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56話
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母さんやシャーリーさん達は僕達3人を置いて帰路についた。
そう──今は僕、フィア、レラの3人しかいない。
昨日──
合格を貰った後、普段食べないような料理を食べながら盛大に僕達は祝われた。
それはもう揉みくちゃだった。母さんなんか涙を流しながら喜んでいた。
我が子の成長は嬉しいものなのかもしれない。
試験はもう少しというか──めっちゃ手加減して欲しかったけどね!
その時に母さんと──
「明日から最終試験よ。頑張りなさい」
「え?」
「だから最終試験よ」
「いや、試験終わったじゃん! 今日のあれが最終試験じゃないの?!」
「あれはただの試験よ」
──というやり取りがあった。
死ぬ思いをするような試験が最終試験じゃ無い事に顔が引き攣った記憶がある。
ちなみに朝起きたら既に母さん達はいなかった。昨日のパーティがお別れ会だったのだろう。
最終試験の内容は僕達3人だけで冒険者本部の学園まで辿り着く事だ。
特別な通行許可証や食料、テントなど旅に必要な物一式は渡されている。
冒険者本部のある国は隣らしいし、徒歩なら3ヶ月ぐらいで到着すると聞いている。試験の受付けもそれぐらいにあるらしいから必ず間に合うようにと強く言われている。
これも冒険者をするなら経験しておけとの事だ。シャーリーさんからは座学で必要な知識、母さんからは実際に起こり得る事を最悪の想定でやらされていた。旅は大丈夫だろう。
それにアールスレイ王国も後ろ盾になってくれるし、母さんやシャーリーさんのネームバリューもある。
学園で虐められる事もないだろう! たぶん!
心配と言えば学園の生活ぐらいだ……上手く立ち回らないと……。
入学試験は派手にいくのは母さんとの約束で決まっている。間違いなく目立つだろう。
作戦はもう決めている──
『あれ? 僕、何かやっちゃいました?』
──作戦だッ!
ラノベとかであった無自覚最強系主人公を演じようじゃないか!
まぁ……ある程度、無茶をしても母さんの子供だからという理由でなんとかなる気がしている。
要は入学してから僕が大先生を使わなければ問題ないはずだ。
入学してからは目立たず、ひっそりと生きるッ!
さて、僕達の準備も先程──完了したッ!
「──レラ、フィアッ! 出発しようッ! さっさと到着して母さん達を驚かせてあげようッ!」
確か誰か知ってる人が待っててくれると言っていた。驚かせてあげたいなッ!
「そうねッ! 私達がちゃんと出来るってとこ見せなきゃねッ!」
レラは拳を握り込みながら応える。
「はいッ! 私もロイ君やレラのお陰で自信がつきましたッ! これからもよろしくお願いしますね!」
フィアも両手を胸に当ててそう言う。
「さぁ、出発だッ! 絶対に学園まで辿り着くぞーーーッ!」
「「はいッ!」」
僕達は街の外まで出て、お世話になった街に一礼する──
顔を上げると微かに領主さんが兵士を引き連れている姿が見えた。隣にはレラの両親、その後ろには冒険者や街の人達までいた。
レラの両親が見送りに来ないのが不思議だったけど、皆で見送る為に来なかったんだなとこの時わかった。
領主さんが声を出しているので聞き取る為に【聴覚】を上げる。
「君達のお陰で──我々は生き残ったッ! 私達は感謝しているッ! ここは君達の家だッ! 我々はいつでも帰りを待っているッ! 街の小さな英雄達よッ! この先──幸が多からん事を──やれッ!」
魔法使いの人達が前世の花火のように空に向かって色々な属性魔法を放っていく──
「「わぁー」」
フィアとレラはその光景に感嘆の声を上げる。
「どうやら僕達の門出を祝ってくれてるみたいだよ?」
「へぇ~粋な事するじゃないッ! この間の事は許してやるわ! あっ、お母さん達も手を振ってくれてるわッ! またね~ッ!」
領主さんはレラから許されたみたいだった。
そして、自分の両親に向かって手を振るレラは涙を浮かべている。
「こういうのって良いですよね……私もこの街の家族の一員になったみたいです」
レラと一緒に嬉しそうに手を振るフィアも嬉しいようだ。
「そうだね。皆が僕達を応援してくれていると思うと勇気が湧いてくるね!」
いや~、応援してもらえるのって本当ありがたいよね!
例え──
領主さんが脅されてやらされているとしてもだ。
2人は気付いてないけど、僕は【直感】でわかる。
母さんが出発する前に何か指図をしたのだろう……兵士と冒険者の人達は顔が若干引き攣っているし……。
乗せられている街の人達は素直に応援してくれるのは嬉しく感じるけどね。
いやー、正直言うと──
領主邸で母さん達が抑止しなかったら僕はラノベとかである追放系主人公に真っしぐらだった気がする。
冒険者や街の人に変な噂をたてられて、暴力を振るわれる未来もあったのかなと思うと複雑だな……。
まぁ、そうはならなかったし──こうやって追放じゃなくて見送って貰えて気分は悪くないからいいけどね!
フラグは折ってなんぼだッ!
それにしても──
親の力は偉大だなッ!
これからは母さんは干渉出来ない。自分でなんとかしないとダメだ。
そして、学園じゃ──
どんな事があっても2人を守るッ! 母さん達と約束したし、僕自身も元々そのつもりだ。
戦闘だけじゃなく──
全部まとめて僕が守ってやるさッ!
なーんて、おこがましいかな?
でも──
母さん、シャーリーさん、姉さん、師匠、ユラさん、リリアさん──そして、街の皆が応援してくれている。
だから、少しぐらい調子に乗ってもいいよね?
僕は『アイギス』に『ブレス』をセットして盾を空に向けて具現化し──放つ。
すると──
一条の火柱が立ち上がり、大歓声が巻き起こる──
「どうしたんですか? 急に」
「そうよ! びっくりしたじゃないッ! ──これって、どうやってるの!? ロイってばこんな魔法は使えないじゃない!」
2人が僕の行動に驚いて聞いてくる。
「ははっ、ごめんね。これは──腕輪の力だよ。そして、打ち上げた理由は──僕達は必ず立派な冒険者になる事と──この気持ちを忘れないようにする為だよ。後は皆にお礼の意味も込めてかな!」
「なるほど。では私も──」
「へぇ~、なら私も──」
2人は手を胸の前で組み、願いを込めるように目を瞑る──
さぁ──
ここが僕達の出発地点だッ!
旅も初めてで楽しみだなッ!
入学したら友達作るぞぉ~ッ!
──うん、なんか打ち切り最終回みたいな雰囲気だなッ!
そう──今は僕、フィア、レラの3人しかいない。
昨日──
合格を貰った後、普段食べないような料理を食べながら盛大に僕達は祝われた。
それはもう揉みくちゃだった。母さんなんか涙を流しながら喜んでいた。
我が子の成長は嬉しいものなのかもしれない。
試験はもう少しというか──めっちゃ手加減して欲しかったけどね!
その時に母さんと──
「明日から最終試験よ。頑張りなさい」
「え?」
「だから最終試験よ」
「いや、試験終わったじゃん! 今日のあれが最終試験じゃないの?!」
「あれはただの試験よ」
──というやり取りがあった。
死ぬ思いをするような試験が最終試験じゃ無い事に顔が引き攣った記憶がある。
ちなみに朝起きたら既に母さん達はいなかった。昨日のパーティがお別れ会だったのだろう。
最終試験の内容は僕達3人だけで冒険者本部の学園まで辿り着く事だ。
特別な通行許可証や食料、テントなど旅に必要な物一式は渡されている。
冒険者本部のある国は隣らしいし、徒歩なら3ヶ月ぐらいで到着すると聞いている。試験の受付けもそれぐらいにあるらしいから必ず間に合うようにと強く言われている。
これも冒険者をするなら経験しておけとの事だ。シャーリーさんからは座学で必要な知識、母さんからは実際に起こり得る事を最悪の想定でやらされていた。旅は大丈夫だろう。
それにアールスレイ王国も後ろ盾になってくれるし、母さんやシャーリーさんのネームバリューもある。
学園で虐められる事もないだろう! たぶん!
心配と言えば学園の生活ぐらいだ……上手く立ち回らないと……。
入学試験は派手にいくのは母さんとの約束で決まっている。間違いなく目立つだろう。
作戦はもう決めている──
『あれ? 僕、何かやっちゃいました?』
──作戦だッ!
ラノベとかであった無自覚最強系主人公を演じようじゃないか!
まぁ……ある程度、無茶をしても母さんの子供だからという理由でなんとかなる気がしている。
要は入学してから僕が大先生を使わなければ問題ないはずだ。
入学してからは目立たず、ひっそりと生きるッ!
さて、僕達の準備も先程──完了したッ!
「──レラ、フィアッ! 出発しようッ! さっさと到着して母さん達を驚かせてあげようッ!」
確か誰か知ってる人が待っててくれると言っていた。驚かせてあげたいなッ!
「そうねッ! 私達がちゃんと出来るってとこ見せなきゃねッ!」
レラは拳を握り込みながら応える。
「はいッ! 私もロイ君やレラのお陰で自信がつきましたッ! これからもよろしくお願いしますね!」
フィアも両手を胸に当ててそう言う。
「さぁ、出発だッ! 絶対に学園まで辿り着くぞーーーッ!」
「「はいッ!」」
僕達は街の外まで出て、お世話になった街に一礼する──
顔を上げると微かに領主さんが兵士を引き連れている姿が見えた。隣にはレラの両親、その後ろには冒険者や街の人達までいた。
レラの両親が見送りに来ないのが不思議だったけど、皆で見送る為に来なかったんだなとこの時わかった。
領主さんが声を出しているので聞き取る為に【聴覚】を上げる。
「君達のお陰で──我々は生き残ったッ! 私達は感謝しているッ! ここは君達の家だッ! 我々はいつでも帰りを待っているッ! 街の小さな英雄達よッ! この先──幸が多からん事を──やれッ!」
魔法使いの人達が前世の花火のように空に向かって色々な属性魔法を放っていく──
「「わぁー」」
フィアとレラはその光景に感嘆の声を上げる。
「どうやら僕達の門出を祝ってくれてるみたいだよ?」
「へぇ~粋な事するじゃないッ! この間の事は許してやるわ! あっ、お母さん達も手を振ってくれてるわッ! またね~ッ!」
領主さんはレラから許されたみたいだった。
そして、自分の両親に向かって手を振るレラは涙を浮かべている。
「こういうのって良いですよね……私もこの街の家族の一員になったみたいです」
レラと一緒に嬉しそうに手を振るフィアも嬉しいようだ。
「そうだね。皆が僕達を応援してくれていると思うと勇気が湧いてくるね!」
いや~、応援してもらえるのって本当ありがたいよね!
例え──
領主さんが脅されてやらされているとしてもだ。
2人は気付いてないけど、僕は【直感】でわかる。
母さんが出発する前に何か指図をしたのだろう……兵士と冒険者の人達は顔が若干引き攣っているし……。
乗せられている街の人達は素直に応援してくれるのは嬉しく感じるけどね。
いやー、正直言うと──
領主邸で母さん達が抑止しなかったら僕はラノベとかである追放系主人公に真っしぐらだった気がする。
冒険者や街の人に変な噂をたてられて、暴力を振るわれる未来もあったのかなと思うと複雑だな……。
まぁ、そうはならなかったし──こうやって追放じゃなくて見送って貰えて気分は悪くないからいいけどね!
フラグは折ってなんぼだッ!
それにしても──
親の力は偉大だなッ!
これからは母さんは干渉出来ない。自分でなんとかしないとダメだ。
そして、学園じゃ──
どんな事があっても2人を守るッ! 母さん達と約束したし、僕自身も元々そのつもりだ。
戦闘だけじゃなく──
全部まとめて僕が守ってやるさッ!
なーんて、おこがましいかな?
でも──
母さん、シャーリーさん、姉さん、師匠、ユラさん、リリアさん──そして、街の皆が応援してくれている。
だから、少しぐらい調子に乗ってもいいよね?
僕は『アイギス』に『ブレス』をセットして盾を空に向けて具現化し──放つ。
すると──
一条の火柱が立ち上がり、大歓声が巻き起こる──
「どうしたんですか? 急に」
「そうよ! びっくりしたじゃないッ! ──これって、どうやってるの!? ロイってばこんな魔法は使えないじゃない!」
2人が僕の行動に驚いて聞いてくる。
「ははっ、ごめんね。これは──腕輪の力だよ。そして、打ち上げた理由は──僕達は必ず立派な冒険者になる事と──この気持ちを忘れないようにする為だよ。後は皆にお礼の意味も込めてかな!」
「なるほど。では私も──」
「へぇ~、なら私も──」
2人は手を胸の前で組み、願いを込めるように目を瞑る──
さぁ──
ここが僕達の出発地点だッ!
旅も初めてで楽しみだなッ!
入学したら友達作るぞぉ~ッ!
──うん、なんか打ち切り最終回みたいな雰囲気だなッ!
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