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14 天使と天使の邪魔をしたくない

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 声楽会は大盛況に終わり、歌い終わった後のちょっとしたパーティーで私は囲まれることとなった。

 いつから歌っているのか、誰に師事しているのか、我が家でもやってくれないだろうか、今度は私に伴奏させてくれないか、等々、矢継ぎ早の質問に、誰が誰だかを覚えるので精いっぱいの私は目が廻りそうだった。

「失礼。彼女は歌ったばかりで疲れているだろうし、答えられない質問もあるだろうから、後日手紙を出してみたらどうだろうか。今日は、彼女を称賛することにしないか?」

 私の肩に軽く手を置いて、バロック様がシャンパンのグラスを片手に私を囲っていた人たちへと微笑みかける。

 天使の美貌に落ち着いた声音と言動。これに従えないような同年代がいるのなら、きっとその方はとても肝が太いお方に違いない。

 周りの方々も次々にグラスを持ち、私もグラスを頂いて、一緒に乾杯をして、雑談にあいなった。その間も、バロック様はずっと私の傍にいてくださる。

 トレニオン伯爵令嬢も、主催だからと色々と質問攻めにあっていたようだが、流れが波及して落ち着いて会話することができた。このような会を開いてくれてありがとう、とようやく言うことができた。

 彼女の方が感動してしまっていて、こちらこそ! ぜひお友達に! と言われ、フリージアとハンナと呼び合うようになった。女性の親しいお友達は2人目だ、と嬉しくなり、今度ジャスミン様も交えて3人でお茶会にしましょう、とも。

 その日は、ジャスミン様が居ないのだけが少し寂しかったけれど、新しい友達もできたし、それに……バロック様が笑いかけてくれたのが嬉しくて、おおむね楽しく終えることができた。

 数日後、風邪が治ったという連絡がきたものの、彼女はまだ体力まで回復していないので家からは出して貰えない、という手紙がきた。

 私だけでなく、ハンナ様にも急な欠席申し訳ありません、という手紙が来たらしい。お返事にお茶会の事を書き、バロック様とローラン様にもそれを知らせる旨を了承を取った。とても心配していらしたから、と書き添えたらジャスミン様も快諾してくださった。

 バロック様とローラン様にお伝えすると、やはり声楽会の事をお話に行くらしい。が、私は誘われたけれど行くのはやめておいた。

 ジャスミン様がバロック様を想っているのなら、ローラン様の想いもあるからそこは止められなかったけれど……私はお邪魔する訳にはいかない。

 本当は私が真っ先にお見舞いに行きたいけれど、ローラン様はすぐにでも行きたいだろうし、バロック様もきっとそれに付き合うはずだ。

 お見舞いのお花とお菓子を贈って、私は天使と天使の恋の邪魔をしないように、お見舞いに行くと聞いた日は部屋に閉じこもった。

 なぜか、朝からご飯が食べられなかった。
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