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45/堕ちてゆく(2)★

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 結局わたしは、とおやのことを切り捨てられずに、ただもう考えるのも面倒だという理由だけで彼に身を捧げた。とおやのしたことを許した訳じゃない、許せる訳がない。けれどそんな感情以上に、他の女の身体と罪で穢れた彼の身体を、早く取り返したかった。

「はぁッ……はぁッ……はぁッ……」

 胸の上まで捲り上げられたままのニットワンピースは、結局お互いがに達するまでそのままで。ブラジャーだってそのままだ。とおやだって上半身は服を着たまま。こんなことは始めてで、なんだか気持ちが悪い。呼吸が落ち着いた所で全てを脱ぎ去ると、起き上がったとおやもそれに倣って全裸になった。

「なんでお前……ネックレス着けてねえんだよ」
「……だって」

 クリスマスにとおやが贈ってくれた、ダイヤのネックレス。細いチェーンのそれはシンプルで普段着にも仕事着にも合い、わたしのお気に入りだった。彼との関係がこんなことになってしまった以上、四六時中身に付けているのは憚られた──というよりも、単純に嫌だった。

「だって、なんだよ」
「もう、好きじゃないもの……とおやのこと……んッ……」

 刹那、距離を詰めてきたとおやの唇がそっと重なった。舌を絡ませながら彼の腰の上に跨がると両手が胸に伸びてきた。先端を摘ままれ苛められると、快感から何度も腰がぴくぴくと跳ねた。

「もう好きでもない男に、黙って抱かれた感想は?」
「なッ……はあ?」
「抱かれた感想」

 挑発するように首を傾げながらも、とおやの指先はわたしの胸の先端を弄くり続ける。色々と言ってやりたいことはあるけれど、これではまともに声を出すことすら出来ない。

「なッ……ちょ、ゆびッ……ん、んぁッ……」
「指が何?」
「やあぁ……あッ! あッあぁ……!」
「指、離したけど?」
「なめッ……あぁッ……すったら、あ、あ、あ……」

 舌先で転がされたのも束の間、ちゅうっ──と何度もしつこく吸い付いてくる。唇が離れた途端にまたしても指先に攻められ、言葉を発する間もなく唇が重ねられた。

「ほら、俺がゴムつけてる間に言えよ」
「はぁッ……はぁッ……黙って抱かれた感想を?」
「悪くなかっただろ?」
「そうやって調子に乗るから、わたしに愛想尽かされるのよ、馬鹿」
「愛想尽きたのか?」
「やだ……ちょっと、一回って言ったじゃ──」

 ベッドへ押し倒されると、無理矢理体勢を変えられ背中にのし掛かられてしまった。抵抗する間もなく固さをとおやの増した陰茎が、ずぶッと押し込まれる。

「ああ、ぁぁぁッ……!」

「ッはぁ……ほたるのなか、マジで気持ちいい……」

「いやッ……あッ……あぁッ、あんッ……やめ……いや、あッあッ……いやあッ!いや!やだ!やだッ!……やめてよッ!」

「なんでだよ」

「いッ……一回ッて……うそ、つき!」

「お前好きだろ、後ろバック

「はあッ……あ、うッ……うそつき、とおやのうそ……つきッ!」

 悔しくて、言い返してやりたいのに口も身体も言うことをきいてくれない。認めたくない──認めたくないけれど気持ちが良い──もっとこのままでいたい、もっと気持ち良くなりたいという欲望が悔しさを上回る。

「あッ……あああッイク……イクッ……あ、あ、あぁッ!!」

「ほら、まだイケよ」

「いやああぁぁッ……もう、やめ……あ、だめ、だめなの、やめて……おねが、い、やめて、あッ……いッイク……イクぅ、う、あッ!!」

 腰が震え、とおやの温かな吐息が耳を撫でる。名前を呼ばれ、愛を囁かれ、何度も、激しく突かれた。

「今度お前が上な」

「はあッ……はあッ……んッ……あッ…………あああッ!」

 腕を引かれ起き上がると、今度は彼の腰に跨がるよう促される。首筋と胸に唇を落とされると、わたしは言われるがまま腰を振り始めた。

「騎乗位で、一人でイッてみろよ」
「イッたら……おわり?」
「どうだかな」

 とおやと話をするためにも、なんとかこの場をやり過ごさなければならない。今、何か言ったところで、どうせ力で捩じ伏せられてしまう。それならば──。

「やる気になったか?」

「うるさい……いッ……あぁッ……!」

「本当、エロいよなお前」

「だ……だれかと、くらべてるッ……でしょ!」

「どうかな」

「ああッ……はあッ……あ、あ、さいてい、最低ッ!」

「その最低男の上で腰振ってるのは誰だよ」

「くッ……う、うぁッ……だめッ……イキそ、あッ……!」

「上手にイケたら話し合おうか」

「ああッ……あ、あ、イッちゃうぅ……イッちゃう、も……だめ、あ、あ、イクッイクッ……あぁッ!!」

 一瞬の浮遊感。腰から下はがくがくと震え、上半身は今だ残る快感にふわりふわりと揺れ動く。動けないでいるわたしを押し倒し、股がり、挿入を果たすと、とおやはわたしの腰を力強く掴み、腰を打ち付け始めた。

「ッ……出すぞ……!」

「はあッ……はあッ……ああぁッ……!!」

「あッ……イクッ……う!!」

 絶頂に達したとおやの荒い息がわたしの耳を撫でる。体重を預けられ、抱きしめられ、動くことが出来ない。

「はあッ……はあッ……きらい……嫌い! 大っ嫌い!」
「うっせえな、俺は嫌いじゃねえんだよ!」
「それならちゃんと好きって言ってよ!」
「…………」
「どうして黙るよの……! 本当に何考えてるか分かんないよ! 最低!!」

 押し退けようにもやはり力では敵わない。手首を拘束されそのまま何度も唇を吸われた。

「ほたる……なあ、ほたる……」
「なによ……」
「まだやる?」
「はあ? 何言って……」

 しつこく唇を吸っていた舌が、首筋から胸へと降りてきた。唇はわたしの身体に激しく吸い付いているので、胸元に赤い痕がちらほらと残る。

「ちょっと、痕が……」
「嫌?」
「嫌よ、やめて」
「じゃあ、こっち吸って」
「なっ……ちょっと! んぐッ……!」

 背中を押されたわたしの眼前に迫ったのは、とおやの性器だった。ベタベタな避妊具をつけたまま項垂れたものを咥えるよう、後頭部をぐいと押される。

「ほら早く」
「待って、ゴム取るから……」
「ちょ……痛えな、優しくとれよ、んぅッ……」

 このままとおやの好きにさせてなるものかと、陰嚢を揉みながら陰茎をゆっくりとしごく。のろのろと立ち上がる陰茎の括れを吸い、亀頭をてのひらでぐりぐりと苛めると、 とおやは情けない喘ぎ声を上げ始めた。



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