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二年目 見習い期間
事故
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アッシェに対する用事は終わったとばかりに追い出した後、ラエル師は改めて私の前へとやってきた。
つい、肩がびくっと揺れたのは、さっき迄の、あのやりとりを見てたせい。
――私は悪くない……よね?
ついつい、心の中で言い訳しちゃうのはただ単に私が小心者だから。
ラエル師はそれに対して面白そうに片眉を上げると、さっきまでとは打って変わって柔らかな笑みを浮かべる。
「今のうちに言っておかないと不味そうだったからね。
アッシェ君も、この後は上手くやるだろう。」
「……ん。」
それは、そう思う。
どっちかと言うと、そういうの得意な方だし。
むしろ、ソルさんのあの様子を見ちゃったから油断しちゃったんだと思うし。
一人頷いていると、ラエル師はジト目で私を眺めてるのに気付く。
「コンカッセ君も、目上の人間に対する言葉遣いじゃないね。」
「!」
指摘されて、『師』として仰ぐべき相手にすっかりため口を聞いてた事に気付いて、恥ずかしさのあまり顔が赤くなる。
アスタール師に改まった言葉遣いをしないでほしいって言われたからって、他の師達にまで同じようにするなんて、ダメダメすぎる!
慌ててラエル師に謝ると、彼はあっさりとそれを受け入れた。
「次からは気を付けなさい。」
「はい……。」
「では、少し触れさせてもらうよ。」
ラエル師の手が延ばされた先は、私のおでこ。
師が優しく額に触れると同時に、『何か』が私の中に入り込んでくるのを感じる。
これは、アレだ。
アストールちゃんにやられたヤツ。
ただ、その感触はアストールちゃんの時とは全く違う。
アストールちゃんの時は、そんなに嫌な感覚はなかった。
清涼な川のせせらぎの中で気分よく手足を伸ばして漂う様な、そんな感触だった気がするんだよね。
でも、今入り込んできた『何か』はナメクジが体の上を這いまわるような不快な感覚。
――キモチワルイ!!!
そう思った瞬間、私は咄嗟にその感触を押し返す。
「!?」
ラエル師は、息を呑むと同時に慌ててその手を引く。
手を引く寸前に、何かの焼ける様な音と一緒に嫌な臭いがした。
ラエル師は、さっきまで私の額に当てられていた手を胸に抱え込んで、愕然とした表情で私を見つめる。
その表情に、自分が何をどうやったのかは分からないものの、何かをやらかしたことを悟った。
「今の……。
自分でどうやったか、解ってる?」
少しして、とんでもないことをしでかしたと蒼くなって震えてる私に、師は穏やかな声音を取り繕って尋ねる。
なんで取り繕ってるって分かるかって、真っ青な顔色とじっとりと滲んだ脂汗!
あと、ちょっぴりだけど声が震えてる。
そんな状態なのに、ラエル師は、何度か深呼吸をしただけで平常心を取り戻すと、少し皮肉気な笑みを浮かべて見せた。
「そうだね、君がやったのは『驚いて手を振り払う』代わりに、『魔力で拒絶』しただけ。」
「まろ……く……れきょれ……ちゅ……?」
「言えてないよ。
魔力の殻が割れた後に、他者の魔力が入り込んでくるのは不快だから仕方のない事故ではあるけれど……。」
ラエル師は、そこまで口にすると目を眇める。
「コンカッセ君は、さっきポッシェ君とエリザ君が居た時に話した内容を聞いてなかったね?」
その事には心当たりがある。
思わず目を逸らすと、師はその時に話した内容を最初から丁寧に説明し直してくれた。
考え事に没頭していて聞いてなかった部分に、今、ラエル師がやろうとしてた事の説明があったから、キチンと聞いてれば反射的に抵抗しちゃうなんて事もなかったのかもしれない。
さっきの行為は、魔力の源に一番近い場所である額から他人の魔力を流し込むことによって、魔力の殻を破るという試み。
だから、おでこに触ってたのかと納得。
……トールちゃんは膝に乗ってただけだったから、流し込む箇所はどこでもいいのかも。
目的地である、頭にさえ届けば。
ちなみに魔力って、どんなに資質に恵まれた人であっても普通に生活しているだけだとまず使う機会がない。
家に魔導具があるような王侯貴族ならまだしも、一般庶民だと特にね。
この工房で、個々の部屋にあるっての自体がそもそもおかしいんだもの。
逆に言えば、魔導具をちょこちょこ使う機会のある現在の環境でなら、いつ、魔法が使えるようになってもおかしくないって事でもあるかも?
だから、もしもの事故がないようにって説明をしてくれてた……らしい。
それなのに私がきちんと聞いてなかったものだから、予防しようとしてた事故が起きちゃったと言う訳……。
私は、謝罪の言葉を口にしながらうなだれるしかなかった。
つい、肩がびくっと揺れたのは、さっき迄の、あのやりとりを見てたせい。
――私は悪くない……よね?
ついつい、心の中で言い訳しちゃうのはただ単に私が小心者だから。
ラエル師はそれに対して面白そうに片眉を上げると、さっきまでとは打って変わって柔らかな笑みを浮かべる。
「今のうちに言っておかないと不味そうだったからね。
アッシェ君も、この後は上手くやるだろう。」
「……ん。」
それは、そう思う。
どっちかと言うと、そういうの得意な方だし。
むしろ、ソルさんのあの様子を見ちゃったから油断しちゃったんだと思うし。
一人頷いていると、ラエル師はジト目で私を眺めてるのに気付く。
「コンカッセ君も、目上の人間に対する言葉遣いじゃないね。」
「!」
指摘されて、『師』として仰ぐべき相手にすっかりため口を聞いてた事に気付いて、恥ずかしさのあまり顔が赤くなる。
アスタール師に改まった言葉遣いをしないでほしいって言われたからって、他の師達にまで同じようにするなんて、ダメダメすぎる!
慌ててラエル師に謝ると、彼はあっさりとそれを受け入れた。
「次からは気を付けなさい。」
「はい……。」
「では、少し触れさせてもらうよ。」
ラエル師の手が延ばされた先は、私のおでこ。
師が優しく額に触れると同時に、『何か』が私の中に入り込んでくるのを感じる。
これは、アレだ。
アストールちゃんにやられたヤツ。
ただ、その感触はアストールちゃんの時とは全く違う。
アストールちゃんの時は、そんなに嫌な感覚はなかった。
清涼な川のせせらぎの中で気分よく手足を伸ばして漂う様な、そんな感触だった気がするんだよね。
でも、今入り込んできた『何か』はナメクジが体の上を這いまわるような不快な感覚。
――キモチワルイ!!!
そう思った瞬間、私は咄嗟にその感触を押し返す。
「!?」
ラエル師は、息を呑むと同時に慌ててその手を引く。
手を引く寸前に、何かの焼ける様な音と一緒に嫌な臭いがした。
ラエル師は、さっきまで私の額に当てられていた手を胸に抱え込んで、愕然とした表情で私を見つめる。
その表情に、自分が何をどうやったのかは分からないものの、何かをやらかしたことを悟った。
「今の……。
自分でどうやったか、解ってる?」
少しして、とんでもないことをしでかしたと蒼くなって震えてる私に、師は穏やかな声音を取り繕って尋ねる。
なんで取り繕ってるって分かるかって、真っ青な顔色とじっとりと滲んだ脂汗!
あと、ちょっぴりだけど声が震えてる。
そんな状態なのに、ラエル師は、何度か深呼吸をしただけで平常心を取り戻すと、少し皮肉気な笑みを浮かべて見せた。
「そうだね、君がやったのは『驚いて手を振り払う』代わりに、『魔力で拒絶』しただけ。」
「まろ……く……れきょれ……ちゅ……?」
「言えてないよ。
魔力の殻が割れた後に、他者の魔力が入り込んでくるのは不快だから仕方のない事故ではあるけれど……。」
ラエル師は、そこまで口にすると目を眇める。
「コンカッセ君は、さっきポッシェ君とエリザ君が居た時に話した内容を聞いてなかったね?」
その事には心当たりがある。
思わず目を逸らすと、師はその時に話した内容を最初から丁寧に説明し直してくれた。
考え事に没頭していて聞いてなかった部分に、今、ラエル師がやろうとしてた事の説明があったから、キチンと聞いてれば反射的に抵抗しちゃうなんて事もなかったのかもしれない。
さっきの行為は、魔力の源に一番近い場所である額から他人の魔力を流し込むことによって、魔力の殻を破るという試み。
だから、おでこに触ってたのかと納得。
……トールちゃんは膝に乗ってただけだったから、流し込む箇所はどこでもいいのかも。
目的地である、頭にさえ届けば。
ちなみに魔力って、どんなに資質に恵まれた人であっても普通に生活しているだけだとまず使う機会がない。
家に魔導具があるような王侯貴族ならまだしも、一般庶民だと特にね。
この工房で、個々の部屋にあるっての自体がそもそもおかしいんだもの。
逆に言えば、魔導具をちょこちょこ使う機会のある現在の環境でなら、いつ、魔法が使えるようになってもおかしくないって事でもあるかも?
だから、もしもの事故がないようにって説明をしてくれてた……らしい。
それなのに私がきちんと聞いてなかったものだから、予防しようとしてた事故が起きちゃったと言う訳……。
私は、謝罪の言葉を口にしながらうなだれるしかなかった。
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