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二年目 錬金術師のお仕事
スフェーンさんのお手伝い
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「今日から私のお手伝いもしてもらえるのよね、リエラちゃん」
昼食を摂るために食堂に入ろうとしたところで、スフェーンさんとばったり鉢合わせしたリエラに、彼は嬉しそうにほほ笑む。
「私だと仮止めが出来ないから、素体が無駄にならずに済んで助かるわ~」
「リエラも実技の練習になるので助かります」
二人そろって中に入ると、また後でと手を振り合ってそれぞれの席に向かう。
スフェーンさんのお手伝いのメインは、魔法文字の仮止めになるらしい。
リエラとしても、実戦の経験を積む事が出来る良いお仕事だ。
お昼ご飯を食べるメンバーが揃って食事が始まると、コンカッセちゃんがリエラに向かって身を乗り出す。
「午後から一緒?」
「うん。ただ、今日からは魔法具の実験のお手伝いをする事になるんだって」
「魔法具、作る?」
問いかけてくるコンカッセちゃんの目は、期待からキラキラ輝いてる。
まだ彼女は魔法具を作るところまではいけないけど、作るのを見られるというだけでテンションが上がってるらしい。
まぁ、気持ちは良く分かる。
リエラも去年はそうだったもの。
今でも、新しいものを作る時はワクワクするし。
コンカッセちゃんも、大分魔力の扱いが上手くなってきているから、今日から新しい事を始めるらしい。
まずは、リエラが去年、レイさんから教わった属性付加から。
アレが出来るようになると、こっそりとお小遣い稼ぎも出来るようになるし、コンカッセちゃん頑張れ~!
余談だけど、属性付加は所持属性が多い人ほど難しいんだと最近になって教わった。
うっかりすると、目的の属性じゃないものを付加してしまう事もあるんだって。
リエラは付加に失敗することはあったけど、別の属性を付加してしまったことはなかったから気付かなかったけど。
多分、運が良かったんだろうなぁ……。
みんなで和気あいあいと食事をした後、魔法具工房へと向かう。
さぁ~て、お仕事頑張るぞ!
スフェーンさんのお手伝いは、魔法文字の焼き付けをするのがメイン業務になる。
用意された素体に応じた、焼き付け用の薬剤の生成するのも仕事の一端。
明かりの魔法具を作る時に必要な薬剤と、半自動石臼を作るための薬剤はそれぞれ違う。
この薬剤の精製に必要となる属性は基本的には『地』属性なんだけど、植物を扱うのが苦手だと精製は難しい。
他の人に作ってもらうことも出来るけど、あまりにも精製する人と焼き付けをする人の魔力に差がありすぎると上手くいかないんだよね……。
魔法具の作り方を教わった時にアスタールさんが精製した薬剤を使って焼き付けをしようとして、出来ずに頭を悩ませたんだよね。
あの時はすごく困ったけど、今となってはいい勉強になったと思う。
「――随分とゴテっとした魔法文字ですね」
「出来る限り、流用できないようにって言う希望があったから色々考えてみたの」
話を聞いてみると、アスタールさんはスフェーンさんにも、ラエルさんにしたのと同じような注文を出しているらしい。
魔法具の方は、器具の形を変えれば同じ動作をするものでも違った用途に使えてしまうから、出来る限りそれを防ぐように……と。
――色々と理由は挙げられてたみたいだけど、まあ、魔法に関するのと根本的な理由は同じかな。
魔法具の方に関しては、そこまで神経質にならなくてもいいような気もするんだけど……。
なにはともあれ、委細構わずお仕事するか。
「じゃあ、まずはこれからやってみて」
最初は照明器具にゴテっとした装飾文字系の魔法文字を仮止めする。
仮止めって言うのは、素体に完全に馴染ませる前の段階で魔力の注入をやめた状態のこと。
スフェーンさんの属性は『地』と『魂』の二つなんだけど、どうも植物系を扱うことができないらしくて、焼き入れが出来ないんだそうだ。
ちなみに、テマリ大陸では『光』『時』『魂魄』『生命』の四属性は認識されていないから、スフェーンさんは一属性扱いだ。
認識されていない四属性を含めて数えるなら、二~三属性持ちは割とたくさんいるらしい。
「そういえば、スフェーンさんって元々はどうやって魔法具を作ってたんですか?」
「私? うーん……私に限らず、普通の魔法具師は素体に魔法文字を刻み込むの」
「……手作業?」
「そう。手作業で」
何気なく放った質問に返ってきた答えに、思わず自分の手を見つめる。
手で、魔法文字を刻み込む……?
やって出来ないことはないけれど、それは、ひどく根気のいる仕事だ。
リエラが魔法具を作る時の何十倍もの時間もかかる。
一緒になって聞いていたコンカッセちゃんも、同じように自分の手をじっと見てるから同じようなことを考えているんだろう。
「魔法文字を刻み終わると、グラムナードから仕入れた薬液を一文字分ずつ塗り込んでね、自然乾燥させるのよ」
「……高いわけですねぇ」
「納得……」
続く説明に、魔法具が高級品な訳だと納得する。
アスタールさんに教わった作り方が簡単な訳じゃないし、実際に出来るようになれるかどうかとなると……。
適正次第だと言わざるを得ない。
でも、あの方法が使えれば、手作業で魔法文字を彫るよりも明らかに早く魔法具を作ることができる。
量産もしやすいし。
「それじゃあ、作業はじめますね」
あらかじめ用意しておいた薬剤の瓶を開け、そこから魔法文字が飛び出してくる。
コンカッセちゃんが、その様子を静かに目を輝かせながら見ているものだから、なんだかリエラはくすぐったいような恥ずかしいような……何とも言えない気分になった。
昼食を摂るために食堂に入ろうとしたところで、スフェーンさんとばったり鉢合わせしたリエラに、彼は嬉しそうにほほ笑む。
「私だと仮止めが出来ないから、素体が無駄にならずに済んで助かるわ~」
「リエラも実技の練習になるので助かります」
二人そろって中に入ると、また後でと手を振り合ってそれぞれの席に向かう。
スフェーンさんのお手伝いのメインは、魔法文字の仮止めになるらしい。
リエラとしても、実戦の経験を積む事が出来る良いお仕事だ。
お昼ご飯を食べるメンバーが揃って食事が始まると、コンカッセちゃんがリエラに向かって身を乗り出す。
「午後から一緒?」
「うん。ただ、今日からは魔法具の実験のお手伝いをする事になるんだって」
「魔法具、作る?」
問いかけてくるコンカッセちゃんの目は、期待からキラキラ輝いてる。
まだ彼女は魔法具を作るところまではいけないけど、作るのを見られるというだけでテンションが上がってるらしい。
まぁ、気持ちは良く分かる。
リエラも去年はそうだったもの。
今でも、新しいものを作る時はワクワクするし。
コンカッセちゃんも、大分魔力の扱いが上手くなってきているから、今日から新しい事を始めるらしい。
まずは、リエラが去年、レイさんから教わった属性付加から。
アレが出来るようになると、こっそりとお小遣い稼ぎも出来るようになるし、コンカッセちゃん頑張れ~!
余談だけど、属性付加は所持属性が多い人ほど難しいんだと最近になって教わった。
うっかりすると、目的の属性じゃないものを付加してしまう事もあるんだって。
リエラは付加に失敗することはあったけど、別の属性を付加してしまったことはなかったから気付かなかったけど。
多分、運が良かったんだろうなぁ……。
みんなで和気あいあいと食事をした後、魔法具工房へと向かう。
さぁ~て、お仕事頑張るぞ!
スフェーンさんのお手伝いは、魔法文字の焼き付けをするのがメイン業務になる。
用意された素体に応じた、焼き付け用の薬剤の生成するのも仕事の一端。
明かりの魔法具を作る時に必要な薬剤と、半自動石臼を作るための薬剤はそれぞれ違う。
この薬剤の精製に必要となる属性は基本的には『地』属性なんだけど、植物を扱うのが苦手だと精製は難しい。
他の人に作ってもらうことも出来るけど、あまりにも精製する人と焼き付けをする人の魔力に差がありすぎると上手くいかないんだよね……。
魔法具の作り方を教わった時にアスタールさんが精製した薬剤を使って焼き付けをしようとして、出来ずに頭を悩ませたんだよね。
あの時はすごく困ったけど、今となってはいい勉強になったと思う。
「――随分とゴテっとした魔法文字ですね」
「出来る限り、流用できないようにって言う希望があったから色々考えてみたの」
話を聞いてみると、アスタールさんはスフェーンさんにも、ラエルさんにしたのと同じような注文を出しているらしい。
魔法具の方は、器具の形を変えれば同じ動作をするものでも違った用途に使えてしまうから、出来る限りそれを防ぐように……と。
――色々と理由は挙げられてたみたいだけど、まあ、魔法に関するのと根本的な理由は同じかな。
魔法具の方に関しては、そこまで神経質にならなくてもいいような気もするんだけど……。
なにはともあれ、委細構わずお仕事するか。
「じゃあ、まずはこれからやってみて」
最初は照明器具にゴテっとした装飾文字系の魔法文字を仮止めする。
仮止めって言うのは、素体に完全に馴染ませる前の段階で魔力の注入をやめた状態のこと。
スフェーンさんの属性は『地』と『魂』の二つなんだけど、どうも植物系を扱うことができないらしくて、焼き入れが出来ないんだそうだ。
ちなみに、テマリ大陸では『光』『時』『魂魄』『生命』の四属性は認識されていないから、スフェーンさんは一属性扱いだ。
認識されていない四属性を含めて数えるなら、二~三属性持ちは割とたくさんいるらしい。
「そういえば、スフェーンさんって元々はどうやって魔法具を作ってたんですか?」
「私? うーん……私に限らず、普通の魔法具師は素体に魔法文字を刻み込むの」
「……手作業?」
「そう。手作業で」
何気なく放った質問に返ってきた答えに、思わず自分の手を見つめる。
手で、魔法文字を刻み込む……?
やって出来ないことはないけれど、それは、ひどく根気のいる仕事だ。
リエラが魔法具を作る時の何十倍もの時間もかかる。
一緒になって聞いていたコンカッセちゃんも、同じように自分の手をじっと見てるから同じようなことを考えているんだろう。
「魔法文字を刻み終わると、グラムナードから仕入れた薬液を一文字分ずつ塗り込んでね、自然乾燥させるのよ」
「……高いわけですねぇ」
「納得……」
続く説明に、魔法具が高級品な訳だと納得する。
アスタールさんに教わった作り方が簡単な訳じゃないし、実際に出来るようになれるかどうかとなると……。
適正次第だと言わざるを得ない。
でも、あの方法が使えれば、手作業で魔法文字を彫るよりも明らかに早く魔法具を作ることができる。
量産もしやすいし。
「それじゃあ、作業はじめますね」
あらかじめ用意しておいた薬剤の瓶を開け、そこから魔法文字が飛び出してくる。
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