」
だがそのノートに食いついた男がいた。それは悟だ!
悟がプライドを捨てて土下座をする勢いでちひろに頭を下げている。
「要点がまとまったノート⋯⋯今の俺が中間テストを乗り切るためにそれは最も必要な物です。どうか、どうかお願いします!」
「木田くん⋯⋯テストって言うのは日々の勉強の積み重ねを確認する場でその時だけ乗り越えても意味がないよ。将来のことを考えるならこのノートに頼らない方がいいと思う」
正直どの口が言うんだと抗議したい。しかもそのノートは俺のだし。
「俺は⋯⋯俺達は今この時を生きている! 未来を、過去を生きているんじゃない! 今を乗り切らなければ過去は無駄なものになるし、未来が来ることはないんだ! だから頼む!」
ちひろと悟の間で安っぽいドラマが始まっているがもう一度言おう。そのノートは俺のだ。けどこれくらい派手にやってくれた方がこちらとしても助かる。
「木田くんの心意気はわかったよ。でもこのノートはリウトのだからリウトに聞いて」
「ちひろさんに頭を下げて損した! だがまあいい。俺とリウトは心の友だから必ずノートを貸してくれるはずだ!」
悟はノートを借りるために本当に必死だな。まあ確かに本人もさっき言っていたが、俺の調べた情報でも悟は1年の3学期の期末試験で5教科30点台の点数を取っておりすれすれで2年に進級していた。
仕方ない。せっかくできたクラスメートが落ちるのも見たくないのでノートを貸してやるか。
「いいぞ。けど明日持ってこいよ」
「マジで! ありがとうリウト! さすが俺の親友だ!」
俺はちひろから左手でノートを受け取り、そして悟に向かって右手を伸ばす。
「えっ? 何この手? 俺が欲しいのはリウトの左手にあるノートだぞ」
「まさかただで見れるとも?」
「くっ! 金を取るのか!」
「まあそれなりに苦労したからな。1教科1,000スコアで」
「1,000スコアか⋯⋯まあそれくらいなら」
「毎度あり~。後このノートを他の人に見せたり貸したりしたら違約金で20,000スコアもらうから」
「わかってる。せっかく俺がスコアを出して買ったノートだ。他のやつらに見せたりしねえよ」
こうして俺は悟に5教科分のノートを貸し、昼休みに氷室先生の立ち会いの元、5,000スコアをもらうことに成功するのであった。
そしてその日の放課後。
俺はちひろと共に学園を出て、自宅までの帰路についていた。
「それにしてもリウトは本当に悪いことを考えるわね」
「まあ別に良いじゃないか。俺はスコアが潤い、テストの点数がヤバい者達は赤点を取らずに済む。お互いWin-Winの関係じゃないか」
「まあノートをタダで借りている私も人のことは言えないけどね」
そう。俺はちひろにはタダで要点をまとめたノートを貸している。なぜなら今日の朝、ノートを借りている件を声高に言ってもらったのはちひろの演技だからだ。結局悟にノートを貸した後、8人のクラスメートがノートを借りにきたため、予め用意していたノートのコピーを渡し、俺のスコアはウハウハ状態になった。
「新入生歓迎会の時みたいにいつスコアが必要になるかわからないからな」
「ほんとリウトはこういう悪知恵が働くよね」
「まあこれも学園を生き抜くための知恵だ」
少なくともスコアはあって損するものじゃないからな。
「とにかくあんな茶番に付き合ってあげたんだから期末テストの時もノートを貸してよね」
「わかってるよ」
おそらくこの1年、何人もが俺のノートを借りにくるだろう。ただ全く勉強しないのも本人のためにならないからいつもギリギリでしかノートを渡す気はないけど。
そして俺はちひろと別れ、自宅まで1人で歩いていると突然後方から俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「先輩先輩大変です~!」
どうやら後ろから声をかけてきたのは瑠璃のようだ。そしてそのさらに後方にはユズの姿も見える。
「なんだ。騒々しいな」
今週は中間テストもあるし、瑠璃との配信は行わないはずだ。それなのに瑠璃が焦って声をかけてきたのは⋯⋯何だか嫌な予感がするぞ。
そして瑠璃は俺の前に来ると息を整え、真っ直ぐと見据えてくると血相な顔をして言葉を言い放つ。
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