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24話
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元婚約者ユーリを退けた後、レオンはエルナの手を引き、公爵への礼を済ませるとすぐに会場の奥にあるテラスへと向かった。
テラスは冬の夜の冷たい空気で満たされていたが、人々の視線が届かない、二人だけの静かな空間だった。
「寒くはありませんか、エルナ様」
レオンはすぐに自分の外套を脱ぎ、エルナの肩にかけようとした。
「大丈夫よ、レオン。それより、あなたは……」
エルナは、レオンの黒い装いの下で、彼の呼吸がわずかに乱れていることに気づいていた。彼は外で一切感情を見せなかったが、ユーリとの対峙は、レオンにとっても大きな負担だったに違いない。
「……私のことは構いません」
レオンはそう言いながらも、エルナの隣に立つと、会場の方へ背を向け、深く息を吐いた。
「素晴らしい対応でした、エルナ様」
レオンは、エルナを見ずに、静かに言った。
「あなたの言葉は、ユーリ子爵だけでなく、この場にいるすべての虚飾を纏った人々の心に届いたはずです」
「レオンが、わたしを守ってくれたからよ」
「いいえ」
レオンは静かに首を振った。
「私はただ、あなたの盾になろうとしただけです。ですが、あなたはご自分の力で、過去の呪縛を断ち切った。あなたは……本当に強い方です」
その言葉は、レオンがエルナに贈る、最大級の賛辞だった。
エルナは、彼の顔を見上げようとしたが、レオンはテラスの手すりに手を置き、顔を伏せていた。彼の黒髪が、テラスの弱い灯りの中で揺れている。
「レオンは、あの時、本当に怒っていたのね」
エルナは優しく尋ねた。
🌑 炎を宿す男
レオンは、長い沈黙の後、ゆっくりと顔を上げた。
「……はい」
その瞳には、今もなお、ユーリへの深い怒りの炎がくすぶっているように見えた。
「彼は、あなたという存在の価値を、最も安易で、最も残酷な言葉で否定しました。彼に、あなたの足元にも及ばないような人間が、あなたを嘲笑する資格などない」
レオンは、自分自身に言い聞かせるように、言葉を紡いだ。
「私は、あなたがあの侯爵家で、どれほどその傲慢な価値観に押し潰されそうになっていたかを知っています。そして、私はそれを止められなかった」
彼の声には、深い自責の念が含まれていた。
「だからこそ、今日は……あなたの過去を否定しようとした者に対して、静かに怒りを覚えました。二度と、あなたにそんな言葉を投げさせたくない」
レオンは、冷徹な仮面を脱ぎ捨てた、生身の感情を露わにしていた。彼の怒りは、エルナを侮辱されたことへの、純粋で激しい愛の証明だった。
エルナは、そっとレオンの手を取り、黒い手袋越しに、彼の指輪に触れた。
「レオン。もう、あなたは自分を責めないで」
エルナは、彼の目をまっすぐに見つめた。
「あなたは、わたしを侯爵家から救い出してくれた。そして、わたしに**『あなたは正しい』**という、最も重要な言葉を与えてくれた。あの時、わたしが壊れずに済んだのは、すべてあなたのおかげよ」
レオンの強い視線が、エルナの瞳に吸い込まれていく。彼は、エルナの優しさと、揺るぎない信頼に、再び心を深く揺さぶられた。
「……エルナ様」
レオンは、もう理性を保つことができなかった。彼は、エルナの手を自分の胸に引き寄せ、そのまま静かに、しかし強く抱きしめた。
🌌 偽りなき抱擁
テラスの冷たい空気の中で、レオンの体温だけが、熱を持っていた。
「許してください。私は、あなたを、この汚い社交界の空気に触れさせたくなかった……」
彼の声は、懺悔のようにエルナの耳に届いた。
「ううん。もう大丈夫。わたしたちは、二人でここを乗り切ったわ」
エルナは、レオンの背中にそっと腕を回した。
彼の抱擁は、これまでで最も強く、そして偽りのないものだった。そこには、護衛としての責任でも、契約の義務でもなく、ただ一人の男が、愛する女性を失いたくないと願う、純粋な感情だけがあった。
レオンは、ゆっくりとエルナを解放し、額を寄せた。
「ありがとうございます。私に、あなたと共にいる機会を与えてくれて」
彼の黒い瞳は、舞踏会場の光を反射して、まるで星を宿しているかのように輝いていた。
「ありがとう、レオン。わたしに、この人生を選ばせてくれて」
テラスを照らす月明かりだけが、二人が交わした、真実の愛の抱擁を静かに見つめていた。黒い鎧を脱いだレオンと、過去の呪縛を断ち切ったエルナ。彼らの夫婦の絆は、社交界の試練を越えて、確かな炎となって燃え始めた。
テラスは冬の夜の冷たい空気で満たされていたが、人々の視線が届かない、二人だけの静かな空間だった。
「寒くはありませんか、エルナ様」
レオンはすぐに自分の外套を脱ぎ、エルナの肩にかけようとした。
「大丈夫よ、レオン。それより、あなたは……」
エルナは、レオンの黒い装いの下で、彼の呼吸がわずかに乱れていることに気づいていた。彼は外で一切感情を見せなかったが、ユーリとの対峙は、レオンにとっても大きな負担だったに違いない。
「……私のことは構いません」
レオンはそう言いながらも、エルナの隣に立つと、会場の方へ背を向け、深く息を吐いた。
「素晴らしい対応でした、エルナ様」
レオンは、エルナを見ずに、静かに言った。
「あなたの言葉は、ユーリ子爵だけでなく、この場にいるすべての虚飾を纏った人々の心に届いたはずです」
「レオンが、わたしを守ってくれたからよ」
「いいえ」
レオンは静かに首を振った。
「私はただ、あなたの盾になろうとしただけです。ですが、あなたはご自分の力で、過去の呪縛を断ち切った。あなたは……本当に強い方です」
その言葉は、レオンがエルナに贈る、最大級の賛辞だった。
エルナは、彼の顔を見上げようとしたが、レオンはテラスの手すりに手を置き、顔を伏せていた。彼の黒髪が、テラスの弱い灯りの中で揺れている。
「レオンは、あの時、本当に怒っていたのね」
エルナは優しく尋ねた。
🌑 炎を宿す男
レオンは、長い沈黙の後、ゆっくりと顔を上げた。
「……はい」
その瞳には、今もなお、ユーリへの深い怒りの炎がくすぶっているように見えた。
「彼は、あなたという存在の価値を、最も安易で、最も残酷な言葉で否定しました。彼に、あなたの足元にも及ばないような人間が、あなたを嘲笑する資格などない」
レオンは、自分自身に言い聞かせるように、言葉を紡いだ。
「私は、あなたがあの侯爵家で、どれほどその傲慢な価値観に押し潰されそうになっていたかを知っています。そして、私はそれを止められなかった」
彼の声には、深い自責の念が含まれていた。
「だからこそ、今日は……あなたの過去を否定しようとした者に対して、静かに怒りを覚えました。二度と、あなたにそんな言葉を投げさせたくない」
レオンは、冷徹な仮面を脱ぎ捨てた、生身の感情を露わにしていた。彼の怒りは、エルナを侮辱されたことへの、純粋で激しい愛の証明だった。
エルナは、そっとレオンの手を取り、黒い手袋越しに、彼の指輪に触れた。
「レオン。もう、あなたは自分を責めないで」
エルナは、彼の目をまっすぐに見つめた。
「あなたは、わたしを侯爵家から救い出してくれた。そして、わたしに**『あなたは正しい』**という、最も重要な言葉を与えてくれた。あの時、わたしが壊れずに済んだのは、すべてあなたのおかげよ」
レオンの強い視線が、エルナの瞳に吸い込まれていく。彼は、エルナの優しさと、揺るぎない信頼に、再び心を深く揺さぶられた。
「……エルナ様」
レオンは、もう理性を保つことができなかった。彼は、エルナの手を自分の胸に引き寄せ、そのまま静かに、しかし強く抱きしめた。
🌌 偽りなき抱擁
テラスの冷たい空気の中で、レオンの体温だけが、熱を持っていた。
「許してください。私は、あなたを、この汚い社交界の空気に触れさせたくなかった……」
彼の声は、懺悔のようにエルナの耳に届いた。
「ううん。もう大丈夫。わたしたちは、二人でここを乗り切ったわ」
エルナは、レオンの背中にそっと腕を回した。
彼の抱擁は、これまでで最も強く、そして偽りのないものだった。そこには、護衛としての責任でも、契約の義務でもなく、ただ一人の男が、愛する女性を失いたくないと願う、純粋な感情だけがあった。
レオンは、ゆっくりとエルナを解放し、額を寄せた。
「ありがとうございます。私に、あなたと共にいる機会を与えてくれて」
彼の黒い瞳は、舞踏会場の光を反射して、まるで星を宿しているかのように輝いていた。
「ありがとう、レオン。わたしに、この人生を選ばせてくれて」
テラスを照らす月明かりだけが、二人が交わした、真実の愛の抱擁を静かに見つめていた。黒い鎧を脱いだレオンと、過去の呪縛を断ち切ったエルナ。彼らの夫婦の絆は、社交界の試練を越えて、確かな炎となって燃え始めた。
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