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1章 ~現在 王宮にて~
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ミーシャが口を閉ざすと部屋は静寂で満たされた。
社交界の情報をきちんと把握し、人の気持ちを推し量ることができる者ならわかっているのだ。
ギデオンとエドワードは一般的な異母兄弟以上に仲が悪い。いや、仲が悪いというよりギデオンが一方的にエドワードを嫌っている。
それも仕方ないことだとシェリルは思う。
国王がギデオンと共に過ごすのは公式行事の時だけだ。だけどエドワードとは薔薇の宮でいつも食事を共にしているし、薔薇の宮の庭園を王妃と3人で歩く姿は多くの使用人に目撃されている。
文化祭や剣術大会といった学園行事の時も、ギデオンの通う王立学園に姿を見せたのはルイザ1人だけだった。だけどエドワードが通う騎士学院には、王妃と共に国王も訪れていたという。
国王がギデオンよりエドワードを可愛がっていることは誰の目にも明らかだった。
ギデオンは幼い頃から努力していた。
王太子であるギデオンには物心がついた時から教育係がつけられている。そして教育係から課題の成果や成績が国王へ報告される。
たった一度。一度だけ国王が何の予定もないのに百合の宮を訪れた。そしてギデオンの成績を褒め、頭を撫でたのだ。その経験がギデオンの宝物になった。
それからギデオンは必死で努力を続けている。
自身に興味のない国王の気を引こうと、勉強も剣術も礼儀作法も求められる以上のものを身に付けてきた。
薔薇の宮で育てられているエドワードが優秀だと言われるようになると更に必死になった。
だから乱暴な言葉遣いや粗野な振る舞いに眉を顰める者がいても、ギデオン自身を無能だとか教養がないと言う者はいない。
そしてそれがシェリルがギデオンに惹かれ、傍で支えたいと願う理由だった。
同じ歳のエドワードとギデオンは常に比べられている。1番エドワードを意識して、比べているのはギデオン自身だ。
エドワードが三カ国語を話せるようになったと聞けば四カ国語を、剣術大会で優勝したと聞けば自分も優勝を、と必死になる。だけど王太子であるギデオンが四カ国語を話せるのは当然だし、騎士学院の剣術大会と王立学園の剣術大会では出場者の実力がそもそも違うのだ。エドワードを褒め称え、薔薇の宮で祝賀会を開く国王が百合の宮を訪れることはなかった。
その度に荒れるギデオンをシェリルは傍で見てきた。
決して振り向いてくれない父親の背中を追いかけ、必死で自分の存在を主張しては叶わずに打ちのめされる。
そんなギデオンの傍で力になり、安らげる居場所になりたいと思っていた。
例えその役目を果たすのがシェリルではなくミーシャだとしても、その為に「正妃」の存在が必要ならば、その役目を果たそうと思えるぐらいにはギデオンを想っているのだ。
勿論国王の中にはエドワードに対する罪悪感もあるだろう。
国王の望みでエドワードは赤子の頃に両親から引き離された。その後、実の両親とは禄に会うこともできずに王宮で育てられている。
学園も、公爵子息のエドワードなら問題なく王立学園に通えたはずだ。だけどエドワードはギデオンとの摩擦を避けるために騎士学院を選んでいる。
王立学園は将来爵位を継いだり王宮で役職を得たいと望む者が通う学校だ。
反対に騎士学院は騎士になるための学校で、三男・四男として生まれて継げる爵位のない者や役職に就く望みのない者が将来身を立てるために通っている。
エドワードは良くわかっているのだ。
ギデオンの恨みを買う自分は、ギデオンが即位すれば王宮に居場所はない。実家のダシェンボード公爵家もどうなるかわからない。
だから王都を追放され、辺境へ追いやられても行きていけるように騎士の道を選んだのだろう。
社交界の情報をきちんと把握し、人の気持ちを推し量ることができる者ならわかっているのだ。
ギデオンとエドワードは一般的な異母兄弟以上に仲が悪い。いや、仲が悪いというよりギデオンが一方的にエドワードを嫌っている。
それも仕方ないことだとシェリルは思う。
国王がギデオンと共に過ごすのは公式行事の時だけだ。だけどエドワードとは薔薇の宮でいつも食事を共にしているし、薔薇の宮の庭園を王妃と3人で歩く姿は多くの使用人に目撃されている。
文化祭や剣術大会といった学園行事の時も、ギデオンの通う王立学園に姿を見せたのはルイザ1人だけだった。だけどエドワードが通う騎士学院には、王妃と共に国王も訪れていたという。
国王がギデオンよりエドワードを可愛がっていることは誰の目にも明らかだった。
ギデオンは幼い頃から努力していた。
王太子であるギデオンには物心がついた時から教育係がつけられている。そして教育係から課題の成果や成績が国王へ報告される。
たった一度。一度だけ国王が何の予定もないのに百合の宮を訪れた。そしてギデオンの成績を褒め、頭を撫でたのだ。その経験がギデオンの宝物になった。
それからギデオンは必死で努力を続けている。
自身に興味のない国王の気を引こうと、勉強も剣術も礼儀作法も求められる以上のものを身に付けてきた。
薔薇の宮で育てられているエドワードが優秀だと言われるようになると更に必死になった。
だから乱暴な言葉遣いや粗野な振る舞いに眉を顰める者がいても、ギデオン自身を無能だとか教養がないと言う者はいない。
そしてそれがシェリルがギデオンに惹かれ、傍で支えたいと願う理由だった。
同じ歳のエドワードとギデオンは常に比べられている。1番エドワードを意識して、比べているのはギデオン自身だ。
エドワードが三カ国語を話せるようになったと聞けば四カ国語を、剣術大会で優勝したと聞けば自分も優勝を、と必死になる。だけど王太子であるギデオンが四カ国語を話せるのは当然だし、騎士学院の剣術大会と王立学園の剣術大会では出場者の実力がそもそも違うのだ。エドワードを褒め称え、薔薇の宮で祝賀会を開く国王が百合の宮を訪れることはなかった。
その度に荒れるギデオンをシェリルは傍で見てきた。
決して振り向いてくれない父親の背中を追いかけ、必死で自分の存在を主張しては叶わずに打ちのめされる。
そんなギデオンの傍で力になり、安らげる居場所になりたいと思っていた。
例えその役目を果たすのがシェリルではなくミーシャだとしても、その為に「正妃」の存在が必要ならば、その役目を果たそうと思えるぐらいにはギデオンを想っているのだ。
勿論国王の中にはエドワードに対する罪悪感もあるだろう。
国王の望みでエドワードは赤子の頃に両親から引き離された。その後、実の両親とは禄に会うこともできずに王宮で育てられている。
学園も、公爵子息のエドワードなら問題なく王立学園に通えたはずだ。だけどエドワードはギデオンとの摩擦を避けるために騎士学院を選んでいる。
王立学園は将来爵位を継いだり王宮で役職を得たいと望む者が通う学校だ。
反対に騎士学院は騎士になるための学校で、三男・四男として生まれて継げる爵位のない者や役職に就く望みのない者が将来身を立てるために通っている。
エドワードは良くわかっているのだ。
ギデオンの恨みを買う自分は、ギデオンが即位すれば王宮に居場所はない。実家のダシェンボード公爵家もどうなるかわからない。
だから王都を追放され、辺境へ追いやられても行きていけるように騎士の道を選んだのだろう。
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