リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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二年目 いざ、グラムナードへ!

魔法薬

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「魔法薬って、高いんですねぇ……。」

 翌日の朝。
まだ日も登らない早朝に荷馬車に乗り込んだ私達は、ポッシェが昨日買ってきた、『高速治療薬』とかいうお薬を前に三人でため息を吐く。
外はまだ暗いから、ちょっともったいないけどランタンで灯りを確保してある。
灯りをともしてるのは、私が怖がるからと言うのが理由。
特にね、荷馬車に乗ってるからより一層、暗いのが怖い。
理由は推して知るべし、だよ。
そんな訳で、ランタンから洩れるオレンジ色の光に照らされて、透明な小瓶に入ったその赤いお薬をみんなで眺めてる。


――綺麗な色。


 って言うのが、私の第一印象。
透明感があるのに深みのある赤い色で、これまた透明度の高い硝子製に見える瓶に入ってるからとっても綺麗。
もっと量が入っていたら、これがワインだって言われても信じると思う。
これが、切り傷なんかなら一瞬で直してくれるって言う触れ込みで売られてる『高速治療薬』。
小瓶の中には、ほんの100ml位しか入ってないのに八千ミルもしたらしい。
もうちょっと奮発したら、駅馬車に乗れちゃうよね。

「これよりも安いのはあったんだけど、一緒に買いに行ったカイトさんに買うのを止められちゃった。」
「なんで?」
「粗悪品だったり、使用期限が切れたものだったりだからお金をドブに捨てる様な物だって。」
「使用期限なんてのもあるのですねぇ……。」

 小瓶に張られた説明書きによると、使用期限は一カ月。
でも、これは買ってきたばっかりなのにも関わらず、既に後十日くらい。

「後ね、これ、僕達がお勤めすることになるかもしれない『グラムナード錬金術工房』のお薬なんだ。」

 言われて確認してみると、確かに説明書きの下の方に小さく、作られた工房の名前が書かれてる。
そうなると、俄然興味が湧いちゃう。
私は魔道具向きって言われたから、魔法薬向きじゃないかって言われたって言うアッシェはこう言うのが作れるようになるって事だよね?
たったのこれっぽっちしか入ってないお薬が、八千ミルで売れるんなら、あのお給料も納得かも。

「ちなみに、傷の大きさによって使う量が変わってくるみたい。
 僕が今回切られちゃった分程度なら、ほんの少し掛けるだけで大丈夫だって言われたよ。」
「じゃあ、次の村に着いたらすぐに試してみるです。」
「ん。
 馬車の中で使って、こぼしたら泣くに泣けない。」

 痛い思いをしてるのはポッシェだから、早く治してあげたい気持ちはある。
でも、旅費にも限りがあるから、出来るだけ無駄遣いは避けないと。
ちなみに、旅費はアルバイトでそれぞれが稼いだ分を纏める事にした。
取り敢えずグラムナードに着くまでは、運命共同体と言う訳。
必要になる馬車代と宿泊や食事にかかるお金にプラスアルファで雑費分はアッシェが管理。
そこからはみ出した分のお金はそれぞれのお小遣いと言う扱い。
今回の魔法薬は、プラスアルファ分から出したお金で買ったものだから三人の共有財産。
誰が怪我するかなんて、わかんないからね。
次は私の番かも。



 なだらかな傾斜を上り続けて行くと、やっと太陽のお出まし。
ランタンさん、おやすみなさい。
また明日よろしくね。

 村に着くと、一番最初にする事は馬を馬車から離して水と飼葉を与えて休ませる。
それが済むとお次は行商の準備。
行商の準備っていっても、一番前の荷馬車がそれ用に特化しているから品物を並べる手間は最小限なんだよね。
幌を上げて、手近にある木箱の蓋を上げるだけで良い。
販売は一番前の荷馬車で、一番後ろの荷馬車では買取という役割分担。
私とアッシェは、一番前の荷馬車で売り子のお手伝い。
ポッシェは一人、後ろの荷馬車で買い取った品物の積み込み係って事になってる。

 準備に関しては私達はノータッチ。
だから、その間にさっさとポッシェの傷の治療をしてしまう事に。
ポッシェに上着とシャツを脱いでもらって、上腕に巻かれた包帯を解く。

「うわ……。」

 血はすでに止まってるけど、傷口のまわりにこびりつく赤黒い血にちょっとクラっと来る。
だって、すごく痛そう!
聞いて思ってたのよりも、傷も大きい。
そう言えば、腕がこんなに切れてるって事は、服も破れたんじゃないの?
そう思って上着をよくよく見てみると、こっそりと繕われた跡がある。

「……ああ、アッシェが昨日の夜やってくれたんだよ。」

 私の視線を追ったポッシェが頷きながら、そう教えてくれた。


――ぐーすか寝てて、ごめん。


 ポッシェが買い物から帰ってきた時、私はすでに寝てたからね。
全然気づかなかった……。
なんだかしょんぼり。

 アッシェが用意してくれた綺麗な布で、ポッシェの傷口の周りを拭うとくっつきかけていた部分が裂けて血が滲む。
慌てて、差し出された魔法薬を傷口に慎重に振りかける。


――痛いの痛いの、とんでけー!


 私のそんな願いが届いたわけでもないんだろうけど、魔法薬が落ちた場所にあった傷口がみるみるうちに塞がっていく。
思わず、三人揃って「おおおおおお?!」って驚きの声を上げちゃったよ。
結局、結構大きかったポッシェの腕の傷は、瓶の中の四分の一も使わないで綺麗になくなってしまう。

「これは……高くても納得なのです。」
「ほんとだねぇ。」
「びっくり。」

 ついさっきまで、大きな切り傷があったなんて思えないくらい滑らかな肌を交互にさすりながら、私達はそんな感想を口にしあうしかなかった。
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