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慈善活動
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ラングラン侯爵領は、他の領地に比べれば土壌がいい。それに翡翠の産地でもある。だから、領民の多くがふつうの暮らしを送っている。
すくなくとも、わたしの実家よりかはずっとずっと豊かな生活を送っている。
わたしの実家ジャックミノー伯爵家は、聖なる力を有する家系。だから、昔は聖職者や聖女として皇族に仕えていた。が、昨今皇族は聖職者を遠ざける傾向にある。
伯爵という爵位がなければ、ジャックミノー家はとっくの昔に没落していたかもしれない。
それはともかく、ジャックミノー家は代々癒しと加護の力を受け継いでいる。加えて、お人好しな性格も。父は養子として母に嫁いだわけだけれど、二人とも控えめにいってもお人好しすぎた。
日頃からあらゆる階層の人たちに癒しの力を施していたのはもちろんのこと、利用されたりだまされたりばかりいた。
書物に出てくる「お人好し貴族」そのままである。
結局、両親は失意のまま事故で死んでしまった。
じつは、事故というのもはなはだ怪しいのだけれど。
その両親が前ラングラン侯爵とその奥様を流行り病から救った縁で、わたしはいまここにいる。
それがいいか悪いかは別にして。
「こんにちは、アイ様」
「アイ様、こんにちは」
定期的に病院を訪れている。
ラングラン侯爵領には、慈善病院がある。それは、この侯爵領のみならず近隣の領地からも大勢の人たちが頼ってやってくる。
微力ながら、そこで癒しの力を使っているのである。
「こんにちは」
「こんにちは」
近隣の医師や看護師たちが、時間の許す限り訪れ診てくれたり相談にのってくれている。
病棟の入院患者のお世話は、シスターや町の人たちが協力して行っている。
みんなに挨拶をしてから、診療を行っている建物へ。二階建ての立派な病棟には、五十ほどの病床がある。だけど、診療室のある建物は、平屋の小屋。それでも一応は三部屋あって、診察室に二部屋使い、残りの一部屋を薬師用にしている。
今朝はこの町の医師が診察を行っているので、もう一部屋を使うことにした。
病院とはいえ、技術的にも物理的にも経済的にも出来ることに限界がある。
運営するにあたり、わたしが散財するはずのお金を当てている。
一度も会ったことのないまだ見ぬ旦那様は、わたしに好きなようにしていいと言った。だから経済的なことも含めて、といいように解釈している。ドレスとか美味しい食べ物とか、めずらしい骨董品とか絵画とか、そういったものに使うはずの費用をこちらにまわしている。
昔のわたしの生活レベルから比べれば、その費用は「うわぁぁぁぁっ!」ってなるほど高額だけれど、裕福すぎる侯爵家にとったら愚妻のワガママな散財ほどにしかならない。
ありがたいことに、ラングラン侯爵家の執事や管理人は理解のある人たちである。わたしのワガママを快く支援してくれている。それどころか、彼らやメイドたちもいっしょに訪れてくれて出来る範囲で手伝ってくれる。
ほんとうにありがたい。
心から感謝している。
すくなくとも、わたしの実家よりかはずっとずっと豊かな生活を送っている。
わたしの実家ジャックミノー伯爵家は、聖なる力を有する家系。だから、昔は聖職者や聖女として皇族に仕えていた。が、昨今皇族は聖職者を遠ざける傾向にある。
伯爵という爵位がなければ、ジャックミノー家はとっくの昔に没落していたかもしれない。
それはともかく、ジャックミノー家は代々癒しと加護の力を受け継いでいる。加えて、お人好しな性格も。父は養子として母に嫁いだわけだけれど、二人とも控えめにいってもお人好しすぎた。
日頃からあらゆる階層の人たちに癒しの力を施していたのはもちろんのこと、利用されたりだまされたりばかりいた。
書物に出てくる「お人好し貴族」そのままである。
結局、両親は失意のまま事故で死んでしまった。
じつは、事故というのもはなはだ怪しいのだけれど。
その両親が前ラングラン侯爵とその奥様を流行り病から救った縁で、わたしはいまここにいる。
それがいいか悪いかは別にして。
「こんにちは、アイ様」
「アイ様、こんにちは」
定期的に病院を訪れている。
ラングラン侯爵領には、慈善病院がある。それは、この侯爵領のみならず近隣の領地からも大勢の人たちが頼ってやってくる。
微力ながら、そこで癒しの力を使っているのである。
「こんにちは」
「こんにちは」
近隣の医師や看護師たちが、時間の許す限り訪れ診てくれたり相談にのってくれている。
病棟の入院患者のお世話は、シスターや町の人たちが協力して行っている。
みんなに挨拶をしてから、診療を行っている建物へ。二階建ての立派な病棟には、五十ほどの病床がある。だけど、診療室のある建物は、平屋の小屋。それでも一応は三部屋あって、診察室に二部屋使い、残りの一部屋を薬師用にしている。
今朝はこの町の医師が診察を行っているので、もう一部屋を使うことにした。
病院とはいえ、技術的にも物理的にも経済的にも出来ることに限界がある。
運営するにあたり、わたしが散財するはずのお金を当てている。
一度も会ったことのないまだ見ぬ旦那様は、わたしに好きなようにしていいと言った。だから経済的なことも含めて、といいように解釈している。ドレスとか美味しい食べ物とか、めずらしい骨董品とか絵画とか、そういったものに使うはずの費用をこちらにまわしている。
昔のわたしの生活レベルから比べれば、その費用は「うわぁぁぁぁっ!」ってなるほど高額だけれど、裕福すぎる侯爵家にとったら愚妻のワガママな散財ほどにしかならない。
ありがたいことに、ラングラン侯爵家の執事や管理人は理解のある人たちである。わたしのワガママを快く支援してくれている。それどころか、彼らやメイドたちもいっしょに訪れてくれて出来る範囲で手伝ってくれる。
ほんとうにありがたい。
心から感謝している。
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