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二年目 疑惑の種
二人の見たもの
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「ところで――」
折角、機嫌が良くなったところで切り出すのはためらわれたけれど、いつかは聞かなくちゃいけないことだと割り切ることにして口を開く。
「アスタールさんは、何を見たんですか?」
「……何を、と言うと?」
返ってきたのは、案の定というかなんというか。
遠回しにではあるけれど、話したくないという返事だった。
「昨日の晩です」
昨日の晩の事件について、ふと、思ったのだ。
『あれは本当に、リエラがりりんさんの死を想像させることを口走ってしまっただけで起きたことなのか?』って。
多分、あの発言が切っ掛けになったんだろうとは思うんだけれど、それだけで起きた事態じゃないような気がする。
アスタールさんがむっつりと黙り込む中、カツカツと音を立てながらヤギ車は軽快に川に向かって進んでいく。
工房まで、あと十分もすれば着くだろう。
「リエラが見たのは、誰かの古い記憶でした」
視線を逸らしていたアスタールさんが、勢いよくこちらに顔を向ける。
「光猫族の少年が、輝影族の少女と恋に落ちて、彼女の死と同時に世界が闇に包まれるんです」
「――それで?」
「細かいことは良く分かりませんでしたけど……。彼女の後を追ったみたいです」
一度、先を促した後にはまた黙り込んでしまったアスタールさんを横目で伺いながら、言葉を足す。
「多分、輝影族の少女のお兄さんにお役目を押し付けて……」
「押し付けてない。あれは、彼からの申し出だ」
わざと選んだ維持の悪い言い回しに、咄嗟にアスタールさんが反論する。
なるほど。
この反応からすると、アスタールさんはリエラと同じものを違う視点で見たということか……
ついでに音声付きだったみたいだから、何がどうなっていたのかはアスタールさんの方が良く分かっているんだろう。
「そうなんですか? りえ……私が見たのは、上から見下ろす形だったものなので、交わされた言葉は分からないんですよ」
自分の見たものについて補足を入れると、アスタールさんの耳が少しずつ萎れていく。
両耳が丁度直角に垂れたところで止まったってことは、『してやられた』ってところか。
「光猫族の少年を見た時に、り……私は何故か『輝影の支配者』だって思ったんです」
「光猫族の少年? 輝影族ではなく?」
驚いたのか、アスタールさんの耳が激しく上下する。
どうやら視点は、光猫族の少年だったっぽい。
光猫族の少年は自分の姿に無頓着だったように見えたし、アスタールさんはあの白昼夢の中で視点の主を見る機会がなかったんだろう。
「り……私が見た『輝影の支配者』は光猫族でしたよ」
「その、光猫族の少年が『輝影の支配者』だというのは、間違いのないことなのかね?」
「状況的にはそうじゃないかと思いますけど……証拠はありませんね。同じものを見た人がいるかどうかも分かりませんし。わた――しが最後に見たのは、その光猫族の少年が輝影族の少女の兄に自分の力を移したんじゃないかと思われる場面だったので」
アスタールさんの確認にそう返すと、思案を巡らせているのかゆるゆると耳が上下し始める。
本当ならゆっくりと考える時間をあげたいところだけど、工房の屋根がうっすらと見えてき始めた。
工房に着いたら、アスタールさんはアスラーダさん達の相手をしなくちゃいけない。
リエラと話す時間をとれるのは、明日以降になるだろう。
「――輝影族の少女のお兄さんがアスタールさんにそっくりだったことが気になるんです」
折角、機嫌が良くなったところで切り出すのはためらわれたけれど、いつかは聞かなくちゃいけないことだと割り切ることにして口を開く。
「アスタールさんは、何を見たんですか?」
「……何を、と言うと?」
返ってきたのは、案の定というかなんというか。
遠回しにではあるけれど、話したくないという返事だった。
「昨日の晩です」
昨日の晩の事件について、ふと、思ったのだ。
『あれは本当に、リエラがりりんさんの死を想像させることを口走ってしまっただけで起きたことなのか?』って。
多分、あの発言が切っ掛けになったんだろうとは思うんだけれど、それだけで起きた事態じゃないような気がする。
アスタールさんがむっつりと黙り込む中、カツカツと音を立てながらヤギ車は軽快に川に向かって進んでいく。
工房まで、あと十分もすれば着くだろう。
「リエラが見たのは、誰かの古い記憶でした」
視線を逸らしていたアスタールさんが、勢いよくこちらに顔を向ける。
「光猫族の少年が、輝影族の少女と恋に落ちて、彼女の死と同時に世界が闇に包まれるんです」
「――それで?」
「細かいことは良く分かりませんでしたけど……。彼女の後を追ったみたいです」
一度、先を促した後にはまた黙り込んでしまったアスタールさんを横目で伺いながら、言葉を足す。
「多分、輝影族の少女のお兄さんにお役目を押し付けて……」
「押し付けてない。あれは、彼からの申し出だ」
わざと選んだ維持の悪い言い回しに、咄嗟にアスタールさんが反論する。
なるほど。
この反応からすると、アスタールさんはリエラと同じものを違う視点で見たということか……
ついでに音声付きだったみたいだから、何がどうなっていたのかはアスタールさんの方が良く分かっているんだろう。
「そうなんですか? りえ……私が見たのは、上から見下ろす形だったものなので、交わされた言葉は分からないんですよ」
自分の見たものについて補足を入れると、アスタールさんの耳が少しずつ萎れていく。
両耳が丁度直角に垂れたところで止まったってことは、『してやられた』ってところか。
「光猫族の少年を見た時に、り……私は何故か『輝影の支配者』だって思ったんです」
「光猫族の少年? 輝影族ではなく?」
驚いたのか、アスタールさんの耳が激しく上下する。
どうやら視点は、光猫族の少年だったっぽい。
光猫族の少年は自分の姿に無頓着だったように見えたし、アスタールさんはあの白昼夢の中で視点の主を見る機会がなかったんだろう。
「り……私が見た『輝影の支配者』は光猫族でしたよ」
「その、光猫族の少年が『輝影の支配者』だというのは、間違いのないことなのかね?」
「状況的にはそうじゃないかと思いますけど……証拠はありませんね。同じものを見た人がいるかどうかも分かりませんし。わた――しが最後に見たのは、その光猫族の少年が輝影族の少女の兄に自分の力を移したんじゃないかと思われる場面だったので」
アスタールさんの確認にそう返すと、思案を巡らせているのかゆるゆると耳が上下し始める。
本当ならゆっくりと考える時間をあげたいところだけど、工房の屋根がうっすらと見えてき始めた。
工房に着いたら、アスタールさんはアスラーダさん達の相手をしなくちゃいけない。
リエラと話す時間をとれるのは、明日以降になるだろう。
「――輝影族の少女のお兄さんがアスタールさんにそっくりだったことが気になるんです」
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