VS お義母さん

沢麻

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噂の布おむつ信仰ってこれ?

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 和馬は三人兄妹の長男である。結婚の挨拶をしに今は燃えてしまった和馬の実家を訪れた時から、杏奈は道子を警戒していた。今までの彼氏のお母さんとは合うことが多く、本当の親子さながら仲良くなった経験もあるのだが、道子には異質な空気を感じた。まずおかしいなと思ったのは、和馬を溺愛していることを隠さず、「和馬は頭がいいから」「顔もなかなかいいから」などと言うところだ。更に「うちの長男だから」「うちの跡取りだから」「嫁に来てくれて」などと言う。きっと道子はそれを家制度的な意味で言ったのではなく、「うちの一番上の男の子だから」「結婚してくれて」という意味合いなのだろうと察しはつくが、それにしてもそういう言葉に変換して喋る道子はやはり杏奈から見ると面白くない。ただ、名字は和馬の名字である「茅森」にすることは決まっていた。友達が続々と結婚して改姓する中、杏奈は取り残されて結婚ブームに乗れてない感があったため焦っていたのだ。更に杏奈は「伊藤」という物凄くありふれた名字で、四文字の響きに憧れていたというのもある。だけど自分は和馬と個人的に結婚するのであって、茅森家と結婚するわけでも茅森家の一員になるわけでもないという意識だった。
 結婚する前に何度か顔を合わせたが、その度に道子への警戒心は増大するばかりだった。「うちの長女は二十五にもなって結婚していなくて遅いわ」「あら女の子なのに大学も出ているなんてすごいわね」「杏奈さん結婚してもお勤めするの? 偉いわねぇ」……二十五で結婚とか早い方だから。大学なんて男女関係ないから。結婚と仕事関係ないから。
 結論として道子とは合わない。道子は世の中の流れを何も把握せずに、ずっと茅森家の中で家事だけやって生きてきたから育てられてきた時の自身の親の価値観が抜けないのだ。そういう人もいることは知っていた。でもまぁいい。一緒に暮らすわけでも近くに住んでいるわけでもないし、それより結婚のチャンスを逃すものか。当時はそう思ったのだ。
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