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変化

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翌日にはふたりの令嬢の居室はそれぞれ、シーナ嬢の助言の通りに変化が加わった。

年上のルエナ嬢の部屋には茶色ばかりの味気ない家具の上に象牙色のレース編みがいくつも置かれ、カーテンも同じく象牙色の生地に金糸で刺繍が施された物に替えられた。
それを纏めるタッセルは、赤とオレンジの組み紐である。
ベッドにかけられた天蓋は、薄い桃色に替えられた。

年下のエリー嬢の部屋は様々な花が束ねられたサークルが中心にある緑色の絨毯に変更された。
カーテンはルエナ嬢の部屋と同じ物だが束ねるタッセルは柔らかい薄紫と薄黄色の組み紐である。
ベッドにかけられた天蓋はキラキラと金糸が星の形に刺繍された白い物。
家具はやや遅れて白地に花が綺麗に咲いた、子供らしい物に変更された。

「……まぁっ……ああ、本当に女の子が来たのねぇ……」
そう感嘆の溜息をつくのは、ルエナの母であるディーファン公爵夫人である。
本当はルエナにこそこういう部屋を与えたかったに違いないが、幼い令嬢はどんな可愛らしい物を与えても喜ばず、女家庭教師の言うままに社交界デビューどころか結婚した貴族女性でも好まないような茶色く昏い配色した部屋を与えてしまった。
特にその部屋に対して喜ぶわけでもなく、かといって嫌がるわけでもなく、女家庭教師に与えられるお茶を飲んではぼぅとし、そうでない時は攻撃的になる令嬢に対して、大人たちは為す術なく放置していたのである。

それを何度後悔したことか──

だが今やっとルエナも年相応の可愛らしい装飾を見て恥ずかし気に笑い、エリー嬢は濃淡は違えど自室に使われていたのと同じ色であってももっと目に優しい色の使われた部屋に、頬を上気させて喜んでくれる。
やはり女児はこうでなければならない。
アルベールはやや離れたところで女性たちそれぞれの喜び方を眺め、何となく複雑な気持ちで佇んでいる。
「……あのさぁ」
「うん?」
「何か……うん……あのさぁ……ひっかかってたんだけど」
「うん」
シーナはこそっと誰にも聞こえないように、リオンに耳打ちをする。
「いや、エリーちゃんって………」
「うん。確か公式…っていうか、ゲームの後に作られた本作小説から、ルエナ闇落ち各短編の中で一番支持された『イストフ編』に出てきたな」
「………マジかぁ~~~~~~!!やっぱりぃ!!」
シーナは声を潜めることも忘れ、思わず大声で叫んで仰け反った。


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