リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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二年目 山道視察

日除け

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 どうやらラヴィーナさんは、ダンさんに自身の立場を教えないまま、道中の護衛として雇ったらしい。
もちろん、アスラーダさんのもだ。
だから、ダンさんは『物好きな長耳族の二人組が、丸耳族の子供を連れて歩いて里帰り』をするための護衛として雇われたと思っていたんだとか……
『物好き』って部分がなんというか、大きく外れていないあたりがなんとも言えない気分だ。
いや、アスタールさんからの指示があって、視察に来ることになったアスラーダさんとリエラとしてはちょっと微妙な気分だけど。
本来関係ないはずなのについてきているラヴィーナさんは、物好きと言われても仕方がないと思うんだよ。

「ちなみに、私はどんな立ち位置だと思ってたんですか?」

 日除けを作る作業をはじめたアスラーダさんの邪魔にならないように、脇に避けつつリエラがそう訊ねると、ダンさんは視線を逸らして小さな声で答える。

「致命的に向いてなさそうな、探索者志望の子供……?」
「……まあ、実際に探索者には向いてないので妥当なところかと」

 血を見てもなんとか卒倒しなくはなってきたけど、リエラは実際のところ探索者には向いてない。
なりたいと思ったこともなかったからなぁ……
どういう訳か、仕事で迷宮に入ることにはなっているけど。

「あー……。兄ちゃ――アス……!」
「別に話し方を無理に変えないでいい」

 アスラーダさんがグラムナードの領主代理だと分かって、ダンさんはどう呼んだらいいものか分からなくなったらしい。
さっきまでのように言いかけて、慌てて呼び方を変えようとして舌を噛む。
気の毒に思ったのか、アスラーダさんが今まで通りに呼ぶように伝えると、ホッとした様子でダンさんの肩から力が抜けた。

「助かる。嬢ちゃんは兄ちゃんの弟の弟子って、なにをやってるんだ?」
「弟は――主に魔法薬を作ってるな」

 あれ?
中町のおじーちゃん達の話し相手がメインじゃなく?
むしろ、リエラは他の仕事をしているアスタールさんを見たことがない。
魔法薬も作ってたのか。
セリスさんがほとんど作っていると思ったから、ちょっとびっくりだ。

「ってことは、錬金術師か! すげーな、嬢ちゃん」
「まだまだ見習いですよ」

 ダンさんの声が明るく弾んだのは、魔法薬が自分にもある程度はなじみのある物だったからだろう。
グラムナードの迷宮に入ったことがあるなら、魔法薬のお世話になったことは一度や二度じゃないはずだし。
ちなみに本当なら、魔法薬を作る人は『錬金術師』じゃなくて『調薬師』だ。
魔法薬ではなく、魔法具を作る人なら『魔法具師』。
『錬金術師』を名乗るためには魔法薬と魔法具の両方が作れないといけない。
でも中町から一歩外にでてしまえば、魔法薬か魔法具のどっちかが作れれるだけで『錬金術師』って名乗っている人がたくさんいるんだよね。
ダンさんは多分、『調薬師』と『錬金術師』の違いを知らないんだろう。
まあ、リエラはどちらも作れるように修業中だから『錬金術師』の見習いで間違いじゃない。

「――こんなもんか」
「ですね」

 岩壁に触れていた手を放したアスラーダさんの視線を追って、上を見上げた。

「すげーな、兄ちゃん……」

 見上げた場所には、岩壁から大きなクモの巣状のものの姿がある。
とてもじゃないけど上ることができないくらいに高い場所にあるソレは、地の魔法で編み上げた代物だ。

「ところで、嬢ちゃん」
「はい」
「日除けなのになんであんなに穴だらけなんだ?」
「あー……まあ、悪用されないように、ですかね」

 休憩する為だけの日除けだったら、一番背の高い種族の身長よりも少し高い程度の位置に庇を作るだけでもいい。
でも、それだと庇の下が陰にならない時間もできちゃうはずなんだよね。
常に日差しを避けられるように横穴を掘るという手もあったんだけど、それはラヴィーナさんに反対された。
なんでも、横穴なんて作ってしまうと変な輩のたまり場になりやすくなるんだそうだ。
同じような理由で、岩壁から反対側の岩壁に向かって橋のようなものを作るのも却下。
馬車を襲撃をするための、足場にしようと考える輩が出るのが困るらしい。
いやいや。
馬車を襲うって……上から飛び降りるの? と、思わないでもなかったけど。
まあ、万が一、チャレンジしようなんて人が出ても困るのは確かだ。
最終的に、足場にするには高すぎる位置に、上に何かが乗っていたら分かるような形にすればいいだろうということで、クモの巣状に穴の開いた橋を渡すことになったという訳だ。

「まあ、これでも直接太陽にさらされるよりはずっとマシだな」

 そう言って、嬉しそうにダンさんが笑ってくれたから、問題ないだろう――と思いたい。
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