42 / 51
第2章 神々の運命
第38話 戦いの目的
しおりを挟む『さあさあ!いよいよ戦争やでシギュン!!』
『ああ、そうだねロキ。この前の奇襲攻撃の雪辱を果たそうじゃないか!』
豪華絢爛な宮殿にあるとある一室、そこにはピエロのような格好をした美青年ロキと、褐色の肌をした魅惑的な女性シギュンがいた。
『そうや!我が愛しき息子を屠り、あまつさえ人間界で俺様に苦渋を舐めさせた奴ら神殺しへの復讐の時やで!!ヒッヒッヒッ!!!』
ロキは人間界で優香に接触した際に優香とカレン、そして優香を護衛していた紅葉と戦闘を行った。
自らの力を十分に発揮できない人間界ではあったものの、ロキは三人の神殺しに撤退させられた。
さらに先日のイデトレア奇襲攻撃では、作戦を完全に看破されフェンリルまで打ち倒されてしまった。
これ以上ないほどの屈辱を味わったロキは、神殺しに復讐を誓っていた。
『んで?奴らとどう戦うつもりだい?いくらアンタでも奴らとまともに殺り合えばただじゃ済まないよ?』
『まぁ悔しいがその通りや。特に“天帝”と“海鳴り姫”、“戦兵”とは殺り合いたくないわ。他にも何人かバケモンがおる』
『ほう?神殺しを恐れるなんてアンタらしくないね?』
『あくまで神の力を奪った人間程度にしか思っとらんかった。だが実際に戦ってみて考えが変わったんや。守護者、奴はホンマに強かった。たとえ神界で戦ったとしても苦戦は必至やろうな』
神殺しには神斗をはじめとした多くの実力者がおり、ロキは何人か危険視していた。
ロキは今まで神殺しの力を甘く見ていたが、人間界でカレンと戦ったことでその考えを改めたのだ。
『復讐したいのは山々やけど真の目的を忘れちゃあかん』
『真の目的……あの魔導王の力を持つ神殺しを“殺す”こと、そうだね?』
『ああそうや。あの娘を殺し、神々の運命を引き起こすッ!!!』
ロキがイデトレアに襲撃を行った目的、それは優香を捕らえることではなく殺すことだった。
そしてその先にあるもの、神々の運命こそがロキの目指すものだった。
『それにあの小娘、岡本優香は“天帝”にとって相当大事な存在らしいじゃないか。あの小娘をやっちまえば神殺しへの復讐も果たせて一石二鳥だ』
『いいや、それだけじゃあ足りん。あの娘を殺すのはあくまで神々の運命を起こすためや。奴らへの復讐はもっと派手に、徹底的にやらなあかん!』
『じゃあトールに言われた通りにするのかい?』
『ああ、自分のケツは自分で拭かなあかんやろ?』
ロキは二度も失敗を犯した。
そのためトールから責任を取れと言われていた。しかしそれは幽閉や処罰といったものではなかった。
『俺様の全力を持って奴らを叩き潰す!!容赦せえへんで!?簒奪者どもぉぉおおッ!!!ヒッヒッヒッヒッヒッ!!!』
ロキの責任の取り方、それは自らの全力を持って報復攻撃をしてくる神殺しと戦うというものだった。
この時、ロキは考えてもいなかった。なぜトールが責任を取らせるためとはいえ二度も失敗したロキに神殺しと戦わせるのか。
そして、神王会議が終わった後に神斗とトールが何を話していたのか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
神殺しの国イデトレア。その唯一の玄関口となるカテレア神殿には、武器を携え防具を着込んだ軍隊が集結し整然と並んでいた。
その軍隊の正面、転移門の前にはイデトレアの幹部が数名立っており、真ん中には神斗の姿もあった。
「これより、北欧神話の世界へ入り報復攻撃を開始する!!」
「「「うおぉぉぉおおッ!!!」」」
神斗の号令に兵たちは大声を上げて答えた。
「今回の相手は北欧神話という強大な勢力である。そのため軍より第一部隊、第二部隊、第三部隊の合同部隊を編成した。それぞれの部隊の指揮は主に各部隊長が行うが、合同部隊全体への総指揮権は軍務総長である海乃が持つこととする」
イデトレアの軍はいくつかの舞台に分けられており、今回の攻撃には三つの部隊が参戦した。
数こそ多くはないものの、その一人一人がよく訓練された実力のある兵士だった。
それに加え軍を指揮する者としてイデトレアの中でも屈指の実力者である海乃も戦いに参加することとなった。
「そして今回の攻撃には神殺しの王として俺も出向く。そのため王下親衛隊である天の七支柱から光輝と竜斗も同行する。二人ともよろしくな」
「おうよ!任せときな師匠!」
「はい、ご期待に応えれるよう頑張ります神斗様」
“光輝”と“竜斗”
二人は優香を護衛する任務を与えられている紅葉と同じく、神斗の親衛隊に所属する神殺しだ。それ故に相当な力量があることは確かだった。
そして神斗はただ軍を激励するためにここにいたのではなく、自ら出陣するようだった。
「それと、皆に確認しておく。今回の攻撃は侵略のためではなく、あくまで奇襲攻撃に対する報復である。つまり、戦争ではないということだ。そのことを決して忘れるな」
「「「はっ!!!」」」
「特に海乃、お前に言っているんだからな?」
「うっ……わ、わかってる!」
神斗は戦闘好きな海乃に釘を刺した。それは軍を指揮する者として勝手な行動を取らせないためだった。
しかし、内心強敵と戦えるかもしれないと思っていた海乃は、気づかないうちに頭のアホ毛を犬の尻尾のように揺らしていた。
「本当にわかっているのか?……まぁ良い。改めてもう一度言っておこう。奴ら北欧神話は強大な勢力だ。多数の魔獣や巨人、エインヘリアルと呼ばれる戦士もいる。決して油断せず、目の前の敵に集中しつつ周囲と連携して戦うこと。勇敢なる兵たちよ、日頃の訓練を活かす時だ!獅子奮迅の活躍を期待する!!」
「「「うおぉぉぉぉぉおおおッ!!!!!」」」
神斗は背後にある転移門の方を向き片手を上げ、勢いよく振り下ろす。
「いざ北欧神話の世界へ!!進撃開始ッ!!!!」
「「「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおッッ!!!」」」
神斗を先頭に軍隊が転移門に突撃していく。兵たちは声を荒げお互いを鼓舞する。
転移門の先には強大な勢力がいる。それでも誰一人としてその歩みを止めることなく堂々と進んでいく。
その理由は、神斗の存在だった。王自ら軍の先頭に立ち兵士たちを導くとなれば当然のように士気が上がる。
王も兵とともに戦場に立つ。それこそが神殺しが強大な力を持つ存在だと言われる所以だった。
いよいよ神殺しと北欧神話の戦いが始まろうとしていた。
しかし、この戦いはその先にある巨大な戦いのほんの始まりに過ぎないのだった。
0
あなたにおすすめの小説
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる