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防音

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やがて閉じ込められていた者たちが気が付いたのか、開かない扉に体当たりを始めた。
しかも何か叫んでいるようだが、よほど頑丈に作られているのか耳を澄ませても何を言っているかわからない。
「ああ~……なるほど。だからこの学園内はいつも静かなのね?」
「特にこの部屋はダンスの練習をするために防音が完璧だ。時に四重奏カルテットなどを招いて、生演奏で指導をつけるからな。音楽が微かに聞こえるだけで踊り出す者は多い」
社交界に踊りは付き物だから、隙あらば練習しようとする者は生徒教師問わずにいるらしい。
個人レッスンが可能なこの中程度の舞踏室は授業がない者や放課後には時間のある者たちが予約制で使用されており、自分たちの家でお抱えの楽団を連れてくる場合もある。
だいたい生まれた時から毎年シーズンになれば舞踏会が自宅で開かれ、早く寝かしつけられるとはいえ大人たちの浮かれた雰囲気や優れた音楽団が奏でる音楽に触れるなど、高位貴族になればなるほどよちよち歩きの頃から素晴らしい機会に恵まれているのだ。
前世ではそんな優雅な文化は一般家庭より裕福だった生まれの詩音でも経験はなく、現世では自分の身を守るのに父娘共に精一杯だったため、羨ましいことこの上ない。
だからといって音楽が嫌いなわけではなく、できれば踊るよりライブやコンサートのように演者を楽しみたいのだが。
「……そうか、我が家ではルエナのことがあってから特に夜会も開かれていないしな……母上に小規模の舞踏会を……」
「えっ?!いやいやいやいやいやいやいやっ?!何でアタシが芸術文化でダンスを選択しなかったと思ってるの?むしろ踊ってる人たちを描く方がいいよ?」
「いや……しかしリズム感は悪くないだろう?」
「リズム感……はともかく、あのダンスに伴う動きが、ねぇ……」
足を出して、引いて、横に動いて、回って、顔を横に向けて、上体を反らして、腰を捻って、持ち上げられて、タンタンカツカツクルクル──
「腕を引っ張られて、放されて、掴まれて、バランスを崩したら無理やり立ち上げられて……関節外れるっつーの!」
「どれだけ下手くそなんだ、その男……」
イストフが呆れたように言うが、残念ながらその下手くそは幼き日のリオンである。
王家主催の舞踏会でお披露目されたリオンが、その時に踊っていた大人たちの見よう見まねでシーナを振り回した時にいたアルベールは、おかしな方向に腕を捻らされたシーナが危うく脱臼しそうになったことをよく覚えていた。


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