リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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二年目 疑惑の種

輝影神殿にて

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 昼になるよりもずっと早く、輝影神殿の前の広場は人で一杯になった。
落ち着かない様子のグラムナードの民達だったけれど、全体から見えるように設置されている舞台上にアスタールさんが現れる。
リエ――私達、工房組は広場の外側にひと固まりになってそれを見守る形だ。
アスタールさんの姿を確認すると、グラムナードの民は一人また一人と口を閉ざしていき、やがて広場全体に静寂が広がる。
そうしてからやっと、アスタールさんは話し始めた。

 突然の招集に関しての謝罪から始まったお話は、ちょっぴりリエラが考えていたのとは違うものだ。
声を特別はっているわけでもないのに、広場中に声が響いているのは風魔法を使って音を運んでいるからだろう。
昨日の晩の件に関しては、コネコ大陸の方で何かの異変が起きているらしいということになっていて、その調査のために彼の大陸へと向かう心づもりだという言葉でしめられた。
困惑と不安の声が上がる中、一人の男性が舞台の上にいるアスタールさんへと問いを放つ。

「錬金術師様が――輝影様がいなくなったら、私達はどうすればいいのですか!?」

 半ば悲鳴のように口にされたその言葉。
それを聞いた途端、人々の中に同意する呟きが広がっていく。
はじめは呟く程度の声だったものが、だんだんとはっきりとした言葉に。
そして怯えたような叫び声に変わっていくのはあっという間だ。
そもそもが不安を口にしているうちに、それは不信感に成長してしまう。
そうなったら、次に起こるのは? ――暴動だ。
緊張感が高まる中、不意に、広場が静寂に包まれる。

「落ち着きたまえ」

 驚いたように、声を上げていた人々が隣の人を見る。
彼等は自分の口が動いているのに、自分の声はおろか相手の声も聞こえないことを理解すると、舞台上のアスタールさんへと畏怖の目を向けていく。

「なにも、すぐに出発しようと言う訳ではない。出立の時までに、私がいなくとも何とでもなるように手配していくつもりだ」

 なおも何かを口にする人々へ向ける、アスタールさんの目は冷え切っている。
それに気が付いた人から順に膝をついて許しを請うように、地面へと額をこすりつけ始めた。

「謝罪は必要ない」

 アスタールさんはその行為を切り捨てると、言葉を続ける。

「現状でもすでに、私の庇護などなくとも不足の無い環境なのではないかと思うのだが……。とはいえ、祖父がコネコ大陸よりこの地へと逃れてきた時につき従ってきた者達の子らを、何の支えもなく放り出すつもりは元よりない」

 ここで、ため息を一つ。

「だが、あらかじめ知らされていたとしても、私がいなくなることによって不安を感じるのも理解はできる。そこで、私がコネコ大陸へと赴いた後もしばらくの間は代行者であるリエラを置いていくことにしよう」

 それを聞いて、隣に立つアスラーダさんが息を呑む。
リ――私は、彼がギュッと握りしめた拳をそっと包み込むようにすると、その手から少し力が抜ける。
大丈夫。
これは、リエラ自身が提案した事だから。
周囲の人達から向けられる、すがるような視線に答えるように頷いてみせると、彼等は一様にほっとした表情を浮かべた。

「ただしその期間は、私がリエラの力を必要とするまでだ」
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