VS お義母さん

沢麻

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スマホ育児って何? 今の子育てはこんなに手抜きなの?

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 杏奈はスマホを片手に台所に立った。赤ちゃんは道子が見ることになったが、なんと泣かれた。いつも杏奈が何をするでもなくスマホ片手にそばに居るときは大人しい子なのに、一体これは。道子が抱いても歌っても駄目。しかも泣き声が大きく大変である。
 「杏奈さん泣くんだけど」
 「スマホで泣き止む音楽とかかけてください」
 「スマホあなたが使ってるじゃない」
 「お義母さんのは」
 「ガラケーなのよ」
 杏奈は舌打ちしたように見えたが、すぐに料理を中断し「るりちゃーん」とやってきて、おんぶ紐を装着し赤ちゃんを背中に乗せてまた台所へ戻って言った。杏奈におんぶされると赤ちゃんも泣き止んだ。
 道子は手持ちぶさたになってしまった。ぽつんと居間に取り残され、テレビを見るしかなかった。なんだろう、一人暮らしで寂しさには慣れていたはずなのに。和馬や杏奈と住めるから、少し楽しいのではないかと期待していた自分に気付いた。
 道子は立ち上がり台所へ向かった。杏奈がぎょっとした顔でこちらを見て、「なんですか?」と言う。
 「何を作ってるのか見てもいいかしら」
 「えっ気が散るんですけど。まぁ、いいですけど」
 杏奈はどうやらひき肉を使って何かを作ろうとしているようだが、玉ねぎを切るときの手付きが今にも指を切りそうな感じで道子は口を出さずにはいられない。しかし「この持ち方しかできないんで」と言われてしまう。そして随所でスマホを確認しながら作業。何だかはらはらする。
 やや暫くしてひき肉のカレーのようなものが出来た。杏奈は途中で玉ねぎや人参を取り分けていたが、それは赤ちゃんのものにするらしく小分けしている。
 「あら杏奈さん、すごく上手ね。スマホもなかなかなものね」
 杏奈が喜ぶかと思って、道子は声をかけた。あまり反応がよくないので、道子は黙って洗い物に取りかかる。杏奈が「ありがとうございます」と言う。そうか、洗ってあげればいいのだ。
 「お義母さん」
 「え? 何かしら」
 「新しいおうちを探してください」
 「え!」
 「布団持ってっていいですから、お願いします」
 
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