覇道の神殺しーアルカディアー

東 将國

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第2章 神々の運命

第35話 夫婦

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「ああ、そうだよ。私の名前はキーキ・インベスター。元老院総監のマーゼラ・インベスターの妻だ」
「う、うそ?でも、その……」

 優香はキーキのフルネームを聞いても信じられない様子だった。
 なぜならキーキは麗しい美女であり、年齢で言えば二十代ほどに見える。対してマーゼラはその瞳は一切の衰えを見せないが、見た目は年老いた老人だった。

「まぁ信じられないのも無理はない。見た目は若い女だからな。だがな優香よ、こやつはあらゆる魔法を使いこなす魔女だ。見た目を変えることなど容易いのだよ」
「キーキさんも魔法を?」
「うむ。お主と同じく魔法を扱える神の力を持っておる」

 キーキは突然その場に現れたり、対象を転移させたりすることができるほどの魔法を使える魔女だった。
 神殺しでありながら魔法を使うという点では優香と似た部分があり、優香はどことなく親近感を覚えた。

「つまりこやつの正体は若い美女などではなく、年お……」
「……おい」

 その時だった。頑強な作りのはずの部屋が揺れ始め、元々緊張感のあった空気がより一層重たくなった。
 その力の発生源はマーゼラの隣に座るキーキから発せられていた。

「マーゼラ、それ以上言ったらどうなるか分かってんだろうなぁ?抵抗する間も無く次元の彼方に消し飛ばすよ?」

 どうやらマーゼラの言おうとしていたことはキーキにとって触れてはならない逆鱗だったようだ。
 怒りによりキーキから溢れ出た神殺しの力の源である神威かむいだけで周囲に影響を及ぼした。
 たったそれだけでキーキが強大な力を持つ神殺しであることが伺えた。

「ほう?この儂を消し飛ばすとな?面白いことを言ってくれるではないか!お前には力量の差というものを分からせねばならんようだ」
「上等だ老いぼれジジイが!」
「貴様も大して変わらんだろうがッ!」
「ッ!言いやがったな……手加減しないからね!?」

 ついにはマーゼラまでもが神威を発し、二人の力のぶつかり合いは部屋どころかフェルノーラ城全体を揺らすほどの影響が出ていた。

「んもうっ!仲がいいんだか悪いんだか分からないわ」
「喧嘩するほど仲がいい、という言葉もある」
「だからといって毎回喧嘩するたびに城を揺らされては迷惑なんだがね?他所でやって欲しいもんだよ」
「あ、あはは。二人が本気で喧嘩したら僕たち止められますかね?」

 まさに一触即発の状況だったにもかかわらず、神斗をはじめとした元老院議員は危機感を抱くことはなく、むしろ呆れている様子だった。

「あー、二人とも夫婦喧嘩はその辺にしてくれるか?今回は重大な議題である上に早急に話を進める必要があるんだが」
「ぬっ!儂としたことが、こんな奴の口車に乗せられてしまうとは。優香に見苦しいものを見せてしまったな」
「ふんっ、さっさと会議を始めとくれ。私は忙しいんだ」
「……暇だろうが」
「あぁ!?」

 今この部屋に元老院と神斗、優香が集まったのは先日行われた神王会議の報告をするためであった。
 さらには北欧神話からの奇襲攻撃への対処についても話さなければならなかった。
 それにも関わらずマーゼラの小言でまたもや部屋の空気が張り詰めてしまう。

「はぁ、ごめんな優香。こいつら仕事はできるんだが、どうも人間性に難があってな」
「こ、個性的な人ばかりだね神殺しって」
「ああ。でも皆いい奴らなんだ。うまく付き合ってやってくれると嬉しいんだが……」
「ふふ、大丈夫だよ神斗。私いろんな人と知り合えてすごく楽しいから」

 優香がこれまで出会った神殺しはこのイデトレアの幹部ばかりだったが、誰もが例外なく個性的だった。
 しかし、優香はそんな出会いがとても楽しく感じていた。

「……そうか。それなら助かるよ」
「うんっ!」

 命の恩人だと思っていた人に裏切られ、守るべき存在を失った優香にとって仲間が増えることは何より嬉しいことだった。

「あら?こっちの夫婦はマーゼラ達と違って仲良しなのねぇ?羨ましいわぁー」
「「ふ、夫婦!?」」

 神斗と優香、二人の仲睦まじい光景を見たローガンは二人を冷やかした。
 これに驚いた二人は全く同じ反応をしてしまい、さらに仲の良さを見せつけてしまうこととなった。

「と、とにかく雑談はこの辺にしてそろそろ会議を始めるぞ!」
「おや?王が動揺するとは、なかなか珍しいものを見てしまったね」
「うむ、これは興味深い」
「神斗さんはいつも冷静ですもんね」

 こうして元老院による会議が始まった。
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