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2巻
2-1
しおりを挟むプロローグ
リエラは、エルドランという町にある孤児院出身の十二歳。
基礎学校で適性があると言われたお仕事は、なんと錬金術師! 大金を稼げそうなお仕事に適性があると聞いて喜んだんだけど……
職業斡旋所に行ってみたら、めぼしい求人が全くないとか、一体どういうこと?
スッカスカの求人票を前に、リエラは途方に暮れた。そんなリエラの前に現れたのが、長耳族のお兄さん、アスタールさんだ。アスタールさんは『グラムナード錬金術工房』の工房主で、黒髪に金色の瞳をした、国が傾くんじゃないかというほどの美人さん。
そこからはトントン拍子で弟子入り話が進み、工房がある『迷宮都市グラムナード』へとリエラは旅立つことになった。孤児院がお世話になっている商人のグレッグおじさんが、行商の馬車に同乗させてくれたのは本当に幸運だったなぁ……
盗賊に襲われながらも辿り着いたグラムナードの町は、故郷とは全く雰囲気の違う町だったから驚いたのなんの。
工房で暮らしているのはリエラ以外、みーんな、アスタールさんの親戚。そして美形ぞろいで、リエラは珍獣にでもなった気分だったよ。
アスタールさんは、ちょっと物忘れが激しいところがあるけれど、いいお師匠様……のような気がする。表情が動かない代わりに、耳がピコピョコ動いて感情表現をするのは可愛いかも。
アスタールさんの双子の兄であるアスラーダさんは、何故かリエラが同行させてもらった隊商に交じっていたんだけど、アレはなんでだったんだろう? 未だ聞く機会がなくて謎なんだよね。彼はとても面倒見のいいお兄さんで、町の案内をしてくれたり、採集の仕方を教えてくれたりと、お世話になりっぱなしです。
調薬を教えてくれるのはセリスさんという、麗しのお姉様。綺麗で優しくて料理が上手で……もう、欠点が見つかりません! 将来、ああいう風になれたらいいなぁ。
それから、工房併設の店舗で売り子をやっているルナちゃんとも仲良くなれたよ。セリスさんの妹だけど、おっとりとしたお姉さんとは対照的に快活な印象だ。
何はともあれ、リエラは温かく迎え入れられた。その上、グレッグおじさんとの個人的な取引まで認めてもらえたものだから、魔法薬作りに夢中になったんだよね。何せ、売り上げはそのまま孤児院に寄付できるんだもの。
でも、魔法薬を作るだけじゃなく、素材の採集方法なんかも学ばなくちゃいけない。
迷宮都市の由来となった迷宮に、採集をしに行くこともある。
ある日その迷宮で、孤児院時代の喧嘩友達である猫耳族のスルトと再会した。まさかそれがきっかけで後日、スルトと再び同じ屋根の下で暮らすことになるとは思わなかったよ。でも、気心の知れた相手が近くにいるのはいいものだと最近思う。
迷宮には危険な生き物もいて、初めて戦った時、リエラが血を見ると卒倒しちゃうことが分かったのには参ってしまった。でも、魔法薬作りの方は順調に上達してきているし、弱点を克服しつつ、これからも見習い生活を頑張るぞ~!
育成ゲーム
グレッグおじさんとの取引を終わらせたあと、アスタールさんの執務室を訪れる。
目的は取引内容についてのご報告。それから、前に言っていた『面白い遊び』とやらを教わるためだ。
アスタールさんが『遊び』なんて言うと違和感があるけど、一体どんな遊びなんだろう?
「入りたまえ」
扉を開けると、アスタールさんはすぐ目の前に立っていた。声が近いとは思ったけど、まさかこんなに至近距離にいたとは……
カゴを持って水晶の前にいるけど、何をしていたんだろう?
「取引は無事終了したかね?」
リエラに一瞬だけ視線を向けると、身振りでいつもの場所に座るようにと示す。それから、改めて水晶に向き直ると何かの作業を再開した。
「はい。この間セリスさんに教えてもらったケアクリームもお試し用に持っていってもらったので、次回の取引で感想を聞くのが楽しみです」
「ケアクリーム……?」
ひたすら作業に没頭していたアスタールさんが、『ケアクリーム』という言葉に反応して、やっとリエラの方を見る。
「肌荒れとかにいいらしいですよ。セリスさんは確か……キソケショーヒンとかって言っていたかな?」
セリスさんはアスタールさんの従妹で、リエラに魔法薬の作り方を教えてくれている。綺麗で優しくて、まるで女神様のような、リエラが尊敬してやまない女性だ。
「――ああ、なるほどあれか」
そう言いながら、アスタールさんはまたしても作業に戻る。そんなに熱心に何をやっているんだろう? と思いつつ、手元のカゴを覗き込んでみた。
「魔力石……?」
思わず呟くと、アスタールさんは頷いて魔力石を手に取る。
「うむ。よく『視て』いたまえ」
アスタールさんが摘まんだ魔力石を水晶に押し当てると、魔力石の姿がすうっと消えた。次のものも、その次のものも。アスタールさんが繰り返しているのは、魔力石を消す作業みたいだ。
「!?」
もしかして、と思って『魔力視』を行う。そうすると、何が起こっているのかが『視え』た。摘まんで水晶に押し当てる直前、魔力石の周りを魔力の薄い膜が覆う。その状態の魔力石が水晶に押し当てられると、そこを起点に水晶の表面にも魔力の膜が広がって、その中に魔力石が溶けていく。
ほんの一瞬で終わってしまう、そんな早業だ。
「『視え』たようだな」
思わず息を呑むと、アスタールさんはそう口にしながらリエラに向き直る。
「魔力石『育成ゲーム』、覚えてみるかね?」
「!?」
え、今のってリエラにもできるものなの? そう思って固まっていると、アスタールさんはリエラの両手に一つずつ魔力石を持たせる。
「……あの、今のって、リエラにもやれるものなんですか?」
やっと声が出た。
その問いに、アスタールさんは当然とばかりに頷く。
「薬草に魔力を含ませる時と、要領はそう変わらない。魔力の膜で両方の石を覆ったら、石と石を触れ合わせる。やり方はそれだけだ。やってみたまえ」
石とアスタールさんを交互に何回か見たあと、言われた通り試みる。けれど、魔力の膜で覆うって――思った以上に難しい。リエラの技量だと、膜と呼ぶには随分と分厚い魔力が石を包み込む。その状態で石を触れ合わせようとしたけれど、膜が反発し合って上手くいかない。
「頑張りすぎだ」
アスタールさんの言葉に少し魔力の量を減らすと、膜そのものが消えてしまう。
もう一度。
さっきよりは薄い魔力で石を包み込めたけど、まだ多いみたい。
「んー……? むむむむむ」
唸り声を上げながらも挑戦を続けていく。やっと成功したのは、七回目だった。魔力の膜がいい感じの厚さになった瞬間、片方の石が吸い込まれるように消える。リエラの手の中に残ったのは、さっきよりも少しだけ重くなったように感じる魔力石が一つ。
「……できた!」
パッと顔を上げると、アスタールさんに頭を撫でられた。
「では、魔力操作の練習として、今の作業を寝る前に必ず行いたまえ」
あ、これはもう一人でやっていいんだ。指導がこの一回で終わるらしいということに、ちょっと拍子抜けした気分になる。
「魔力を消耗するから無理をしないように」
育成は、計画的に?
確かに少し魔力を持っていかれている感じがしたから、気を付ける必要はありそうだ。
「内包魔力が十万程度になるまで育てたらここに持ってきたまえ。目安は、直径十センチほどになった頃だろう」
「……はい! 頑張ります!!」
元気良く返事をして、アスタールさんに渡されたカゴを抱きしめる。
「この中の魔力石、全部使っていいんですか?」
「うむ。好きに使って構わない」
めちゃくちゃ嬉しい!
リエラは、この遊びを早くやりたいとうずうずしながら、アスタールさんの執務室をあとにする。育てた魔力石をどうするのかについて聞いていないと気が付いたのは、カゴの中の魔力石を全て一つにまとめてしまったあとのこと。
――まあ、その時になれば教えてもらえるんだから、急いで聞かなくてもいっか。そう思いつつ、ベッドの中で目を閉じた。
『育成ゲーム』を教わってから、あっという間に時間が過ぎて、もう月末。相変わらず、リエラは調薬と体力作りに明け暮れる毎日だ。
それはそれとして、最近はもうすっかり『育成ゲーム』にハマっている。なんというか、少しずつ魔力石が大きく育っていくのが楽しくって、毎日寝る前にせっせと育てちゃうんだよ。最初に渡された魔力石なんて、その日のうちになくなっちゃったからね……
毎週、最初と同じ量が支給されるけれど、それじゃあ、あんまり楽しめない。だから今は、スルトが迷宮で集めてきたのを仕入れて育てている。だけど――
困ったのが、魔力石を買うお金のことだ。このペースで魔力石を育てていくと、リエラのお給料があっという間になくなってしまう。だから、お給料とは別に、お小遣い稼ぎをする方法が欲しいんだけど……。リエラ的には、工房に迷惑がかかる方法はダメだ。休みの日に個人的に魔法薬を売る――なんてことは、禁じ手。
何かいい手はないものか、と思い悩む日々が続いている。
それはそうと、『育成ゲーム』を始めてから、魔導具なしでの調薬ができるようになったんだよ。
魔力の扱いが上手くなったように感じるから、その成果なのかもしれない。それまで感じていたモヤモヤが解消されて、より一層、調薬が楽しくなった。
そうそう、レシピも一つ増えて、『魔力回復促進剤』の調薬を始めている。
今まで作っていた魔法薬は『高速治療薬』。簡単に言うと、怪我が早く治る魔法の傷薬だ。対して『魔力回復促進剤』は、魔力を回復するお薬で、飲むと一時間の間に最大魔力の二割程度までがじわじわと回復する。元の魔力が一万あった場合には、二千程度まで少しずつ回復していく計算だ。
ちょっと回復の仕方に癖があるから、使いどころが難しいかもしれない。でも、リエラにとっては便利で、自分用も作っている。これを使うと、魔力を使ったそばからじわじわ回復してくれるからね。休憩しなくても魔力が回復してくれるのは、すごく便利だ。
そういう使い方をしていると、セリスさんにやんわりと叱られちゃうんだけど――
このお薬、甘くて美味しいからついつい飲んじゃうんだよ。スルトにこっそりそう話したら、ものすごい呆れ顔をして『孤児院のチビ達と同レベルだな』って――。ちょっとひどいと思う。
何はともあれ、色々とやりがいも増えてきて、とっても嬉しい。
そんな日々を過ごす中、アスタールさんから突然のお呼び出しがかかった。
「セリスから報告があったのだが、魔導具なしでの調薬をこなせるようになったとか」
急な呼び出しだった上に、この質問。
リエラは嫌な予感がしながらも、正直に答える。
「あ、はい。『育成ゲーム』のおかげか、魔力の操作が上達したみたいです」
「それは良かった。では、明日からは外町出張所でレイから色々と学んでほしい」
「レイさんから、ですか?」
グラムナードは中町と外町に分かれていて、中町にある工房とは別に、外町に出張所がある。そこで店番をしているのが、セリスさんの弟であるレイさんだ。
元々、明日はセリスさんのもとで調薬を学ぶ日だった。外町出張所に行くってことは――調薬はしなくていいんだろうか。
「うむ。レイは出張所の管理の他に、簡単な魔法具を作っているのだ」
魔法具っていうのは、魔力石を動力とする道具のこと。使う人の魔力を動力とする魔導具とは似て非なるものだ。
アスタールさんの話し方からすると、もう決定事項っぽい。リエラは渋々頷いた。
「……はい、頑張ります」
ぶっちゃけ嫌だなんて、言えないもんなぁ……
そんなわけで、リエラは明日から早速、外町の出張所でお仕事することになった。これまでの頑張りが認められた結果だけど、セリスさんと仕事場が離れちゃうのか……
なんというか、しょんぼりしてしまう。工房に帰ってくればすぐに会えるとはいえ、それはそれ、これはこれだ。でも、お仕事だし仕方がない。それに考えてみたら、魔法具の作り方も教わりたかったんだもの。いい機会だと思おう。
セリスさんとお話しする機会が減っちゃうのは寂しいけど、作れるものが増えるのはいいことだ!
何はともあれ、今日から外町出張所でお仕事です。セリスさんが用意してくれたお弁当を持って、レイさんと一緒に出勤準備中。
「今日からリエラちゃんが工房にいないなんて……」
「セリスさん……。リエラも、セリスさんと離れるなんて……!」
セリスさんがハンカチを目元に当てて泣き真似をする。リエラはそんなセリスさんにそっと近寄り見つめ合うと、二人でがっしりと抱擁し合う。
「あー……姉さんもリエラちゃんも、開店が間に合わなくなるからそれくらいにしておいて?」
レイさんは、それを見ながら苦笑する。
今まで彼とは、食事時に少し喋る程度のお付き合いだった。でも、今日からは一緒に外町出張所で働くのだから、信頼関係を構築できるように頑張らないとね。
レイさんはセリスさんの弟だけあって彼女と顔立ちがよく似ている。それだけでリエラは親近感を覚えるんだけど、彼も同じように感じているかは別だからね。
セリスさんは一瞬リエラから離れて、もう一度抱きしめ直してくれた。
うわ……幸せ!
セリスさんてば、優しいいい匂いがするんだもん、リエラはいつも通り、うっとりしてしまう。
「リエラちゃん、レイに何かされそうになったら……」
そう言いながら、膝で何かを蹴り上げる動作をする。
「こうですか??」
「そうそう。上手よ、リエラちゃん」
リエラが真似すると、セリスさんは満足げに何度も頷く。それを見ているレイさんの腰が、ちょっと引けている。
「そんなこと教えて……」
諦めたような口調でため息交じりにレイさんが呟く。それとほとんど同時に、玄関からアスラーダさんが顔を覗かせた。
「レイ、荷運びをするから、今日は同乗させてくれないか?」
「了解。……ほら、アスラーダ様も一緒だし……ね? 何も心配するようなことはないよ」
肩を竦めながらそう言って、レイさんはヤギ車の荷台に座るスペースを空けに行く。
御者台に三人は座れるけど、アスラーダさんが行くってことはスルトも一緒だ。そうなると一人分、席が足りなくなっちゃうものね。
荷物を積み直して、全員がヤギ車に乗り込むと、出発の挨拶をする。
「それじゃセリスさん、行ってきます!」
「お夕飯の前にはちゃんと帰ってくるのよ?」
セリスさんってば、随分と心配性だ。リエラのことをそれだけ大事に思ってくれているのかと思うと嬉しくもあり、こそばゆくもあるのだけど。
「レイ。移動中に出張所での仕事について軽く説明してやったらどうだ?」
「ああ、確かに。それじゃあ、少し説明させてもらってもいいかな、リエラちゃん?」
アスラーダさんの提案のおかげで、外町までの道中、出張所のお仕事について軽く説明してもらえることになった。これは地味にありがたい。実は、レイさんが出張所でどんなお仕事をしているのかよく知らないんだよね。
「朝は、探索者がたくさん来る時間帯だね。『高速治療薬』を買っていく人が多いけど、武器に魔力を付与する目的で来る人も多いかな」
「魔力の付与……ですか?」
魔力の付与って、初めて聞くんだけど。一体どんなことをするのかと目を瞬かせていると、レイさんは説明を続ける。
「そう、魔力の付与。やり方は魔導具なしで魔法薬を作れるようになっていれば、すぐに覚えられると思うよ」
更にアスラーダさんも補足してくれた。
「狩る対象によっては、魔力をまとった武器でないと攻撃が通用しないことがある。だから、探索者にとって必要なサービスなんだ」
「「へー、なるほど」」
あ、スルトとハモった。どうやら、スルトもその辺のことは知らなかったみたいだ。
「この魔力の付与って使う魔力石によって持続時間が変わるから、朝一番に来てかけていく人が多いんだよ」
「朝一番にかけることで、有効に使える時間が多くなるからだな」
「そうそう。内包魔力が九十のものだとお手頃価格だから、九時間分をかけていく人が多いね」
「ああ……魔力石も内包魔力が百を超えるといきなり値上がりするしな」
どうやら魔力の付与には魔力石を使うみたいだ。もしかして、魔力石の内包魔力によって持続時間が変わるのかな?
「それよりも、魔力付加の方にはあまり依頼はないのか?」
「そうだね。付加だと施術に時間もかかるから、午前中は受け付けてないよ。依頼を受けてから付加する武器を預かって、翌日お渡しが基本かな」
途中で話が横に逸れたせいもあってか、ここまで聞いたところで出張所に着いてしまう。残念。もっと詳しく聞いておきたかった……
アスラーダさん達は、荷物を出張所の中に運び込むと、もう迷宮へと出発だ。ちょっぴり不安に感じるのは、これまでレイさんとはあまり交流がなかったせいかな。
「それじゃあ、リエラちゃん。今日は一日、よろしくね」
「はい! 頑張ります!」
リエラは気合いを入れ直すと、レイさんと一緒に開店準備に取りかかった。
「おい、『高速治療薬』をこの瓶に十本だ! 早くしてくれ!!」
「はい、只今! 一万ミルに瓶代が三千ミルで合計一万三千ミルになります」
「こっちは二十本に、『治療丸』を十袋頼む」
「はい、只今! 二万ミルに瓶代六千ミルと、四万ミルで合計六万ミルになります」
「嬢ちゃん、計算間違ってんぞ。六万六千ミルだろ」
「うひゃー! ごめんなさい!!」
出張所の朝は、サラッと聞かされてた以上の忙しさだ。怒涛のように時間が流れ、気が付いたら十一時を過ぎていた。
人の波が引いたあと、リエラはカウンターの陰に思わずへたり込む。
「ひとまずお疲れ様、リエラちゃん」
ちょっと同情するような笑みを浮かべて、レイさんがリエラを労う。
「いつもこんなに人が来るんですか?」
彼が渡してくれた冷たいお茶を一息に飲んでから訊ねると、肯定の返事が返ってくる。
「これでも、探索者協会への委託を始めてから大分マシになったんだけどね。ここまで忙しいのは……多分、昨日の閉店後に町に着いた探索者が多かったんだと思うよ。普段は、お昼過ぎに来る方が多いしね。それでも、今日はリエラちゃんがいたから、魔法薬の方をお願いできて随分と助かったよ」
レイさんはそう言ってくれたものの、リエラは自分の力不足を感じて落ち込む。午前中のお仕事は、たったの二時間ちょっと。それなのにこうしてへたり込んでいるのがその証拠だ。体力作りを今まで以上に頑張ることにして、レイさんが注いでくれたお代わりを飲み干す。
「さて。午前中の波も終わったし、なくなった属性石の在庫を補充しないとね」
「属性……? 魔力石の一種、ですか?」
「そう、魔力石」
レイさんが取り出したのは、たくさんの魔力石が詰まった箱。中から一つ摘まみ出すと、リエラに見えるようにゆっくりと地の魔力を注ぎ込む。
透明なガラス玉のようだった魔力石が、地の魔力を取り込んで、茶色に染まった。
「こうやって魔力石に属性を付加したものを属性石と呼ぶこともあるんだ。属性石は武器に属性を付与するために必要だから、これも大事な商売道具っていうわけ」
そう言って微笑むと、リエラの手にも魔力石を一つ置いてくれる。
「リエラちゃんも、もちろん、やってみるでしょ?」
いきなりやらせてもらえるとは思ってなかったからビックリしたものの、すぐに魔力石を握りしめて嬉々として頷く。
「それじゃ、僕が作れない火か水をお願い」
「はい」
魔力石を手の平に乗せて、火の魔力を石にまとわせる。気分は魔力石『育成ゲーム』だ。あっちは属性を意識せずに二つの石に魔力をまとわせて、一つにする。今回は属性を意識しつつ、まとわせた魔力が染み込むようにイメージしてみた。魔力石は、リエラのまとわせた魔力を嬉しそうに取り込んで赤く染まる。
「いいね。その調子で火をあと十九個、水を二十個頼んでいいかな?」
「分かりました。火十九個と水二十個ですね」
リエラは渡された魔力石に、喜んで魔力を付加していく。
途中で失敗したのもあったけど、お昼になる前には頼まれた分の付加を終えられた。
失敗したのは、複数を一度にやろうとしたせいだ。二つ一緒に手に乗せてやったら『育っ』ちゃったんだよね……。別々の手に乗せてやるのはちゃんとできたから、一緒の手に乗せなければいいことが分かったんだけど。
失敗しない方法が分かってからは、別々の手に魔力石を持って付加していった。
「うーん……。これは、困ったね」
そう言いながら苦笑するレイさんの手の中には、『育っ』ちゃった水の魔力石。
「ごめんなさい……」
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