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しおりを挟む街を歩いていて段々と海へと近付いてきた。そのあたりで見つけた雰囲気のいい店へ入った。海を見ながらの食事ができて、新鮮な海鮮料理がオススメのようだ。海の近くでしか食べられない生魚だ。
「コクヨウ、お前はどうする?俺はこの刺身定食ってのに決めた。」
「うーん、じゃあ僕は海鮮丼にしようかな。」
「それも美味そうだな。」
「うん、タカミにも分けてあげるね。」
「おう、ありがとな。」
食事が運ばれてきて食べ始めたが、あまり食べたことの無いものではあったが、とても美味い。口の中で蕩けるような脂身が醤油との相性抜群で最高だ。
「ふふっそんなに美味しい?」
「おう…お前も食うか?」
「んふふ、食べる。食べさせて?あー…」
口を開けてこちらを見つめてくるコクヨウ。俺が食べさせるのを待っているらしい。こういうときのコクヨウは、折れることを知らない。俺が折れる方が早いな。
「…仕方ねぇな。ほら」
「モグモグ…うん、美味しい!じゃあお返し、あーん」
「っ…俺もかよ。はぁ…ん!うまっ!」
お返しだと言って、俺もコクヨウの飯を口に運ばれる。口に入れればすぐにわかる程に旨かった。海老がいいな。プリプリとした歯ごたえと溢れる甘味。白米との相性も最高だ。はぁ…こんなに上手い飯も温泉もあるのなら暫くここに留まるのも悪くないかもな。
「はぁ…腹いっぱい。ごちそうさん。」
「ごちそうさまです。タカミ、もう宿があるあたりに行く?」
「おう、そうだな。一旦休もう。」
「そうだね。」
海の見える宿で、露天風呂があるところを選んだ。値段はそこそこしたが、その価値のある場所だろうな。夕日が沈み行く海面が赤く染まりキラキラと煌めく。素晴らしい景色だ。
「凄い景色だね。」
「だな。よし!風呂入るか。」
「うん」
「こんな時間から風呂とか贅沢で良いよな。」
「ふふっうん。ねぇタカミ、触ってもいい?」
「…風呂入るって言ってんだが?」
「うん、でも好きな人の裸を前にして触らずにはいられないよ、僕。」
「そう…だな。性的な事は…また夜にな。」
「わかった…我慢する…。けど、夜は覚悟しておいてね?」
「おう…」
こうして夜の約束を引き換えに素晴らしい景色を見ながらの温泉を楽しんだ。コクヨウもしっかり我慢しているらしく、俺の手をとるだけだった。しかしながら、全くこちらを見ない。
「コクヨウ、どうしてそんな顔背けてんだ?」
「…タカミの意地悪…わかってて聞いてるんでしょ…」
「ふっ…良い子に我慢できて偉いな。ありがとな、俺のために我慢してくれて。」
「…うん…その代わり夜は…分かってるよね?」
「おう。期待しとけ?」
耳元で囁くように言ってやれば肩をビクリと跳ねさせる。全く俺の男は素直で可愛らしいことだな?
「…ああもう!!ずるい!!タカミのバカ!!好き!!」
「ふははっ!俺も好きだぜ。コクヨウ」
「もー!!襲うよ…?」
「駄目だ約束したろ?」
「…うん…」
また俺から目を逸らしたコクヨウは次は尻尾を俺の腰に巻き付ける。触れたいのをどうにか耐えているらしい。夜は可愛がってやらないとな。
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