黒豹拾いました

おーか

文字の大きさ
100 / 130

100※現パロ(本編とは関係ありません)

しおりを挟む
100話記念 現パロ




小学2年の頃、両親を事故で亡くし、引き取り手も居なかった僕を拾ってくれたのが鷹見さんだった。両親を亡くしたことに加え、誰にも気にかけられることもなかった僕は感情を表に出さない子供になっていた。それをたまたま見つけてくれた鷹見さんが引き取ってくれることになった。

「こんにちは。俺は鷹見って言うんだが、お前は?」

「……」

「……」

「……黒曜」

「黒曜か。よろしくな。…今の状況について言うのは黒曜には酷なことだと思う。けどな、お前に選んで欲しいんだ。施設に入るか、俺のところに来るか。」

「…」

「俺のところに来れば少なくとも、黒曜を一人にはしない。どうしたい?お前が答えを出すまで、ずっと待つ。俺のところに来るのなら、俺の手を取るでも、名前を呼ぶでもいい。何かしらで教えてくれ。」

「…」

声を出そうとすると、押し込めたはずの心の悲鳴や嗚咽が漏れ出そうになる。僕は…一人だ。守ってくれる人も愛してくれる人ももう居ない。居なくなってしまった。その事が理解できてしまう程度には、僕は賢くなっていた。鷹見のところに行けば、一人じゃなくなるの?

両親が死んでから、こんなふうに僕のことをしっかりと見てくれた人は居なかった。信じて…いいの?いつまでも決断を下さない僕を前に、鷹見がやがて立ち上がり、背を向けてしまいそうになる。嫌だ。嫌だよ…一人にしないで。伸ばした僕の小さな手は、鷹見の暖かくて大きな手で包まれる。

「うちに来るんだな?」
「…」

コクリと頷くことで返事をする。それを見て取った鷹見が僕の手を引いて歩き始める。そのまま鷹見の家に連れてこられた。引き取る手続きをしている間もうすでに鷹見の家で暮らしていた。あっという間に鷹見の家の子になる為の準備が整えられた。親戚だって厄介払いを出来て喜んでいたからね。

引き取られた当初の僕はそれはそれは扱いにくい子供だったと思う。鷹見さんにだって当たったし、嫌なことだってきっと沢山した。それでも見捨てることなく、ただひたすらに側にいてくれた。何をするでもないけれど、確かに一人ではないんだと段々と実感できるようになった。

鷹見さんが居なければ今でも廃人の様に生きていただろう。それほどあの時の僕の状態は酷いものだった。鷹見さんとの暮らしは決して裕福では無かったけれど、それでも楽しかった。

鷹見さんはいつだって僕のことを優先してくれて、仕事を休んででも学校の授業参観や卒業式、入学式には駆けつけてくれたし、自分の食費を削ってでも僕にお小遣いを渡してくれた。

中学に上がって、ある程度のことは出来るようになっていたし、家事は僕が担当していた。

「鷹見さん!おかえりなさい。」

「おう、ただいま。いい匂いするな、飯作ってくれたのか?」

「うん、今日はシチューにしたよ。」

「シチューか。寒いし丁度いいな。」

「うん、お風呂も準備済んでるよ」

「完璧じゃねぇか!流石だな黒曜」

「んふふ、鷹見さんの為だからね。先に食べる?」

「おう、匂い嗅いだらすげぇ腹減った。」

「うん、準備しておくから着替えて来ていいよ。」

「ありがとな。」

そう言って僕の頭をぽんと撫でていく。とても温かい気持ちになって、自然と口角があがる。さて、戻ってくるまでにご飯机に運ばないとね。鷹見さんにしっかりと食べさせたくて始めた料理だったが、やってみれば楽しくてのめり込んでしまった。

「美味そうだな。」

「うん、自信作だよ。」

「そんじゃあ早速いただきます。」

「どうぞ、僕もいただきます。」

「はふっ…旨っ」

「えへへ、良かった!」

「ところで…黒曜に聞きたいことがある。」

「ん?うん、なにかな?」

「お前…母親欲しいか?」

「…は?」

「いやな、最近見合い話があってだな?」

見合い話…?

「鷹見さんが結婚するってこと?」

「まぁ、そうだな。」

「嫌だ…そんなの嫌だよ。」

「そうか、分かった。あ、気にしなくていいからな?元から断ろうと思ってたからよ。」

「そうなんだ。良かった。」

鷹見さんの話に心がざわつく。ずっと一緒に居てくれるんでしょう?鷹見さんが誰かに取られるとか…耐えられない。誰にも渡したくない。僕だけの特権でしょう?やっと自覚した歪んだ恋心。

鷹見さんは、いつだって僕に甘い。僕がねだれば、なんとかならないかな?流石にそこまで甘くないか。でも…逃げられないように、僕だけを見ていてくれる様にしたい。出来るだけ早いうちから手を打ったほうがいい。

取り敢えず今やっている家事は続けよう。僕がいないと生活できないくらいに、僕に甘えて頼ってくれればいい。ふふっまだ鷹見さんに気持ちを知られるには早いよね。けど必ず手に入れる。

高校にあがって、体格も鷹見さんよりも良くなった。そして押しに弱い、というか僕に弱い鷹見さんを押し倒した。ようやく鷹見さんを抱くことが出来た。

「はっ…はっ…黒曜…」

「ん…はぁ…。鷹見さん…ちゃんと気持ち良かったでしょう?僕鷹見さんの為に沢山勉強したんだよ。」

「べ、勉強って…お前…そんな爛れた性活してたのか?」

「え?ううん、ネットとかで沢山見たり調べたりしたってことだよ。僕の初めては鷹見さんだよ。」

「そ…そうか…。ってお前!こんなおっさん抱いて何が楽しいってんだ…」

僕の初めてが鷹見さんだって言ったとき、少し嬉しそうだった。顔を背けられてしまったけど、耳が赤くなっているのがわかる。可愛い人だなぁ。

「言ったでしょう、好きだって」

「本気なのか…?」

「もちろん。今日の為に…こうして鷹見さんを手に入れる為に頑張ったんだよ?家事とか色々。」

「ん?どういう意味だ?」

「ふふっ鷹見さんが僕無しで居られなくなるように、ね?」

「うっ…確かにお前が居てくれなきゃまともに生活できないかもな…」

「でしょう?でも…そのままでいてくれていいからね。ずっと僕が鷹見さんの側にいるから。大好きだよ鷹見さん。」

「まぁ…末永くよろしく頼む…黒曜。俺も…愛してるからな。」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

前世が教師だった少年は辺境で愛される

結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。 ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。 雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。

番だと言われて囲われました。

BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。 死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。 そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる

古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

処理中です...