VS お義母さん

沢麻

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色んな好みが違う!朝飯和or洋だけじゃない!

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 道子が来てからというもの、和馬が前よりいっそう家のことをしなくなっていた。前は洗い物やごみ捨てなんかは言わずともやってくれていたのに、最近道子にすっかり業務を奪われて、それに馴染んでいる。やはり道子がいることはマイナスにしかならない。生活費は危うく三千円になるところだったし、五千円でも安いのになんて奴だ。
 なんとか彼女が出ていきたくなるように仕向けられないだろうか。そうだ、うちが経済的に困ったふりをするというのはどうだろう。確かにネットスーパーは割高だが、とりあえず余計な出費を抑えて「貧乏だから買えない」みたいなアピールをすれば申し訳なくなるのではないだろうか。
 
 「ただいま、杏奈さん」
 道子が仕事から帰って来た。生き生きと輝いている。おのれ。
 「今日はごはん食べた?」
 「いえ、まだです。それが最近光熱費なんかが高くなってしまって、この間のピザは最後の晩餐かなーっていう感じです」
 杏奈は計画通り貧乏アピールを始めた。
 「るりちゃんの保育園グッズなんかも早くそろえなきゃと思ったら、なんだか余計なものは買えないなーって思っちゃって……」
 「あらあら……じゃあとりあえず用意するわね」
 道子は手早く鮭を焼き、味噌汁をこしらえてひじきとともに食卓に並べた。チッ。魚。和食。ひじき。うんざりだ。
 「……杏奈さん、私も若い頃は貧乏したものよ」
 「はぁ」
 道子は神妙な面持ちで続けた。
 「あなたはお金持ちなのかと思って言わなかったけれど、無駄な電気を使いすぎだわ。いない部屋や廊下に電気がつけっぱなしだったり、使わない家電のコンセントがさしっぱなし。あれをやめれば少し光熱費は節約できるわよ」
 「え?」
 「それからあなたが料理するときの野菜くずね。あれ食べれるところもけっこう棄ててるわ。もったいない」
 「……」
 「あとはそうねー、シャワーのお湯とかかしらね。節約できそうなのは」
 「……」
 なんと道子は親身になって節約術を教えてくるではないか。違うんだ。そーゆー情報が欲しいんじゃなくて。自分が余計だという結論にどうして辿り着かんのか。
 「頑張って節約していきましょうね」
 「はぁ」
 励まされたくらいにして。
 
 そして翌日、道子は「節水」と書いた蛇口に取り付けるグッズや、「節電」と書いた電球などを買って帰って来た。そして暇さえあれば常備菜作りに励んだ。道子が作る食事はより一層質素なものになった。杏奈がうわー、と思っていると、道子は杏奈の方をみて、「頑張りましょ」と念を送っているかのような顔をする。
 なんだかまた変な方向に行ってしまった。悪い人ではないのだが、本当に杏奈と噛み合わない。
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