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謁見
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謁見は、あっさりしたものだった。
結局、王宮の豪華な食事はなかった。それどころか、お茶一杯、クッキーの一枚さえだしてくれなかった。
たんにコルセットの拷問級のきつさに耐え忍んだだけであった。
ただ、一つ気になったことがあった。謁見の際、宰相のシルヴァン・プランタードがわたしのことをわざわざ「ソニエール男爵家のご令嬢」と紹介したことである。
プランタード公爵家は、セネヴィル王国の三大公爵家筆頭で、彼はその公爵家でも運で当主になった人である。
公爵家筆頭のプランタード家歴代の当主のほとんどが、宰相の地位についている。よって、彼も当主の座だけでなく宰相の地位も継いだ。
彼のお父様だけでなく、四人いる優秀なお兄様たちがつぎからつぎへと亡くなってしまい、レディ遊びと賭け事で身を持ち崩して勘当状態だった彼が当主の座におさまった。
まだわたしのお父様が政治に携わっていたときのことだけれど、当時はいろいろと噂があった。
たとえば、「シルヴァンは、当主の座を得る為にありとあらゆる手段を用いた」というようなことである。
もちろん、その噂の真偽はわからない。だけど、もともと遊び人だった彼が当主の座と宰相という地位を簡単に得たことを考えると、運以外ではそういうブラックななにかがあったとしか考えようがない。
ちなみに、彼の宰相としての手腕はよくわからない。わかっているのは、王族をうまく手懐けているということかもしれない。つまり、なんでも自分の思いどおりに動かしているというわけ。
残念ながら、当時彼の独善的なやり方に真っ向から対立していたのがお父様だけだった。そのお父様が政界を去ってから、政界はほぼ彼の独壇場となっている。
対立する者は、なぜか不慮の事故や不運に見舞われる。
それが暗黙の了解となっているから、もはやだれも彼に逆らう者はいない。
その彼が、わたしを紹介したのが気になった。気になったけれど、彼がわたしに対して意を含んでいるというのも考えにくい。
だから気にとめなかった。
訂正。まったく関係がないというわけではない。じつは、侯爵の紹介で彼の息子ヴァレール・プランタードとは顔見知りである。ヴァレールは、騎士団の団員で侯爵が引退した後に団長になるのである。そのヴァレールは、なぜかわたしにつきまとってくる。
父親である宰相は、もしかるすとわたしが彼の息子に懸想していると勘違いしているのかもしれない。
だとすれば、それはおおいなる勘違い。勘違いにもほどがある。
いずれにせよ、シルヴェストル侯爵家へ帰る馬車内でとくに侯爵に訴えることはなかった。
そして、そのことはすぐに記憶から消え去ってしまった。
国王や王妃への暇乞いも終わり、侯爵の残務処理などが終り次第、わたしたちは王都を去ることになっている。
生まれ育った王都を離れ、遠くシルヴェストル侯爵領へと旅立つのである。
だけど、わたしは前向きに考えている。
お父様と二人、これからは家畜相手に生きていけばいい。
そう考えると、王都で細々と暮らすよりずっといいかもしれない。
ただし、それも侯爵が離縁してくれてからのこと。
わたしの理想の未来は、彼との離縁にかかっているといっても過言ではない。
結局、王宮の豪華な食事はなかった。それどころか、お茶一杯、クッキーの一枚さえだしてくれなかった。
たんにコルセットの拷問級のきつさに耐え忍んだだけであった。
ただ、一つ気になったことがあった。謁見の際、宰相のシルヴァン・プランタードがわたしのことをわざわざ「ソニエール男爵家のご令嬢」と紹介したことである。
プランタード公爵家は、セネヴィル王国の三大公爵家筆頭で、彼はその公爵家でも運で当主になった人である。
公爵家筆頭のプランタード家歴代の当主のほとんどが、宰相の地位についている。よって、彼も当主の座だけでなく宰相の地位も継いだ。
彼のお父様だけでなく、四人いる優秀なお兄様たちがつぎからつぎへと亡くなってしまい、レディ遊びと賭け事で身を持ち崩して勘当状態だった彼が当主の座におさまった。
まだわたしのお父様が政治に携わっていたときのことだけれど、当時はいろいろと噂があった。
たとえば、「シルヴァンは、当主の座を得る為にありとあらゆる手段を用いた」というようなことである。
もちろん、その噂の真偽はわからない。だけど、もともと遊び人だった彼が当主の座と宰相という地位を簡単に得たことを考えると、運以外ではそういうブラックななにかがあったとしか考えようがない。
ちなみに、彼の宰相としての手腕はよくわからない。わかっているのは、王族をうまく手懐けているということかもしれない。つまり、なんでも自分の思いどおりに動かしているというわけ。
残念ながら、当時彼の独善的なやり方に真っ向から対立していたのがお父様だけだった。そのお父様が政界を去ってから、政界はほぼ彼の独壇場となっている。
対立する者は、なぜか不慮の事故や不運に見舞われる。
それが暗黙の了解となっているから、もはやだれも彼に逆らう者はいない。
その彼が、わたしを紹介したのが気になった。気になったけれど、彼がわたしに対して意を含んでいるというのも考えにくい。
だから気にとめなかった。
訂正。まったく関係がないというわけではない。じつは、侯爵の紹介で彼の息子ヴァレール・プランタードとは顔見知りである。ヴァレールは、騎士団の団員で侯爵が引退した後に団長になるのである。そのヴァレールは、なぜかわたしにつきまとってくる。
父親である宰相は、もしかるすとわたしが彼の息子に懸想していると勘違いしているのかもしれない。
だとすれば、それはおおいなる勘違い。勘違いにもほどがある。
いずれにせよ、シルヴェストル侯爵家へ帰る馬車内でとくに侯爵に訴えることはなかった。
そして、そのことはすぐに記憶から消え去ってしまった。
国王や王妃への暇乞いも終わり、侯爵の残務処理などが終り次第、わたしたちは王都を去ることになっている。
生まれ育った王都を離れ、遠くシルヴェストル侯爵領へと旅立つのである。
だけど、わたしは前向きに考えている。
お父様と二人、これからは家畜相手に生きていけばいい。
そう考えると、王都で細々と暮らすよりずっといいかもしれない。
ただし、それも侯爵が離縁してくれてからのこと。
わたしの理想の未来は、彼との離縁にかかっているといっても過言ではない。
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