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薄幸

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シーナはリオンの言葉を聞いて、自分の前にいるアルベールに視線を投げる。
「……今現在、王族の数はそう多くない。特に先代王から二代ほど遡って、側室もいらっしゃるのにお子の数は十人にも満たない王もいた。現国王陛下には妹君がふたりおられるが、上の妹君は隣国へ嫁がれ、下の妹君はティアム公爵家へと嫁がれた」
「ん?ティアム?」
「ああ。もっとも妹君は現ティアム公爵当主ではなく、先代公爵当主の弟と婚姻したのだが……お子に恵まれなかったと聞いた」
「そう言えばそうだったな……叔母上は元々そんなに体が丈夫じゃなくて、庭園の木陰にいるよりも図書館の一番日が当たらない奥で本を読むのが好きとか、ダンスをするくらいなら刺繍をして一日中カーテンを閉めた部屋にいるとか……」
「何ソレ?!わざわざ自分から不健康になりに行ってるの?」
「あ~…うん……ま、まぁ……健康的な肌色をわざわざ真っ白な粉で塗り隠している令嬢もいるくらいだからな。叔母上もきっとそういうのを好む男性に見初められたかったんじゃないかと……」
「えっ……いやそれきっとかなり~なナルシスト・レディだと思うよ?『不健康なほどの色白で、三歩歩いたら骨折しそうな儚そうな自分綺麗~』みたいな?」
「ウッ……」
確かにこの時代遅れと認識しそうな世界では、貴族の女性が日焼けすることをよしとはしていない。
現にルエナだけでなくエリー嬢もかなり色が白く、真夏の日差しのもとにいればたちまち火ぶくれが出来上がりそうなほどの柔肌に違いないだろう。
そして指摘するシーナもゲーム補正なのか肌は傷ひとつなくつるりと綺麗である。
幼少期に男の子の格好をさせられたとはいえ肌の露出はかなり抑えられ、髪色がわからないようにと木炭で汚された上に帽子を被らされて顔を隠されていたため、実際のところ日焼けらしい日焼けはしたことがない。
だがそんな少女たちと比べても、リオンの記憶の中にある叔母は棒のように細く、幽霊のように白く、食事をしているのを見たことすらなく──
「そりゃあ、月の物も無くなるわな」
ボソリと呟いた王太子の言葉に、腑に落ちたと頷くシーナ以外の四人はギョッとした顔をした。


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