VS お義母さん

沢麻

文字の大きさ
22 / 34
色んな好みが違う!朝飯和or洋だけじゃない!

しおりを挟む
 ショッピングモールに行かない日は、片岡さんに聞いた波多野の自宅近辺を仕事の後散歩して帰る。どのようなところに住んでいるのか気になる。波多野はまだまだ仕事中なので、こんなところに来るわけもないので気楽だ。
 最近杏奈に無駄遣いを咎められたことを、道子は一応気にしていた。確かに、少し色々買いすぎたかも。給料が嬉しくて、余計なことをしてしまったようだ。
 そういう杏奈も、復帰に向けて色々買い始めていて家にやたら宅急便が届く。そろそろ保育園の合否が出るだの、送り迎えは和馬だ杏奈だと連日騒いでいる。そんなことを夫にやらせるなんて、と思うし、だいたい和馬は全然瑠璃夏と関わらない生活を送っている。やはりここは道子の出番がくるかもしれない。杏奈は自分以外の人間が瑠璃夏に関わるのを拒んでいる印象だ。それなのにワンオペだなんだと騒ぐとは勝手な嫁だ。そうだ。もっと道子が関わるべきなのだ。
 「ただいま、杏奈さん」
 いくら気に入らなくたって、子育ての初心者。息子の妻。道子が手を差しのべないでどうする。
 「お昼にするわね」
 「あ、もう食べちゃいました」
 「えっ!」
 いつも岩のように動かない癖に、道子が帰ってくる前にちゃっかり食べてしまうとは。まぁ確かに最近は事務所の掃除のあと買い物か波多野の自宅調査で帰りが昼を過ぎるが。
 「あ、あらそう。何を食べたの」
 「あれ」
 見ると宅配ピザと思われる箱の残骸が食卓に置きっぱなしになっている。
 「少し残ってますけど」
 「?」
 ……。あ、道子の分を取っておいたよ、ということなのだろうか。道子は恐る恐る箱の中を見た。道子はピザなど六十余年の人生で数えるほどしか食べたことがない。昼は数日前にこっそり買ってきた鮭でも焼こうと思っていたのに、しかし杏奈の好意を無下にはできない。カピカピに乾いたチーズの下に、赤やら褐色やらの具材が垣間見れるその三角形の食べ物を、道子は覚悟を決めて食べることにした。
 「……」
 うーん、硬い。味が濃い。脂っこい。口の周りが汚れる。そのあたりにぶん投げてあったレシートをチラ見すると二枚で五千円近くかかっている。これは金の無駄である。
 「あなたこういうのが好きなの?」
 「はぁ、特別好きってわけじゃないけど、基本的に脂っこくて味の濃いものが好きですよね私」
 「……そう。とっておいてくれてありがとう。あまり食べなれてないけど、いい経験になったわ。でもね、まだ母乳をあげてるわけだし、こういうのはたまににしてね」
 杏奈がキッとこちらを睨んだ。怒らせちゃったかしらと、慌てて「なかなかおいしいわねぇ」とか心にもないことを呟いてフォローを試みた。しかしそれは無駄だった。
  「ところでお義母さんは、どこかに部屋を借りて一人で暮らしたいとかいう気分にはならないですかね? 他人の家に居候するなんてストレスでしょう? 申請すれば生活保護だって貰えるかもしれないし、意外といけるんじゃないかな」
 ……。また他人を馬鹿にしたことを……。
 「他人の家じゃないわよ。和馬は私の息子だし」
 「息子ったって結婚してるし」
 「とにかくあなたももうすぐ復帰なんだから、絶対大人の手か多いほうがいいに決まってるでしょ」
 もう出ていけというのは杏奈の口癖と思うようにしたら、道子はこの不毛な口喧嘩も苦ではないのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...