悪役令嬢、闇ギルドの稼ぎ頭になる

砂糖 真湖

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「おぉ!スチル全クリだぁぁあ!」


四角い、光るなにかの前で女の人が叫んでいる。

この国ではあまり見ない、黒髪に黒目。ごく普通な容姿。

足をバタバタさせ、口を大きく開けている姿はとてもみっともない。



私がやったら、お母様とお父様から鞭が飛んでくるだろう。


「貴方はこの国の第一王子の婚約者になるのですよ」って言葉と共に。


いつも、そう。あのこはなんでも許されているけれど。私は、なにもかもゆるされない。


お人形も、大好きな侍女も、甘いお菓子も。

全部ぜんぶ、あのこのもの。


だから、お父様とお母様だけはとられたくなかった。だから、ちゃんと、私は、いい子になるの。

お勉強もちゃんとするし、お行儀だってよくする。


目の前の女の人みたいに大きく口を開けて笑ったりしないし、足だってバタバタさせないわ。



…でも、でも。とても、目の前の女の人

その人はキラキラした目をしている。


…いいなぁ、私も目をキラキラさせれる位、好きなことができたらいいのに。好きなことを、見つけれたらいいのに。


この女の人は何をしているんだろう。

ふらふらと光る何かに近づいてみる。


近づくとその四角い何かはただ光っているのではないと気づいた。


なにか、絵のようなものがかかれている。

なんだろう?目をこらして見ると、二人の人が向き合い、キスしている姿が見えた。



…あ 、あ、あぁぁぁあああああああ


そこで、やっと。私は今声が出せないことに気づく。


綺麗な金髪に珍しい紫の瞳。幸せそうに笑う顔には右だけエクボができている。

結婚式の日のための白いウエディングドレスを着ているのは…


紛れもなくあのこだった。今よりずっと、成長してるけど、分かる。

なんで、なんで。あのこが…第一王子とキスしてるの?結婚してるの?


婚約者になるのは私のはずなのに。ずっと、お父様とお母様に言われてきたこと。二人の悲願。私の唯一の…存在意義。

このままじゃ、このままじゃあ…お父様とお母様も、あのこにとられてしまう。


いやぁぁぁぁぁああああああっ。

叫ぼうとしたけれどやはり、声は出ない。

なんで、どうして。喉に手を当てようとして、その手が半透明なことに気づいた。


いや、なんで…どうしてっ…


まず、この状況がおかしいのだ、目の前の女の人、みたこともない形の道具や家具。

ここは…どこ?私は、私は…



混乱の中、深い、深い青と、あのこの嗤った顔を思い出した。


ぷちっ。


どこかで、なにかがキレる音がする。

目の前に溢れだす記憶。私であって私でないもの。私の、もうひとつの人格。



あぁ…私は、悪役令嬢なんだわ。


目の前が真っ暗になった。

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