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賢者、目的を果たす。

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ガチンッと鍵が掛かるような音がして、ケヴィンたちが退けた魔獣たちがうっすらと暗い色の壁に閉じ込められた。
それは目の前だけでなく、空を飛ぶ魔鳥すらもその支配に囚われる。
後ろで騒めく気配が伝わってくるが、そちらを振り返るよりもまずは目の前の厄介ごとを片付けることにしよう。
軽く視線を巡らせるが、ケヴィンたちの見事な囲い込みのおかげで、私があらかじめ仕掛けておいた複数魔法陣の有効範囲内にすべての魔獣たちが収まっているのだ。
「さすがですね。『勇者』という者たちは、本当にすごい」
彼らの名を穢さぬよう、私も最善を尽くすことにしよう。
「では……────」
おそらく今では誰も読むことのない古代語を正しく発音し、私は魔獣を閉じ込めている空間内部の容積を少しだけ圧縮した。
少し空間が動いたせいで危機感を感じたのか、バラバラに結界を破ろうとぶつかっていた魔獣たちが、一斉に壁や天井に突進する。
だが私の作った結界はそのような衝撃に破れることなく、わずかに波紋を作るがたわみもしない。

パンッ

そんな破裂音が聞こえた気がする。

いや──気のせいだ。
私の作った空間結界はさらに強度を増し、衝撃も通さないが、さらに音も温度も完全に周囲から遮断している。
しかし小さい魔鳥や魔獣が1つ2つと弾けていくと、チラリと何かが煌めいた。

と思うと、あっという間に業火が生まれる──黒く激しい業火が。


「……すごい………」
結界を解除したカウラセンが背後から近付いてきたらしく、呆然と呟く声が聞こえた。
完全に封鎖空間となったため、もう私が魔法陣を発動するための魔力を通す必要はない。
それは中の魔獣たちが燃料となり、燃え尽き魔素毒が消えるまで空間結界は私の魔法陣に魔力を供給するためそのまま維持されるためである。
この循環魔術文言を組み込むことを思いついた時、我ながら冴えていると思った。
いや、実際は最初に仕掛けた魔獣の圧縮と発火がいい実験材料となってくれたのだが。
「うわぁ……あの時よりも激しいねぇ」
「やっぱり燃料の違いなのかな?」
ラダとケヴィンが呑気に歩み寄り、色とりどりに煌めく光とそれよりも何倍もの容量で空間内を埋め尽くす黒い炎を眺めて話した。
「アレってどれくらい燃えるんでしょうか……」
「さあ……?あの時は、どれくらい……?」
「確か1晩中だったか?いや、明け方には鎮火していたか……」
ミウとデューンも気軽にこちらにやってきた。
国軍兵たちは激しく燃え盛る様子を見ているだけで、カウラセンの後ろでまだ固まっている。
その様子を見て、私はまあ動かないでいてくれるならいいかと視線を戻した。
「そうでしたね。あの時は討伐後の魔獣たちでしたから、すぐに気化しましたけど……これは誘爆しながら同時に討伐も行っているようなものだし……生命力の強い魔獣が混じっているとしたら、完全に燃え尽きるまではだいぶ時間がかかると思うけれど……」
それはそれでどれくらいの燃焼時間なのか、いろいろと研究してみたい気持ちも湧き上がる。
ついでに言えばどんな魔獣たちがいたのかも知りたいところだが、燃え尽きた後ではわからないだろうと考えた。
だからといって中途半端に結界を解除してしまっては、魔獣たちの毛や肉、臓腑、骨などにもあるはずの魔素毒が広まる可能性もあるため、私の好奇心の赴くままの安易な行動はできないのだ。


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