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本編
第20話:大蛇
しおりを挟むユリウスは歯をかみ締めた。
「……ああ、悪い。分かっている。民たちを守るのが私たちの仕事だ」
ルイの言葉が分からないはずの騎士三人も、ユリウスのその言葉だけを聞いて「そうです」と当たり前のように強く頷いていた。
ユリウスは今後避けられないであろう邪神との戦いを思い浮かべ、顔を顰める。そして、少しでも情報を集めておこうとルイへと問いかけた。
「……ルイ、邪神と初代国王の戦いの記憶が残ってないか?」
『それがあまり残っていない。邪神は大蛇という事ぐらいしか分からないな』
「!」
蛇か……と、ユリウスは顎に手を当て考えた。
蛇は変温動物、寒いと動きが鈍くなる。風と雷と氷の聖獣であるルイもいるし、ユリウスも氷魔法が得意だ。大蛇の周りを氷で固め、体温を下げられないだろうか。
『ユリウス困ってるー?』
『僕らも手伝うよ!』
『悪いことする蛇さんはめっだよねー!』
『お水で蛇を濡らそーぜ!』
精霊たちはユリウスの周りを飛び回りながら、元気よくそう言った。
「殿下、私どもにも出来ることがありましたら何なりとお申し付けください」
「止めたとしてもどうせ、行かれるのでしょうが。立場をお忘れなきようお願い致します」
アルトとエルハルドも言う。
「確かに民を守るのが俺たちの仕事ですが、殿下の身が第一ですからね」
ネルは苦笑していた。
そして、
「そんな顔の殿下、初めて見ました」そう続ける。
ユリウスは自分の頬へと手を当てると、強ばった筋肉を少し解す。そして、無理やり口角をあげ、王族に相応しい仮面を被った。
「悪い、どうしても緊張してしまってな」
「良いではないですか」エルハルドは笑いながら言う。
「行動の動機こそ、そのお立場からのものかもしれませんが、戦いに行かれる際は冒険者ユーリなのでしょう」
「……」
そうかもなと、ユリウスは心の中で返事をした。
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