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美穂(結ママ)①
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美穂は小さい頃から割となんでも器用にできるタイプだった。だから結が何事もマイペースなことに苛立つ。自分のように、何でもできる子供になると思っていたのに、寝返りをしない、離乳食を食べないから始まり、歩いたのも一歳半、言葉も遅かった。小柄で、年齢より小さく見える。大人しくて、主張しないタイプ。仲良しの万恵ちゃんなどは、大柄でよく食べ、よく笑い、おしゃべりだ。あんな風だったらよかったのに。結はしかし、美穂の子供であるが美穂ではないのだった。結のせいにするのは理不尽だが、美穂は自分がどんどん壊れていくのを感じていた。
スマホが振動したので確認した。ママ友グループラインだった。
《礼雄ママ 今月の予定教えてくださーい。どこで集まろう? またうちにしますかー?》
一層気分が悪くなった。美穂は何故かこのママ友グループに入れられているが、合わなくてしょうがないのである。四家族が入っているが、女子は結だけだしそろそろ誘わないで欲しいのに、いつまでも声がかかる。二歳くらいまでは男女で遊んでも楽しかった。しかし二歳を超えると男子たちは戦いの遊びばかりするようになり結は入っていけないのに加え、グループの母親たちは子供に昼寝させることを止め、眠くてぐずぐずになった子供たちをお菓子で繋ぎ止めていつまでもだらだらと女子会をするようになった。美穂は結に、「お菓子は三時」と言って育ててきたので、常に大袋が開けられている状態は嫌だった。しかし他の子供たちは気にせずお菓子を食べながら遊んで、また食べて、を繰り返す。結に至っては普段見慣れないお菓子がたくさんあるので、遊びもしないでずーっと食べ続け、当然夕飯はほとんど食べられずに必ず翌日お腹を壊す。今月こそは何か言い訳をして不参加にしようか。しかし美穂も、孤独な子育てをしている身なので、他のママ達に混ざって他の家の情報収集や噂話を聞きたいという気もする、複雑なところなのだ。
グループラインは刻々と話が進み、《結ちゃんちは?》とついに名指しで訊かれた。言い訳を考えているうちに《また土日休みだよね? そしたら次の日曜日にしよう》と決定されてしまった。仕方なく了解のスタンプを送った。
野蛮な男子たちではなく女子と交流できないものだろうか。この四家族のグループは、保育園にゼロ歳児からいるメンバーなのである。最初は六人でのスタートで、途中から続々と新しい子が入園し一年で倍の十二人になった。それからも入退園、転園などがあり現在のクラスは十七人だ。最初の六人のうち、グループに入っていないのはさくらちゃんと万恵ちゃんの女子たちである。さくらちゃんは当時同じ園に二人の姉がいて、キャリアウーマン臭がぷんぷんするお母さんとも話しづらいとのことでボスママである礼雄のママの敦子は声をかけなかった。万恵ちゃんの家は送りがお父さんなので誘わなかったそうだ。特に万恵ちゃんと結は仲良しなので、なんとか万恵ちゃんとプライベートでも仲良くなりたい。同じ女の子の親なら、話も合うのではないだろうか。万恵ちゃんのお母さんは行事の時しか見たことがないが、小柄で可愛くて優しい雰囲気の人だった。下品な敦子たちとは違う、仲良くなりたいタイプだった。残念なことに彼女とは園でほとんど会えない。
結局ハンバーグはやめ、ドライカレーになった。結が食べるようにと、思いっきり甘くしたカレーだ。
「おいしい?」
「うん」
結は食が細い。多分残すと思う。でもおいしいと言っているではないか、と自分を励ます。雅教はまだ帰ってこない。
スマホが振動したので確認した。ママ友グループラインだった。
《礼雄ママ 今月の予定教えてくださーい。どこで集まろう? またうちにしますかー?》
一層気分が悪くなった。美穂は何故かこのママ友グループに入れられているが、合わなくてしょうがないのである。四家族が入っているが、女子は結だけだしそろそろ誘わないで欲しいのに、いつまでも声がかかる。二歳くらいまでは男女で遊んでも楽しかった。しかし二歳を超えると男子たちは戦いの遊びばかりするようになり結は入っていけないのに加え、グループの母親たちは子供に昼寝させることを止め、眠くてぐずぐずになった子供たちをお菓子で繋ぎ止めていつまでもだらだらと女子会をするようになった。美穂は結に、「お菓子は三時」と言って育ててきたので、常に大袋が開けられている状態は嫌だった。しかし他の子供たちは気にせずお菓子を食べながら遊んで、また食べて、を繰り返す。結に至っては普段見慣れないお菓子がたくさんあるので、遊びもしないでずーっと食べ続け、当然夕飯はほとんど食べられずに必ず翌日お腹を壊す。今月こそは何か言い訳をして不参加にしようか。しかし美穂も、孤独な子育てをしている身なので、他のママ達に混ざって他の家の情報収集や噂話を聞きたいという気もする、複雑なところなのだ。
グループラインは刻々と話が進み、《結ちゃんちは?》とついに名指しで訊かれた。言い訳を考えているうちに《また土日休みだよね? そしたら次の日曜日にしよう》と決定されてしまった。仕方なく了解のスタンプを送った。
野蛮な男子たちではなく女子と交流できないものだろうか。この四家族のグループは、保育園にゼロ歳児からいるメンバーなのである。最初は六人でのスタートで、途中から続々と新しい子が入園し一年で倍の十二人になった。それからも入退園、転園などがあり現在のクラスは十七人だ。最初の六人のうち、グループに入っていないのはさくらちゃんと万恵ちゃんの女子たちである。さくらちゃんは当時同じ園に二人の姉がいて、キャリアウーマン臭がぷんぷんするお母さんとも話しづらいとのことでボスママである礼雄のママの敦子は声をかけなかった。万恵ちゃんの家は送りがお父さんなので誘わなかったそうだ。特に万恵ちゃんと結は仲良しなので、なんとか万恵ちゃんとプライベートでも仲良くなりたい。同じ女の子の親なら、話も合うのではないだろうか。万恵ちゃんのお母さんは行事の時しか見たことがないが、小柄で可愛くて優しい雰囲気の人だった。下品な敦子たちとは違う、仲良くなりたいタイプだった。残念なことに彼女とは園でほとんど会えない。
結局ハンバーグはやめ、ドライカレーになった。結が食べるようにと、思いっきり甘くしたカレーだ。
「おいしい?」
「うん」
結は食が細い。多分残すと思う。でもおいしいと言っているではないか、と自分を励ます。雅教はまだ帰ってこない。
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