228 / 263
二年目 山道視察
仲は良いけど……
しおりを挟む
ベッドの上で考え事をしているうちに、ウトウトしていたらしい。
帰ってきたラヴィーナさんが扉を叩く音で目が覚めた。
「あら、寝てたのね」
慌てて扉を開けると、彼女はリエラの横をスルリと通り抜け、使っていない方のベッドの上に手に提げていた大きなリュックを投げ出す。
そのとたん、空っぽに見えたリュックが大きく膨らんだ。
どうやら『収納』の魔法が解けたみたい。
「何を買ってきたんですか?」
ラヴィーナさんがザックの中から、同じものを二つ引っ張り出すのを見て、リエラは首を傾げた。
三つも同じものは必要ないんじゃ……?
「明日から歩きでグラムナードまで戻るでしょう? その間に必要な荷物を入れるのに必要だと思って買ってきたのよ」
「……こんなに大きなリュックを?」
「七日――八日分の食料に、野宿する時用の毛布は最低限持って行かないと駄目でしょう? 探索者と同じ目線で見るのが目的なんだもの。最低限の荷物はそれぞれで持ち運ぶべきだわ」
「おおう……」
『収納』の魔法を使って、ズルする気満々でした!
でも、言われてみれば確かにその通り。
身軽な姿で歩いても、同じものは見えないだろう。
とはいえ……基本、工房に閉じこもっているリエラは同じ行程をこなせるだろうか……?
かなり不安だ。
ラヴィーナさんはそう話しながら、今度はベルトポーチの中身を取り出し始める。
こっちの中身は、毛布と食料の包みみたい。
そういえば、よく見てみると、彼女のポーチはアスラーダさんとお揃いだ。
ラヴィーナさんが手を放すたびに、『収納』の魔法がかけられていた袋の術が解けてポンポンと大きくなるのがちょっと面白い。
彼女を初めてみた時、随分と軽装だなって思っていたんだけど……
アスラーダさんと同じようにベルトポーチに『収納』魔法をかけた袋を詰め込んで持ち運んでいたのなら納得だ。
地味に便利だよね『収納』魔法って。
「馬での移動も結構疲れるもの。明日からのこともあるから、休める時に休んでおくのは正解よ」
ポーチの中の余分な荷物を全部出し終わると、彼女はハッとした様子で手を叩く。
「そうそう! もうお食事の時間だから、リエラちゃんを連れて来いってラディに言われたんだったわ!」
「それ、最初に言わなきゃダメな伝言じゃないですか」
「邪魔な荷物を整理するのも大事よ」
まあ、それも分からないでもない。
「ラディが待ちくたびれてるわね。急いでいきましょ」
ラヴィーナさんに急かされつつ部屋を出ると、すっかり日が落ちて外は暗くなっている。
思ったよりも長く眠っていたらしい。
食堂は思ったよりも混んでいて、アスラーダさんは先に席を取って待ってくれていた。
ここは宿泊している人には、朝と夜のご飯付きだ。
だからリエラ達は席に着けば、特に注文をしなくてもご飯が出てくる。
なんて楽ちん!
「お待たせしちゃってすいません」
謝りながらアスラーダさんのはす向かいに座ろうとすると、ラヴィーナさんに止められた。
「あたし、そこに座りたいからリエラちゃんはラディの隣にして頂戴」
「は、はぁ……」
言うが早いかその場所にさっさと腰掛けてしまったラヴィーナさんに生返事を返しつつ、アスラーダさんと顔を見合わせる。
「あ」
「?」
何かに気付いた表情で声を上げるアスラーダさんの隣に腰掛けて首を傾げると、彼の手が伸びてきた。
「リエラ、前髪……」
なるほど。
前髪が跳ねてたのか。
それは、ラヴィーナさんにも昼寝してたのがバレバレになるはずだ。
自分で気づかないとは、恥ずかしい限り。
「ほんと、仲がいいわねぇ……」
「仲がいいというか、いつもこう――お世話になってます」
微笑ましいものでも見るような目で見られて戸惑いつつもそう返すと、ラヴィーナさんは困ったように苦笑を浮かべた。
「それが仲がいいって言うんじゃない」
そりゃあまあ、嫌いな相手の世話をしたりはしないけど。
食事中もちょいちょい、ラヴィーナさんにアスラーダさんとの仲の良さ的なモノをからかわれて過ごす。
なんか、変な勘違いをされているみたいだ。
それがちょっぴりくすぐったいような、居心地が悪いような体験したことがない感覚で、そのことに戸惑いながら夕食を食べた。
帰ってきたラヴィーナさんが扉を叩く音で目が覚めた。
「あら、寝てたのね」
慌てて扉を開けると、彼女はリエラの横をスルリと通り抜け、使っていない方のベッドの上に手に提げていた大きなリュックを投げ出す。
そのとたん、空っぽに見えたリュックが大きく膨らんだ。
どうやら『収納』の魔法が解けたみたい。
「何を買ってきたんですか?」
ラヴィーナさんがザックの中から、同じものを二つ引っ張り出すのを見て、リエラは首を傾げた。
三つも同じものは必要ないんじゃ……?
「明日から歩きでグラムナードまで戻るでしょう? その間に必要な荷物を入れるのに必要だと思って買ってきたのよ」
「……こんなに大きなリュックを?」
「七日――八日分の食料に、野宿する時用の毛布は最低限持って行かないと駄目でしょう? 探索者と同じ目線で見るのが目的なんだもの。最低限の荷物はそれぞれで持ち運ぶべきだわ」
「おおう……」
『収納』の魔法を使って、ズルする気満々でした!
でも、言われてみれば確かにその通り。
身軽な姿で歩いても、同じものは見えないだろう。
とはいえ……基本、工房に閉じこもっているリエラは同じ行程をこなせるだろうか……?
かなり不安だ。
ラヴィーナさんはそう話しながら、今度はベルトポーチの中身を取り出し始める。
こっちの中身は、毛布と食料の包みみたい。
そういえば、よく見てみると、彼女のポーチはアスラーダさんとお揃いだ。
ラヴィーナさんが手を放すたびに、『収納』の魔法がかけられていた袋の術が解けてポンポンと大きくなるのがちょっと面白い。
彼女を初めてみた時、随分と軽装だなって思っていたんだけど……
アスラーダさんと同じようにベルトポーチに『収納』魔法をかけた袋を詰め込んで持ち運んでいたのなら納得だ。
地味に便利だよね『収納』魔法って。
「馬での移動も結構疲れるもの。明日からのこともあるから、休める時に休んでおくのは正解よ」
ポーチの中の余分な荷物を全部出し終わると、彼女はハッとした様子で手を叩く。
「そうそう! もうお食事の時間だから、リエラちゃんを連れて来いってラディに言われたんだったわ!」
「それ、最初に言わなきゃダメな伝言じゃないですか」
「邪魔な荷物を整理するのも大事よ」
まあ、それも分からないでもない。
「ラディが待ちくたびれてるわね。急いでいきましょ」
ラヴィーナさんに急かされつつ部屋を出ると、すっかり日が落ちて外は暗くなっている。
思ったよりも長く眠っていたらしい。
食堂は思ったよりも混んでいて、アスラーダさんは先に席を取って待ってくれていた。
ここは宿泊している人には、朝と夜のご飯付きだ。
だからリエラ達は席に着けば、特に注文をしなくてもご飯が出てくる。
なんて楽ちん!
「お待たせしちゃってすいません」
謝りながらアスラーダさんのはす向かいに座ろうとすると、ラヴィーナさんに止められた。
「あたし、そこに座りたいからリエラちゃんはラディの隣にして頂戴」
「は、はぁ……」
言うが早いかその場所にさっさと腰掛けてしまったラヴィーナさんに生返事を返しつつ、アスラーダさんと顔を見合わせる。
「あ」
「?」
何かに気付いた表情で声を上げるアスラーダさんの隣に腰掛けて首を傾げると、彼の手が伸びてきた。
「リエラ、前髪……」
なるほど。
前髪が跳ねてたのか。
それは、ラヴィーナさんにも昼寝してたのがバレバレになるはずだ。
自分で気づかないとは、恥ずかしい限り。
「ほんと、仲がいいわねぇ……」
「仲がいいというか、いつもこう――お世話になってます」
微笑ましいものでも見るような目で見られて戸惑いつつもそう返すと、ラヴィーナさんは困ったように苦笑を浮かべた。
「それが仲がいいって言うんじゃない」
そりゃあまあ、嫌いな相手の世話をしたりはしないけど。
食事中もちょいちょい、ラヴィーナさんにアスラーダさんとの仲の良さ的なモノをからかわれて過ごす。
なんか、変な勘違いをされているみたいだ。
それがちょっぴりくすぐったいような、居心地が悪いような体験したことがない感覚で、そのことに戸惑いながら夕食を食べた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつもりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。