覇道の神殺しーアルカディアー

東 将國

文字の大きさ
39 / 51
第2章 神々の運命

第35話 夫婦

しおりを挟む

「ああ、そうだよ。私の名前はキーキ・インベスター。元老院総監のマーゼラ・インベスターの妻だ」
「う、うそ?でも、その……」

 優香はキーキのフルネームを聞いても信じられない様子だった。
 なぜならキーキは麗しい美女であり、年齢で言えば二十代ほどに見える。対してマーゼラはその瞳は一切の衰えを見せないが、見た目は年老いた老人だった。

「まぁ信じられないのも無理はない。見た目は若い女だからな。だがな優香よ、こやつはあらゆる魔法を使いこなす魔女だ。見た目を変えることなど容易いのだよ」
「キーキさんも魔法を?」
「うむ。お主と同じく魔法を扱える神の力を持っておる」

 キーキは突然その場に現れたり、対象を転移させたりすることができるほどの魔法を使える魔女だった。
 神殺しでありながら魔法を使うという点では優香と似た部分があり、優香はどことなく親近感を覚えた。

「つまりこやつの正体は若い美女などではなく、年お……」
「……おい」

 その時だった。頑強な作りのはずの部屋が揺れ始め、元々緊張感のあった空気がより一層重たくなった。
 その力の発生源はマーゼラの隣に座るキーキから発せられていた。

「マーゼラ、それ以上言ったらどうなるか分かってんだろうなぁ?抵抗する間も無く次元の彼方に消し飛ばすよ?」

 どうやらマーゼラの言おうとしていたことはキーキにとって触れてはならない逆鱗だったようだ。
 怒りによりキーキから溢れ出た神殺しの力の源である神威かむいだけで周囲に影響を及ぼした。
 たったそれだけでキーキが強大な力を持つ神殺しであることが伺えた。

「ほう?この儂を消し飛ばすとな?面白いことを言ってくれるではないか!お前には力量の差というものを分からせねばならんようだ」
「上等だ老いぼれジジイが!」
「貴様も大して変わらんだろうがッ!」
「ッ!言いやがったな……手加減しないからね!?」

 ついにはマーゼラまでもが神威を発し、二人の力のぶつかり合いは部屋どころかフェルノーラ城全体を揺らすほどの影響が出ていた。

「んもうっ!仲がいいんだか悪いんだか分からないわ」
「喧嘩するほど仲がいい、という言葉もある」
「だからといって毎回喧嘩するたびに城を揺らされては迷惑なんだがね?他所でやって欲しいもんだよ」
「あ、あはは。二人が本気で喧嘩したら僕たち止められますかね?」

 まさに一触即発の状況だったにもかかわらず、神斗をはじめとした元老院議員は危機感を抱くことはなく、むしろ呆れている様子だった。

「あー、二人とも夫婦喧嘩はその辺にしてくれるか?今回は重大な議題である上に早急に話を進める必要があるんだが」
「ぬっ!儂としたことが、こんな奴の口車に乗せられてしまうとは。優香に見苦しいものを見せてしまったな」
「ふんっ、さっさと会議を始めとくれ。私は忙しいんだ」
「……暇だろうが」
「あぁ!?」

 今この部屋に元老院と神斗、優香が集まったのは先日行われた神王会議の報告をするためであった。
 さらには北欧神話からの奇襲攻撃への対処についても話さなければならなかった。
 それにも関わらずマーゼラの小言でまたもや部屋の空気が張り詰めてしまう。

「はぁ、ごめんな優香。こいつら仕事はできるんだが、どうも人間性に難があってな」
「こ、個性的な人ばかりだね神殺しって」
「ああ。でも皆いい奴らなんだ。うまく付き合ってやってくれると嬉しいんだが……」
「ふふ、大丈夫だよ神斗。私いろんな人と知り合えてすごく楽しいから」

 優香がこれまで出会った神殺しはこのイデトレアの幹部ばかりだったが、誰もが例外なく個性的だった。
 しかし、優香はそんな出会いがとても楽しく感じていた。

「……そうか。それなら助かるよ」
「うんっ!」

 命の恩人だと思っていた人に裏切られ、守るべき存在を失った優香にとって仲間が増えることは何より嬉しいことだった。

「あら?こっちの夫婦はマーゼラ達と違って仲良しなのねぇ?羨ましいわぁー」
「「ふ、夫婦!?」」

 神斗と優香、二人の仲睦まじい光景を見たローガンは二人を冷やかした。
 これに驚いた二人は全く同じ反応をしてしまい、さらに仲の良さを見せつけてしまうこととなった。

「と、とにかく雑談はこの辺にしてそろそろ会議を始めるぞ!」
「おや?王が動揺するとは、なかなか珍しいものを見てしまったね」
「うむ、これは興味深い」
「神斗さんはいつも冷静ですもんね」

 こうして元老院による会議が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...